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計算できんで何が悪い!リターンズ④運動ダメな僕を救ったキャッチボール

僕は、子どもの頃も今も、運動が極端に苦手です。

例えば…走るのは恐ろしく遅いですし、短距離走も持久走も、運動会や持久走大会などで小・中・高校・大学を通して最後尾以外になったことがありません(笑)

球技など、どんなスポーツも何をやっても形にならないと言うか、少々トレーニングや練習をしてもお話にならない低レベルから脱せず、日にちや時間をかけて練習しても上達しませんでした。

なわとびはすぐに引っかかるし、水泳は泳げはしますが前になかなか進まないし、鉄棒に至っては人生で一度も逆上がりに成功したことがありません。

小学生の頃は周りがみんなやってたのでソフトボールチームに入りましたが、基本のキャッチボールができません。どう頑張ってもボールがグローブの中に入りません。たまに捕れても、投げ返すとボールが相手に届きません。もちろんバッティングもボールに当てられませんでした。

中学に入って卓球部に入りましたが、ラケットになかなか球が当たらない(笑)毎日練習してるのに全く上達しないので1年持たずに退部しました。

僕は明らかに、身体機能に問題がないのに人並み外れて不器用で、極端に運動が苦手な「発達性協調運動障害」(DCD)なのですが、当時はそんな概念すらなかったので、なかなかに大変でした。

僕はハサミや箸も上手く使えないし、えんぴつで文字を書くときも筆圧の加減がわからずよく芯をボキボキ折ってたので、そんなこともこのDCDに起因しているのだろう、と思います。

DCDの子どもたちは、練習やトレーニングをしても周囲に比べて上達が遅く、なかなか身につかないため、先生やスポーツ指導者がその特性を理解せずに接することで、運動嫌いになる傾向が強い、と言われています。

上手だろうが下手だろうが「適度な運動をする」ことは健康を保つために大切ですが、ただでさえ苦手なところに、他のできる人たちの中で無理矢理同じメニューで運動させられて、できないと厳しく責められたり馬鹿にされたり、注意されたら「もう運動は嫌だ!」と思うのは無理ないと思います。

僕もそうでした。

中学に入って、体育の時間に体力テストがあり、僕は一生懸命やりましたが、ある日、体育の先生に呼び出され「データを分析する会社から『現代の中学生ではあり得ない数値で、明らかに計測ミスのためデータに含められない』と連絡があったからもう一度テストをするぞ!」と言われました。

それで僕とその先生の2人で再テストをしたのですが、結果は同じで、やっぱり「現代の中学生ではあり得ない」と出たそうです。どんな数値だったか細かくは覚えてませんが、ソフトボール投げが全力で投げて8メートル!(砲丸投げかよ笑)というのは今でも覚えています。

結果は仕方ないとして、しんどかったのは、その後の体育の授業で、その先生がクラスみんなの前で僕のことを「ミスター大橋!」と少し揶揄した言い方で呼び、再テストしたいきさつを話して「また『あり得ない』って返ってきたからもうデータ出さないぞ、いいな」と声をかけてきたことでした。

その時、クラスのみんなは笑ってました。「やっぱり…」「あいつ、勉強もだけど運動も全然ダメやん…」というクラスメートの僕に対する気持ちがクラス全体を覆っていく雰囲気を感じ、とてつもない絶望感と屈辱感を味わったは今でも心の中にダメージとして残っています。

以来「運動なんしない!」と思うようになり、日々の卓球部の練習も、できないうえに精神的なしんどさが加わって、退部してしまったのです。

そんな中、運動に関して救いになったのは、野球部員だったある友だちのひと声でした。

彼の家に遊びに行った時、僕のことが気になったのか「ちょっとキャッチボールやってみる?」と声をかけてくれ、捕球が苦手なことを話すと「最初はお手玉ぐらいの距離から始めればできるよ」と言うのでやってみると、すぐ近くからなら捕球することができました。

それからほぼ毎週のように、彼とキャッチボールをするようになり、投げるのは相変わらず8メートル以上は難しかったですが(笑)、捕球ができたら少しずつ距離を長くする、と繰り返していたら、いつの間にか彼の速い球を離れた距離でも捕球できるようになりました。

僕がキャッチボールが苦手なのは、DCDのうえに空間認知が苦手なところがあり(計算障害の限局性学習症がありますが、これも空間認知の苦手が起因していると思っています)距離感を掴むことが難しい特性がある故だと思うのですが、キャッチボールに関してだけですが、距離感がわからなくても感覚を取り入れて繰り返すうち、何とか捕球するコツがわかりました。

「運動すること」は今も苦手ですし、大人になってからは生活習慣病になってなかなか面倒くさいことになるのですが(この話はまたいつかします)、キャッチボールができるようになった喜びから、僕は小学校時代に一度は嫌いになった野球が好きになり、今では野球観戦が好きですし、何より息子たちが幼い時にはキャッチボールをしてあげることができました。

子どもたちとのキャッチボールは相変わらず投げ返すのは下手くそで(笑)全力投球して弱いボールがやっと届くぐらいでしたが、何とか「キャッチボール」として形にはなりました。

子どもたちとは暇があるとキャッチボールをしていて、やがてそれがきっかけなったらしく、息子2人は少年ソフトボールチームに入団し、中学・高校は何と野球部へ。2人とも高校3年の時は夏の大会に出場し、県大会ベスト16まで行きました。僕自身も運動は苦手でもスポーツそのものは嫌いにならなかったこと、野球が好きになったことを考えると、中学時代の友だちにはとても感謝しています。

ですが、毎年、全国の中学生の体力が昔に比べて…というニュースがあるたびに、僕は「あのデータに僕のデータは入ってないのよね」と笑ってしまうのです(笑)


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