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タンブンする建築 -タイ現代建築 002-

初めてタイに来た当時、ああこれが思っていたタイだなぁと実感したのはThe Commons Thonglor を訪れた時だった。来泰1週間がたち、ASA(タイ王立建築家協会)の方、設計者であるDepartment of Architectureの方と一緒に回る機会を得た。

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都市の隙間に生まれたオープンスペース

第一印象として感じたことは、”公園みたい”だった。というのもメインの入り口らしき場所からはお店を感じることはなく、階段とグリーンのみが見えるからだ。

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階段の踊り場にはクッションが敷かれ、人々は思い思いにくつろいでいる。

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高密度な都市で生活をしていると、なかなかオープンスペースにであう事は難しい。特にバンコクは都市部の人口当たりの緑地面積は3㎡と(東京は11㎡)極端に緑地も少なく、パブリックなオープンスペースが少ない。しかしThe Commons Thonloでは売り場面積をなんと40%に抑えることで広大なオープンスペースを生み出している。

熱帯のバンコクに寄り添った"微気候"

バンコクの気候は過酷だ。乾季の日中は強い日差しで外にいるだけで汗が吹き出し、雨季にはスコールが毎日のようにある。そのため、都市において一般の市民は屋根のない屋外でまったり過ごす事があまりない事も、都市のオープンスペースの少なさの一因になっていると考えている。

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この施設に入って気付くことはバンコクの屋外がこんなに過ごしやすいのかという事である。暑さ厳しい気候の中にあっては屋根があるという事と、風が通るという事は偉大である。工業用の巨大な天井扇があることで半屋外空間は涼しく、長くいても汗が噴き出すことはない。
また、最上階の換気扇群は中央の吹き抜けのチムニー効果と相まって熱い空気を上部へと排出している。オープンスペースに人が滞在するためにはまず快適な空間を作らなくてはならない。そのための回答としては一つの方策を示していると高く評価できる。

バンコクのストリートをそのまま呼び込む

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ストリートの屋台はバンコクの文化であり、商業のシステムである。The Commons Thonglor のオープンスペースには小さな屋台が点在し、ストリートの文化をそのまま取り入れたかのような店の出し方をしている。このような店の出し方は、オープンスペースをただの広いスペースとしてだけでなく、生きた使い方をできる仕組みとして機能している。

タンブンする建築

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The Commons Thonglor はコミュニティーモールを名乗っており、実際に入っているプログラムは、シェアキッチンに始まり、子どもが遊べるカフェや、ジム、飲食店等が入っており、幅広い世代を想定して設えられている。

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オーナーでのコンセプトである“トンローの裏庭つくる”ということは、本来プライベートな空間である裏庭を地域のみんなで共有するという心意気を感じるとともに、その裏庭で起こることが都市空間を変えることができるという希望にも感じられる。

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タイではタンブンすること(現世で徳を積むこと)で現世、または来世の幸せにつながるという事を信じる文化が色濃く残っている。この The Commons Thonglor は正に都市に対する一企業からのタンブンのようにも思える。
このように素晴らしい建築を実現してくれたオーナーに感謝するとともに、すばらしい空間を実現できる文化がタイにおいてより醸成されるように筆者は願っている。

【建築】The Commons Thonglor
 https://www.thecommonsbkk.com/
【設計】Department of ARCHITECTURE Co. https://departmentofarchitecture.co.th/

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