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【Clubhouseアプリグロース徹底解剖】 Part.1:Clubhouseに人は何故時間を溶かしてしまうのか?〜Hookedモデルを用いたハマる理由の考察〜

■ はじめに
こんにちは!Repro Growth Marketerの稲田宙人(@HirotoInada)です!

今回から全3回に渡って、急速なユーザー数の拡大をしている話題の音声SNS「Clubhouse」に関して掘り下げます。

第1回目にあたる今回は、Hookedモデルを用いて「Clubhouse」に人がハマってしまう理由を考察します。

尚、本noteの元ネタは僕と伊藤直樹さん(@n_11o)でやっているポッドキャスト番組「Mobile Update // モバイルアップデート」で収録した第56回「Clubhouseアプリグロース徹底解剖 Part.1:Clubhouseに人は何故時間を溶かしてしまうのか?〜Hookedモデルを用いたハマる理由の考察〜」なので、そちらも併せてお聴き頂くと理解が深まると思いますので是非!

ハッシュタグ 「 #モバアプ 」でご意見ご感想もお待ちしてます!

1. B=MATモデルを用いた初回利用ハードルを下げる設計の考察

まずは、Clubhouseの初回利用ハードルを下げる・利用したくなる為のサービス設計を、フォッグの消費者行動モデル「B=MATモデル」を用いて考察していきます。

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Source:How Using the Fogg Behavior Model Increases Clicks & Sales

「B=MATモデル」は消費者が行動(Behavior)を起こす理論を、動機(Motivation)・能力(Ability)・きっかけ(Trigger)の3要素から説明したモデルです。上図で言えば、Action Lineよりも下にいるユーザーをトリガーを用いて行動に繋げることが設計としては必要になります。

ここで、Clubhouseの潜在利用ユーザーを2つの群に分類してみます。

①動機(Motivation)高 × 能力(Ability)低
利用してみたい気持ちは強いが、利用することができない制約条件下にいる
→招待枠を持っていないユーザー・Androidユーザー

②動機(Motivation)低 × 能力(Ability)高
利用をすることはできるが、利用をする上での心理的ハードルが高い
→招待枠を持っているがいきなり利用して話すのに抵抗があるユーザー

まず①のユーザー群に関しては行動促進は非常に容易です。招待枠さえ手に入ればほぼ確実に参加してくれるからです。こういったユーザー群は、「招待をください」投稿を勝手にしてくれる為、UGC創出とバイラル性向上にも一役買ってくれます。

次に②のユーザー群に関して。こういったユーザーには参加したもののいきなり話すのは怖いなどと心理的ハードルが存在しています。他のSNSアプリと同じくClubhouseでもROM専、否、LOM専として参加できる構造が整っている為、ハードルを下げることもそこまで難解ではないと考えられます。

上記の両ユーザー群の行動実行を強力に後押ししているのが、きっかけ(Trigger)です。Clubhouseのきっかけ(Trigger)は以下のように整理ができます。

①外的トリガー
・招待の受信:
招待をされることにより使ってみようと思うきっかけになる

②内的トリガー
・FOMO(Fear of Missing Out):
Clubhouseの初期段階でしか聞けないコンテンツがある可能性、且つアーカイブが残らないことにより、早く参加しようと思うきっかけになる

・ステータス価値:
招待枠が限定されている状態では、早く参加をしてTwitterで「招待いりませんか?」の投稿をアプリプロフィール画面と一緒に投稿することが一種のステータス価値となる(→招待枠の拡充とユーザー規模拡大によりこのトリガーは縮小していく)

2. なぜClubhouseにハマってしまうのか?

日本でバズり始めた当初は、人によっては寝る間を惜しんで1日中利用する人もいるなど、非常に中毒性の高いサービスとして注目をされました。

では、なぜここまで人はClubhouseにハマってしまうのでしょうか?
ここでは、Neil Eyal氏が提唱した「Hookedモデル」を用いて考察していきたいと思います。

Hookedモデルは人がサービスにハマってしまうプロセスを以下の4つの段階に分けて解説した行動モデルです。

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Source:フックモデル

Hookedモデル
①Trigger:きっかけ
②Action:行動
③Reward:リワード
④Invest:投資

これをClubhouseに落とし込んで考えてみましょう。

■ ①Trigger(きっかけ)
まず最初の利用のきっかけは前章でも取り上げたように、以下の2種類に分類できます。下記のきっかけにより、ユーザーは初回利用のハードルを超えることになります。

外的トリガー:SNSでのUGC認知・招待枠獲得
内的トリガー:ステータス価値・FOMO(参加できないことによる恐怖)

■ ②Action(行動)・③Reward(リワード)
まずは利用をし始めたユーザーは、試しにフォローしている人のルームや、気になったルームに参加してみます。これがAnctionにあたります。

そして、ルームに参加したユーザーは、有名人と話すチャンスに恵まれたり、ルームで有益な情報を得たり体験をします。これがRewardです。ここでいうRewardとは、必ずしも金銭的価値に限定されない点に注意です。

■ ④Invest(投資)・①'Trigger(きっかけ)
③までのステップでサービスに価値を見出したユーザーは、サービスに対して更に時間を費やすようになります。これがInvestです。

このInvestからActionへのサイクルを強力に加速させるのが以下の新たなトリガーです。注目するべきなのが、FOMOの性質とその結果の行動が利用開始前後で変化している点です。

外的トリガー:「人」ベースのプッシュ通知
内的トリガー:FOMO(参加していない時間帯に面白いルームがあるのではないかという恐怖感から開きっぱなしにしてしまう)

このように、Clubhouseは利用開始前から利用開始後まで、内的トリガーと外的トリガーの両方を組み合わせてリテンションさせる仕組みが非常に秀逸であり、それ故にユーザーはハマってしまうものと考えられます。

3. プッシュ通知のデザイン設計

前章で考察した「ハマる理由」すなわちアプリに復帰して利用してしまう理由である外部トリガーとして非常に強力な力を持っているのがプッシュ通知です。

最後の本章では、Clubhouseのプッシュ通知のデザイン設計を掘り下げていきます。

■ プッシュ許諾率を向上させる仕組み
最近では定石として定着が進んでいる設計の1つではありますが、ClubhouseでもiOSネイティブのプッシュ通知許諾ダイアログを出す前に、スプラッシュ画面を一枚挟み、許諾率を上げる為の設計を行っています。

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施策として良いポイントは以下です。

①通知をオンにするべきメリットを記載している
②どこをユーザーにタップして欲しいかが分かりやすい
③スプラッシュ内のダイアログとネイティブダイアログが寸分違わず一致で自然(端末によって調整済み)

Clubhouseの場合、可能であれば利用開始後に誰かをフォローしたタイミングでダイアログを出せば、プッシュ許諾をオンにする理由が明確になるので、母数に対する許諾率自体は更に向上しそうな所感です。(もちろんフォローまで辿り着くユーザー母数の兼ね合いもありますが)

非常に簡単な施策ではありますが、許諾率を向上させる上では有効なので、まだ試されていない方はぜひ。
以下のTimeeさんの事例が非常に参考になります!

■ 通知コンテンツ
プッシュ通知で通知するコンテンツ自体にもClubhouseの強みを活かした特徴が存在します。

以下は実際に送られてくるプッシュ通知の一例です。
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左は初回利用時に、招待してくれたユーザーがオンラインになったタイミングで飛んでくるプッシュ通知で、タップすると招待者とのプライベートルームが自動で開設されます。
右は、フォローしている人が、ルームをスケジュールした際・開設した際に飛んでくるプッシュ通知です。

Clubhouseの全てのプッシュ通知に共通するのが、コンテンツ自体にユーザーの実名を利用している点です。
Clubhouseのような「人」ベースで興味の対象が決定し、サービスを利用するかどうかが変わるサービスにとっては、ユーザー自身が興味のある「人」の名前を利用したプッシュ通知は、非常に強力なリテンションの武器となります。この背景に聞き逃したくない心理であるFOMOがあることが、プッシュ通知を更に強力にしていると考えられます。

■ プッシュ通知設定
SNSやチャットアプリでは一般的になりつつある、プッシュ通知の頻度や内容を設定することがClubhouseでもできます。

他のサービスの設定と一線を画すのが、「Frequency」の設定です。
この設定では、通知が届く頻度を設定できるのですが、面白いのが設定項目がどれも定量ではなく定性である点です。
プッシュ通知の頻度自体がフォローしているユーザーのアクティビティに大きく左右される背景もあり、どの選択肢を選んでも同じ頻度で送られてくるんじゃないかと個人的には思ってますw
プラシーボ効果は大いにありそうです。

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前述の通り、プッシュ通知の届くタイミングと頻度は、フォローしているユーザーのアクティビティに大きく依存する為、真夜中にも平気でプッシュ通知が届きます。この点は個人的に非常に不満を感じている点であり、ユーザー単位での通知設定などが最低限できると良いなとは思います。

Slackはビジネスチャットサービスである故に、通知設定が非常に優れています。チャネルごとの通知設定ができる他、通知が届く時間の設定まで細かくできるようになっています。

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■ プッシュ通知の一時停止機能
前項の通り、Clubhouseではプッシュ通知が非常に頻繁に届くようになっており、下手をすればプッシュ通知の許諾がオフにされるだけでなく、ユーザー体験を棄損することにもなり得ます。

この恐れを回避する為に、Clubhouseが導入しているのがプッシュ通知の一時停止機能です。1時間から1週間のスパンで、プッシュ通知を一時的に停止することができるようになっています。

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iOSデフォルトの設定画面でプッシュ許諾をオプトアウトされると基本的には再オプトインは難しい為、オプトアウトさせずにウザさを軽減してコミュニケーション手段を維持できる非常に有用な施策と言えるでしょう。

ニュース・メディアなど通知が多くなりがちなアプリに関しては設計として取り入れてみるのも良さそうです。

ここに更に、プッシュ通知を最近開いていないユーザーを検知して自動で提案できるとよさそうですね。(特にプッシュ通知なしで自発的に復帰しているユーザーに関してはあえてプッシュ通知を停止させることが重要かもしれない)


最後に
Clubhouseアプリグロース徹底解剖の第1回は、人がClubhouseにハマってしまう理由をモデルを用いながら説明してきました。
また、他のアプリでも取り入れられそうな、プッシュ通知のデザイン設計に関しても掘り下げました。

次回第2回は、「Clubhouseの高バイラル性とコミュニティグロースに伴う懸念」に関して考察をしていきますでの、そちらもぜひぜひご覧いただけると嬉しいです!
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https://twitter.com/HirotoInada

また、今回のnoteの内容は、Repro伊藤直樹さん(@n_11o)と2人でやっているポッドキャスト「Mobile Update」でも解説しているのでそちらも併せてご視聴ください!
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