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筋トレ否定論

こんにちは、身体機能研究家の小林洋太です。
今回は「筋肉」について少しお話をしましょう。「筋肉」について少し理解が深まると、今やろうとしていること、やっていることが自分にとって良いのか、あるいは良くないのかが判断できるようになります。

ちなみに僕自身、筋トレは否定的ですが、身体操作は本来暮らしの中で当たり前にあるべきことだと考えています。西洋的な筋トレには否定的で、和的な身体操作には賛成的だと思ってもらうと読み進みやすいかもしれません。

昭和初期、日本人女性は丸太を軽く担ぐことができるだけの足腰の強さがあった!


あなたの常識、それ間違ってない??

「筋肉」と聞くと、多くの方は「筋トレ」のことだね!と思うかもしれません。脚力をつけるためにはスクワット、腰痛などには体幹トレーニング!!インナーマッスルを鍛えることってとっても大事なのよね!

これだけ筋トレというものが市民権を得て、誰しもが「筋肉」を鍛えることや、その衰えについて考えるようになったのはいいことなのかもしれませんが、全体性を欠いた状態でモノごとを語るのはいささかオススメし兼ねます。ましてや誤った認識をしていたとしたら…

あなたの常識、間違ってません?なんて挑発的な小見出しをつけたのは、僕が専門家であるからなんですが、テレビや雑誌で取り上げられていることが数十年前の情報だということを知っているから(最先端の情報を日々追っているから)なんですよね。


筋トレなんてやめちまえ!!

「筋トレ」でやってるその動作、日常の中にある動きですか?

世間で言われている「筋トレ」というのは、からだの中の一部の筋肉の、そのさらに一部を動かすことを意味します。

一般的に、筋トレをすると筋力(筋量)がアップして、基礎代謝が上がってということがメリットとして言われていますが、それは本当でしょうか。
確かに、それまでを上回る身体活動を行うと消費カロリーは増加します。そのことが習慣化すれば代謝は上がるでしょう。
ただ、それは基礎代謝ではなく運動代謝によるものです。

筋力もまた、運動によって発揮する力のこと、つまりその運動に対してどれだけ力を使ったかということで、通常 ”物体の質量×加速度”で表されます。自動車が走るメカニズムを考えるとイメージしやすいかもしれません。
重さ1トンの車体が時速100km/hで移動するのに必要な力、それが筋力いわゆるパワーです。車の場合、排気量が660ccなのか3000ccなのかでそのパワーは変わります。重要なことですが、人も車も止まっていてはそれらは0です。

それが故に、筋トレなんてやめちまえ!ということに帰結します。
もし、重量挙げでオリンピックに出場し、前人未到の記録を出したいというのならそれは必要です。しかし多くの方の場合、それは不要ではないでしょうか。

それでもやっぱり筋トレした方が良いんじゃない?と思うのなら、トレーニングをする対象のことをよく知りましょう!!じゃないと、全く見当違いのことをすることになるかもしれませんし、本来の目的を果たすどころか、全然違うところにたどり着くことになるかもしれません。

海外旅行に行きたいから英語を勉強する!!!!というのは立派かもしれませんが、海外旅行に行きたいのならチケットを買う、ツアーに申し込むというのが目的である海外旅行を達成するための最短ルートであることは周知の事実かと思います。


鍛えたい対象である「筋肉」ってどんなものなんだろう?


私たちの身体にある「筋肉」は、自らの意思で動かせる横紋筋≒”随意筋”と、意志では動かすことができない平滑筋≒”不随意筋”に分類されます。
ちなみに、心臓の筋肉は自らの意志では動かせませんが、横紋筋に分類されます。

私たちが筋トレをしているのは、随意筋の中の”骨格筋”というものになります。それらは全体のなかで40%しかありません。(下図を参照)

https://locomo-sarcopenia.saishunkan.co.jp/より引用

さらに言うと、随意筋が動くときは”意志”を持って行動に移したときのみです。もし筋トレをして基礎代謝を上げようとしたとしても、上がるのはほんのわずかなものにしかならないでしょう。

いやいや、筋肉にギュッと力を入れてからだを引き締めているからずっと意識的に筋肉をコントロールしていますよ!と思ったかもしれませんね。
ギュッと力を入れ「筋肉を縮めること」が行っているようですけど、偏った動き(筋肉を伸ばすこともある)を繰り返し行うことでの弊害があるのを考えたことがありますか??


私たちのからだは柔らかくてみずみずしい

組織によって違うもののからだ全体の60%が水分で、筋肉に至っては75%になる

人のからだの大部分が”水”だということを再認識してみてください。
上の図ではkidneys(腎臓)やlungs(肺)にまとめられていますが、内臓はたくさんの水分を含み、とてもみずみずしいものなのです。たくさんの水を含んだ臓器を、薄い筋肉で押さえ込む行為がどれだけ無駄なことか考えてみてください。内側にある水分量に対して終始逆らうことがいかに不毛な戦いなのか… 

しかし、何故か、ひとは割れた腹筋に憧れるようです。
ちなみに腹筋は皮下脂肪さえなくなれば勝手に割れます。
そういう構造をしています。そしてその厚みは生ハム程度しかありません、生ハムでは膨大な量の水を塞き止めることは到底できないのです。

みずみずしい内臓を外側から守っているのが筋肉、その筋肉もまたみずみずしくないと伸び縮みすることができない、つまり水分がとても重要な役割を果たしているわけです。

男性は考えたことがないかもしれませんが、女性はお肌(皮膚)の潤いにまで気にかけます。皮膚の水分含有量なんて日差しや乾燥に晒されたら一撃なのに…

そのみずみずしさを保つのに重要なものが皮下脂肪。
からだの深部にある水分が、からだの外に逃げないようにみずみずしい臓器や筋肉といった組織の周りをオイルコーティングして守っているのです。(もちろん過剰な皮下脂肪は不必要だし、内臓脂肪に至っては後述しますが組織の機能を妨げることになるので適度な状態でいることはとても大事なことです。)


からだの内側にある筋肉にも仕事をさせるという発想はある?


腹筋にギュッと力を入れて硬くしていれば、その腹筋に囲まれている内側にある内臓平滑筋 全体の60%)は同じく締め付けられて、本来の筋運動ができなくなります…

つまり、40%の骨格筋のために60%が犠牲になるわけですから、基礎代謝も上がるどころか下がることが推測できます。

内臓を子どもに例えてみましょう。
子どもが遊ぶとき(内臓が仕事をするとき)、4畳半の部屋と8畳の部屋だと活動量が大きく変わりますよね。子どもの場合は個性によって遊ぶ範囲は限定されたりするかもしれませんが、内臓はからだの中で淡々とその仕事をするので、外側からギュッと圧を加えられている状態ではスペースが減少するため、本来の仕事が行いにくくなることは予想できます。

仮に、全体の40%の、さらに数%にあたる筋肉を意識して使っているから、
内臓の働きが犠牲になっても大丈夫ということはないでしょう??

内臓は休むことなく24時間休むことなく働いているわけですから、その内臓(平滑筋)が伸び縮みするのに必要なスペースを潰してしまっては元も子もありません。

もしも、その筋トレの動機がダイエット(減量)だったなら…


もし、体重を減らしたいというのなら、摂取カロリーがオーバーしているわけだから食事量を減らす、あるいは摂取カロリーを減らしたり、摂取するものの質を変える方が良い結果が出るはずですが…

ちなみに、15年ほど前に菜食生活を1年間続けたところ、何もせずとも10kgほど減りました。僕の場合「肉を食べない」ことをしていました。

そもそも1日8時間座って仕事をしてる人が、昼も夜も脂こってりの唐揚げを食べて、ビールも飲む。そんな食生活をしていて良いわけがありません。
子どもだってそうですよ!元気になるからと思ってエナジードリンクなんて飲ませてたらとんでもないことになりますからね!!砂糖と脂肪はもはやドラッグだという認識でいいと思いますよ。もし体重を減らしたいのならね…

”医食同源” ”you are what you ate” と、東西を問わず食とからだの関わりをいう言葉がありますが、肥満が社会的な病気となった現在では忘れ去れた概念なのかもしれません。


代謝を上げるために増やすべきは、運動量!!

車のエンジンの排気量をいくら大きくしても、車が止まっていては元も子もありません。仮に筋肉の量が増えても、椅子に座って指先だけを動かすデスクワークをしていては、止まっている車と同じです。
指先に重りをつけて、あるいはパソコンのキーをとても硬いものにして… 質量の小さいものを動かすのではなく、質量の大きなものを動かすことを考えた方が効率が良くなります。

力(パワー)=物体の質量×加速度

からだの先端にある小さな小さな筋肉をたくさん動かすのではなく、からだの中心部分にある大きくて存在感のある筋肉に仕事をさせましょう。

存在感の大きな筋肉は力強さがあります、しかし力強さがあるがゆえに動かしている自覚が乏しく(鈍感に)なります。一方で中位の筋肉や小さな筋肉は、操作性の高さゆえに動かしている感はあるのですが、力強さがなくてすぐに疲れてしまうのが特徴です。

個人的にオススメしたいのはTai chi (太極拳)のような動きです。
動作は基本的にゆっくりなので、疲れるはずはありませんよね?
実際に(それっぽい動きでも)やってみて、思ったよりキツいかもと思ったら、それは大きな筋肉群を使えていないということになります。

慣れた動作には「癖」があり、その癖を正さない限り、からだのなかで動かしている実感の少ない(鈍感な)大きな部位(関節・筋肉)を正しく機能させるのは困難になります。

「癖」を正すためには、慣れたスススッとできる動作やからだの使い方ではなく、ゆっくりとスローモーションのように動きながら、普段なら気付くことのないエラー(間違った動き)を見つけ、正しく反復することが必要です。そうした点からも太極拳のようなゆっくりとした動きから、通常の速さの動き、そして素早い動きと適応させていくことが必要なわけです。

ゆっくりと動く基礎ができていないのに、素早く動く・不安定な状態で動くことはできませんよね。赤ちゃんが1年かけて二本足で立つことができるように、基礎を繰り返し繰り返し行うことは、代謝を上げるうえでも、パフォーマンスを上げるうえでもとても大事なポイントになります。


そうは言っても体幹トレーニングって必要じゃない??

プランクと呼ばれる代表的な”体幹”トレーニングと言われているもの

ダンベルやバーベルを使うウエイトトレーニングはしなくても、良い姿勢をするためには体幹トレーニングってした方がいいんじゃない??と思わされていませんか?

最初に言っておきますが、体幹トレーニングを「からだをギュッと硬くして胴体を固定させる」ものだと思っている方は、もう一度最初から読み返してください。それ全く見当違いですから…
最初から読み返してくださいとは言ったものの、そんなことをする人はいないでしょうから、次に示す動作をやってみてください。

体幹トレーニングという言葉の元はStability Training (安定性トレーニング)です。Stability(安定性)というのを、手足を自由に動かすためには胴体が安定していないと…というところから、からだを木に見立てて「体幹」としたんでしょう。そこまでは良かったのかもしれませんが、体幹と手足のつながりが蔑ろにされて体幹トレーニングとして伝わってしまったのは残念なことです。

あなたが立ってても、座ってても、手を上へ伸ばそうとしてみてください。
そして伸ばしているとき、服の裾が上方へと伸びているのを感じてください。もしTシャツを着ていたら、その裾をズボンの中に入れ込むと引っ張られているのをより感じることができるでしょう。

つまり、からだ(胴体)を硬くしてしまうと、手足の伸びが制限されてしまい、結果として手足の可動性を限定してしまうという現象が起きるのです。

手足(四肢)を自由に動かすために体幹を安定させることが目的の体幹トレーニングなのに、結果として四肢の操作性の自由度を下げてしまっていては本来の目的を達成していないことになります。

もし、からだが2次元だったらそれでも良いのかもしれませんが、私たちのからだは3次元で立体的です。

当たり前のことですが、立体的なからだは家や建築物のような構造物と同じです。唯一違うところがあるとしたら、私たちのからだは自由に動かすことができるという点です。

構造物として私たちのからだを考えたとき、その構造物が倒れないよう(安定させるため)にするために必要なことは、壁を分厚く硬くすることではないですよね?構造物の場合、筋交いを入れたりするのが一般的ですが、柱や梁といった構造そのものへのアプローチになることは明らかです。

構造物として考えたとき、内側にある空間が収縮に向かうと構造を支えている支柱にかかる圧力は高まりますが、空間が拡張に向かうと支柱にかかる圧力は減少します。

ここで私たちのからだが持ち合わせている特性(伸縮性)を考えると、内側の圧力を一定に保ちながら前後左右のバランスを保つことが、構造を安定させるうえで重要なことがわかります。勘のいい読者の方はもうお分かりですよね?それは呼吸が基本となる収縮性のある動きです。

内圧と外圧の差があるから呼吸が生まれ、その呼吸が基本となってからだと四肢の連動を高める

赤ん坊は筋トレをすることなく、動きのバリエーションを増やし、そして二足歩行を身につけます。一切からだを固めることなく…

二本足で立ってからだを安定することができない人が、片足でできるわけがありません、フラットな地面で安定することができない人が、凸凹の地面でできるわけがありません。立って安定が得られない人は座って、座ってできない人は寝て、そうして基本動作に立ち返ることが理論立てたトレーニングではないでしょうか。

無意識での日常動作の反復が姿勢を悪くしている

良い姿勢になるためにからだを硬くして体幹トレーニングをする。ということは、悪い姿勢でいる自分のからだをさらに力を入れて硬くして、ますます悪い姿勢が強化されるといったことに他なりません。

格好だけ真似をする体幹トレーニングより、子どもが成長するときのようにどんどん能力が拡張していく、そのために必要なことはなんだろうか?そんなことを考えながらシンプルかつ、すぐに変化を感じる動きを模索することがよほど体幹トレーニングだといえます。

さいごに

からだは自由に伸び縮みしたいのです。

これだけ多種多様な人がいて、千差万別の暮らしを送っていて、これをやったら健康的でいられる筋トレなんてありません。それは幻想です。

メディシンボールを使った”体幹トレーニング”と言われているもの

何でもかんでもからだを硬くして、それを筋力だと誤解し、筋力トレーニング(筋トレ)をして、からだの自由度を失くしてしまっていることはとてももったいないことだと思います。

筋トレをしないと、筋肉が脂肪に変わってしまう

万が一とは思いますが、そんなことを本気で信じていませんよね??

筋肉と脂肪は全くの別物。
スーパーで売っているお肉が冷蔵庫で眠っていたとして、赤身が脂身に変わることはありません。

錬金術

筋肉が脂肪に変わる、もしそんなことが可能であれば、砂金が砂に、水がガソリンに変わることもあり得る、そんな世界になってしまいます。


常識を捨てろ!

社会変化の速度が急速に増大しつつある現在、実用的な専門知識はあっという間に古びてしまいます。実用的であればあるほど、古びる速度は速いのです。
必要なのは、すぐに役立つ知識ではありません。知識を獲得するための知識なのです。そして、知識を獲得するための知識よりも、さらに大切なのは、「常識を疑う確かな力」なのです。何故なら、「常識を疑う確かな力」こそが、いかなる分野であろうと、皆さんを最先端に推し進める力を持つからです。必要なことは、有用な知識を身に付けることではありません。「常識を疑う確かな力」を身につけることによって、皆さん自身を持続的に有用な存在にすることなのです。

平成19年度東京大学入学式(学部)総長式辞より引用 

地球上で人間だけが筋トレをやってるのって不自然だと思いませんか?
プロテインまで飲んで。。。
今ではジュニアプロテインなんて商品もあるようです。
不自然の極みといったところでしょうか。

確かに達成感もあるし没頭するのもある意味ではわかります、しかし本当に必要なのは筋トレの代わりに概念を、考え方をアップデートし続けること、常識を疑うとはそういうことだと考えます。

ここまで長々と論文のような文章を書いてしまいましたが、これを読む方ってあまりいないのかもしれないな、なんて思ったり。とはいえ、この記事がなんらかの役に立てば嬉しいです。

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