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変化に対応する自治体、取り残される自治体

この記事はパブラボからの転載です。

僕は30代の10年間を横浜市議会議員として過ごした。その経験からの肌感覚で言うと、都市が持つオープンイノベーションの可能性は非常に大きい。一方で、やはり課題も山積みだと思うのは、日本において、この考え方をどう広めていくのか、という本質的なところに問題がある。

まず一つには行政そのものが企業に対して警戒心が強いこと。これは日本の特徴と言ってもいいだろう。

僕は、これまでシンガポールやニューヨーク、ハンブルグ、コペンハーゲン、ヘルシンキと世界の様々な都市と自治体を視察に行ってきたけど、どこももっと軽やかに行政と企業が連携していた。不思議なことに日本の場合、企業と付き合うことを行政が極端に警戒する傾向にある。

一方で、企業サイドもはなから自治体に期待していないフシもある。最近でこそ、自治体がもつデータの有用性に気づき、考え方を変えつつあるように思うけど、それでも行政に対しては「ビジネス感覚がない人たち」と見ているのは間違いない。

多様性と寛容性がポイントに

今、僕たちの住む日本は世界でも例を見ないスピードで高齢化社会へ突入し、一方で経済的に豊かになった国家、都市の宿命ともいえる少子化も進行中だ。バブル経済の崩壊以降、政府も自治体も大きな債務を積み上げてしまった。公民連携に代表される、公共サービスのオープン化はまったなし、なのだ。

それは「好きだ、嫌いだ」の議論とはまったく関係なく、社会的背景として進んでいくと言っていい。2000年代初頭のエレクトロニクス業界がそうであったように。

経済の世界はある意味分かりやすい。経済合理性によって物事が進捗するため、対応が遅れれば、マーケット・シェアを落とし、場合によってはマーケットからの撤退も起こり得る。行政サービスの場合は、経済合理性だけでは動かないところに難しさがある。しかも、そこには市民をはじめとした人間の感情が加わってくる。

結果何が起きるかというと、今後、都市によって行政サービスのオープン化のスピードに差が出てくる。そして、その差はそのまま都市の競争力の差に直結していくはず。

公共がビジネスになる時代へ

重要なのは自治体も企業も、NPOなどのソーシャルセクターも、多様性と寛容性を持つこと。今ほど多様性、ダイバーシティの重要性が叫ばれている時代もないでしょう。企業と行政では組織の行動原理が異なる。当然、ソーシャルセクターも異なる。行動原理の違う組織が何かを一緒にやろうとするとき、プロセスを含めて何から何まで異なるのが当たり前だ。

多様性とは、その違いをまず認識し、認め合い、歩み寄ること。認識できても理解できないケースは、相手のやり方、行動様式を否定しないこと。自分たちのやり方を正義とせずに、「そんなやり方もあるのか」とまず、見守ることが大切だ。

簡単なようだけど、その簡単なことができずにオープンイノベーションが起きないことは驚くほど多いのが現実。これは僕自身、様々な経験の中で実際に肌で感じてきたことでもある。多様性には寛容性が必要だ。社会全体がオープン化の方向へ進んでいる中で、オープンイノベーションが起こりやすい多様性と寛容性を備えた都市、自治体がこれからの10年、20年の中で脚光を浴び、人を集積していくことになるだろう。

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