「自発性を操縦するデザイン」というハック 『「ついやってしまう」体験のつくりかた』
本稿は光文社のサイト「本がすき。」に9月18日に寄稿したレビューです。編集部のご厚意でnoteにも転載しています。
「つい」やってしまう。
「つい」夢中になる」。
「つい」誰かに話したくなる。
この「つい」という自発的なアクションをユーザーや顧客からいかに引き出すか。商品やサービスの開発、イベント運営などの成否を握る手法について、「体験デザイン」という発想からアプローチする。
『「ついやってしまう」体験のつくりかた』ダイヤモンド社
玉樹真一郎/著
筆者は元任天堂の企画担当者でゲーム機「Wii」のコンセプトに深く関わった人物。「スーパーマリオブラザーズ」や「ドラクエ」「ゼルダ」などの名作ゲームを例に、「自然に人々を物事にのめりこませるための仕掛け」の共通した設計思想を様々なファクターに因数分解してみせる。
内容に説得力があるうえ、本のつくり自体が一種のゲーム攻略の趣を持っている。さすがユーザー(読み手)のツボをおさえているな、と感心する。読みだすと「つい」次のページをめくってしまう面白さがある。
本書の手法はゲームや娯楽作品のストーリーつくりなどに幅広い分野に応用できるだろう。私が「相性が良さそうだ」と思ったのは「ゲーミフィケーション」だ。
ビジネスや学習にゲーム感覚の仕組みを取り入れ、生徒や従業員が「攻略」に夢中になっているうちに成果が上がるといった手法は、あちこちで取り入れられている。飽きさせないで「つい」やってしまう仕組みつくりに、本書の説く体験デザインのノウハウは有用なはずだ。
読後、何気なく消費している娯楽や商品・サービスの選択に、果たしてどこまで自発性があるのだろうか、という疑問もわいてくる。
もしかしたら今の時代、本書が説くような手法が一番成功しているのは政治の世界ではないだろうか、と夢想した。
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