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#06 ふざけんな!自白しろ!

話を聞きたいと言われ、私は任意同行に応じました。
(話をすればすぐに疑いは晴れるだろう)
私は、警察を信じていました。
しかし、群がる報道陣に情報を提供していたのは、彼らの他ありませんでした。
そして私の抱いていた淡い幻想は、Y刑事が放った一言で、全て消し飛んでいきました。

■登場人物
私:藤井浩人
Y刑事:愛知県警刑事、任意同行から私を担当。
A刑事:岐阜県警刑事、任意同行から私を担当。

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私を乗せた白色のセレナは愛知県警本部の地下駐車場へと入っていきました。
車から降ろされると、スーツを着た警察官であろう男性数人に囲まれながら、建物の中へと促されました。
エレベーターをいくつか上がり、奥に長く続く廊下を抜けると、机が一つ、椅子が向き合って二つ置かれた取調室に案内されました。

そこは窓が無い、テレビドラマで見るような取調室そのものでした。

部屋の中に入ると、
「持っているもの、携帯電話や財布、時計、あとカバン。全て預けてください」
「録音とかしてないよね。そういうのもあれば全部出して」
ここでも警察を信じていた私は、任意同行と同じように言われる通りに従ってしまいました。

繰り返しになりますが、任意同行は拒否する事ができます。
また、警察からの取調べ中の録音を禁止する法律はありません。そのため、取り調べを録音することは違法ではありません。何を聞かれるのか、そして自分自身がどのようなことを話したのか、記録するためにも録音することを私はお推めします。

この先の取調べは、私の想像を遥かに遥かに超えていました。
ほんの少しでも録音できていればと、強く後悔しています。

全ての物を預け、私はパイプ椅子に座りました。

「全てお話しします。何でも聞いてください。今日は公務が詰まっているので、早く帰らせてください」

その旨を改めて伝えました。

すると...Y刑事が、一つ間を置いて...

・・・ドンッ!ドガッ!!

手に持っていた書類とバインダーを、勢いよく私の目の前に叩きつけました。
プラスチックのバインダーは大きく跳ね上がり、大きな破裂音が室内に響き渡りました。

「ふざけんな!さっさと自白しろ!お前、全部わかってんだろぉが!」

荒々しい怒号が私の鼓膜を直撃しました。
いつの間にか、「お前」呼ばわりになっていました。

(これは、ただ事ではない。簡単には帰れない)

ようやく私は事の重大さを理解しました。

それからは、Y刑事の怒号はエスカレートしていきました。
その時の様子を、今でも鮮明に思い出します。

しかし、私も負けないよう、食い下がりました。

「何の容疑か教えてほしい!」
「具体的に聞いてくれれば、何でも話をする!」

少しでも建設的な話ができないかと、気迫で負けないように声を張り上げました。

しかし、Y刑事は落ち着きを見せることなく、私を怒鳴り続けました。
立ちながら机に両手をついて、私の額の前に顔をグッと近づけ、大声と唾を飛ばし続けました。

「自分の胸に聞いてみろ!」
「市長のくせに!自分のことも話せないのか!」
「往生際が悪い!金をもらったんだろ!さっさと認めろ!」

こんなことを休む間も無く、繰り返し、繰り返し、叫び続けていました。

一方的な恫喝に疲れたのかY刑事は椅子に座ると、次はA刑事が私の前に出てきました。
取調室の中は、私とY刑事、A刑事の3人で、A刑事は2人のやりとりをずっと見ていました。

A刑事は岐阜県警ということで親しみを感じ、
(この人は話を聞いてくれるかもしれない)
裏切られた期待の中に、僅かな希望が残っていることを期待していました。
同時に、テレビドラマのように一人は恫喝、一人は優しい態度で私を揺さぶってくるのかもしれないと、次の展開を予想しました。

A刑事「おい!さっさと話せ!」

期待は消え去り、予想は外れて
A刑事も同じように私を怒鳴りつけてきました。
結局、Y刑事とA刑事が二人交互になって、攻撃的な罵声と恫喝を私に繰り返し行いました。

私が何を話しても、一言のメモも取ることなく、手元のバインダーは、ただただ、机に叩きつけられるための物となっていました。

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