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【SS】幻獣師のコンパス🧭01〜最初の友達は虹色のトカゲでした〜

01話『最初の友達は虹色のトカゲでした。』

01-1

「は?スマチ?ナニそれ?」

聞き慣れない言葉に反応し、思わず聞き直す。

「もー、お姉ちゃん知らないのぉ〜」

生意気な妹の、ちょっと上から目線の発言に、ちょっとだけカチンときた。

「スマチにもぉーストラップをつけなきゃね」

スマチ=スマートウォッチ

人を小馬鹿にしたようなお経読みで、上から目線で、左手の人差し指を立て、詩のような言葉を歩きながら口ぶさむ。

「は?ナニそれ?」

ちょっとイラっとして、早歩きで歩き出す。

幼い頃は、お姉ちゃん、お姉ちゃんと、
後ろについてくるだけの、かわいかった妹も、
今となっては、姉のタマキを身長もバストも凌駕している。

昨夜の家族での夕食でも、モリモリとすき焼きをたいらげる妹に、なんでこんなにアホほど食べているくせに、ちっとも太らないのか、うらやましく思っていたが‥

「たくっ‥、背丈と胸に栄養がいったか‥」

タマキはふと立ち止まり、立ち上る入道雲と、抜けるような青空を眺めた。

「あたっ!、ちょっと姉ちゃん急に立ち止まらないでよぉ」

後ろから、どしんと、妹のヒナタの身体がぶつかってくる。

「たく‥、前見て歩けっつーの」

「お姉ちゃんこそ、急に早歩きしたり、立ち止まったり、なんなのよぉ〜」

「はい、はい、お姉ちゃんが悪うございました。」

ひらひらと、右手をふって、怒ってないよの合図をした。

「いつもそうやってゴマかすぅ‥」

ヒナタが、マンガのヒロインみたいに、ほっぺをふくらましておこってる。

こうみると、我が妹ながら、なかなかかわいいヤツなんだけど、最近は口が達者で、ちょっとイラツとするんだよなぁ‥と、ぼんやりとむくれた、妹を見上げる。

そんないつもの平和な1日が過ぎていくかと、思ったその日。

妹は、スマチとトカゲを残しあの世に行った。

01-2

妹が亡くなって1ヶ月

亡くなった。

いや違うな、いなくなった。が
正しいかもしれない。

聞いた話によれば、失踪者扱いとなった場合、 警察・消防の捜索・救助は3日~1週間らしい。

もし、それでも発見に至らない場合、捜索が打ち切られるそうだ。

ボンクラな父はすでにこの世にいないが、母と必死でヒナタを探したが、まさに消えたようにいなくなってしまった。

妹が消えた7月7日から、今日でちょうど1ヶ月
母と相談し、気持ちに区切りをつけるため、今日を妹の命日に決めた。

もう探さない。もう諦めよう。

母と相談し、妹の部屋を片付けることにした。

名目上は、いつ帰ってきても、いいように、
ちゃんと整理しておこう。と、

母も気丈に言い張ったけれど、
まだ気持ちに整理がついていないと思う。

タマキは、母が夜な夜なリビングで、
妹がいつも付けていたスマートウォッチを、
数珠のように頭にすりつけて泣いているのを、
見かけて、見ぬふりをしていた。

そうだ、スマートウォッチ‥

ん?スマチか、いまさらどーでもいい。

母が神棚に置いていた、妹のスマチを、
手のひらに乗せてみる。

黒いバンドで、シンプルなデザイン。

メーカーは‥

ZONY‥

聞いたことがあるような、ないような?

ヒナタのスマートウォッチ

タマキは左腕にはめてみる。

パチン

「いっ!」

タマキの脳裏に、走馬灯のように、
ヒナタとの会話が駆け巡った。

左腕のスマートウォッチを見ると、
英語で”Connected!!”と、表示されている。

コネクテッド状態

「ナニこれ?」

スマートウォッチを付けた左腕が、
勝手に宙を舞い、指揮者のように、
リズミカルにダイナミックに、
文字を描くように動いた。

タマキは放心状態で、勝手に動く左腕を、
ぼんやりとながめていた。

なんとなく、自分の意思で、
止めてはいけない、何か神聖な儀式を見ているような気持ちだった。

時間にすると2、3分だったと思うけど、
永遠の時の狭間に滑り込んだようだった。

いつのまにか、宙を舞っていた左腕は、だらんと、落ちていた。

左腕のスマチを見ると何も表示されていない。

なにも表示されていない‥

いったい、何の儀式だったんだろう。

タマキは、あらためて左腕を眺める。

特に何も起きていない。

何だったんだろう。
お化けにでも騙されたような感じ‥

ポルターガイスト現象?

昔、オカルト好きのオヤジが、言っていたようなないような‥

「ひゃっ!」

おもわず、女の子みたいな声を出したタマキは、ちょっと恥ずかしくなった。

「はーびっくりした、なんか足元に冷たいモノが‥」

左の足に、ぴたっと、ちっちゃいカエルみたいなモノがはりついている。

「きゃー!」

タマキの声が、マンションにこだまする。

(つづく)

02話『お姉ちゃんとの約束』


〜参考文献〜

Episode01 タイトルはサンドイッチの法則を使えばいい

この小説は、とらねこさんという、
有名なnoterさんからの教えをもとに、
実践的に書かれた作品です。

まずタイトルですが、幻想的なモノと、
科学的なモノを結びつけたいと思い。

”幻獣”と”コンパス🧭”にしました。

最初、『幻獣師の薬箱』という、タイトルも考えましたが、Googleで検索してみたら、幻獣のお医者さんをテーマにした人気作品がすでにあることを知り、これはパクり疑惑につながりそうだと思い、断念しました。

『幻獣師のスマチ』も考えましたが、調べてみたら、スマチはまだ言葉としての認知度が低かったので、スマートウォッチのGPS機能から、コンパス🧭というワードをひっぱってしました。

というわけで(どういうわけだ)
『幻獣師のコンパス🧭』いかがでしたか?

タイトルの付け方にアイデアを頂いた
とらねこさん、ありがとうございました。


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