【哲学・科学・文化】われわれはどこから来たのか。われわれはどこへ行くのか。⑦
われわれはどこから来たのか。われわれはどこへ行くのか。
生命の誕生と死後の世界はずっと科学では解明されてきませんでした。
その答えに関して科学で解明されようとしています。
今回はついにその核心について書いていこうと思います。
過去の記事はこちら。
前回はユーリーとミラーが疑似原始地球を作ったが、生命は生まれなかったという話を書きました。
しかし、近年の科学では、何もないところから生命が誕生したということを証明する説が出ています。
その説はジェレミー・イングランドというMIT(マサチューセッツ工科大学)の准教授によって提唱されました。
出展:https://www.basicbooks.com/contributor/jeremy-england/
このジェレミー・イングランドの説のカギは「エントロピー」です。
●エントロピーとは
エントロピーとは「物はばらばらになる」ということを表した言葉です。
科学用語では「秩序あるシステムは必ず崩壊する」と言われます。
例えば海辺に作られた砂の城があったとします。
出展:https://gahag.net/008036-beach-sand-castle/
これは無数の砂粒が秩序立てて並べられ、城が形作られている例です。
これが時間が経つとどうなるか。
波によって壊されたり、風によって崩れていきます。
これがエントロピー(物はばらばらになる)ということです。
波や風が自然と砂の城を作ることはありません。
エントロピーは構造を崩します。
ホットコーヒーもまた同じです。
これはマグカップに熱エネルギーが集まっている状態です。
これをそのまま放置しているとどうなるか。
熱エネルギーは分散し、コーヒーは冷えてしまいます。
これもエントロピーです。
待っていたら自然とコーヒーが温まっている、ということはあり得ません。
エントロピーの逆は無いのです。
この世界は秩序が無秩序に変わっていく世界です。
そのため、生命のない物質が自然発生的に秩序ある複雑な生物となるなんてことが起こりえるのか、という謎は残り続けました。
●秩序はどうもたらされるのか
しかし、世の中を見ると無秩序から秩序がもたらされる例もたくさんあることが分かります。
出展:https://dailyportalz.jp/kiji/140814164855
無秩序に並んでいた砂鉄が磁石を近づけると秩序をもって集まるようになります。
これは奇跡が起こしているものではなく、電磁気の働きによるものです。
出展:https://tsumikiya.jp/products/detail.php?product_id=1119
ビー玉も底が丸くなった器の中では一か所に集まります。
これも神の手が介在したわけではなく、重力によるものです。
無生物の分子が秩序をもって複雑な構造を作ることは、他にもたくさん見られます。
竜巻や、雪の結晶、雷雲なども、世界が秩序を与えたものの例です。
これはエントロピーの逆の現象が起きているように見えます。
では、世界は秩序に向かっているのでしょうか?
それとも無秩序に向かっているのでしょうか?
●ジェレミー・イングランドの説
では、MIT准教授であるジェレミー・イングランドはどのような説を提唱したのでしょうか。
ジェレミー・イングランドの説のカギは「世界はエネルギーの拡散を目的としている」というものです。
世界はエネルギーの集中した箇所を見つけると、そのエネルギーを拡散させる、というものです。
例えば熱いコーヒーの熱も、時間が経てば必ず冷め、熱は室内の他の分子へ分散されていきます。
上ではエントロピーとその逆の現象について説明しました。
エントロピーの逆で分子が秩序をもって並ぶ例をいくつか取り上げましたが、これらはすべて"散逸構造"の例です。
"散逸構造"、つまりエネルギーをより効率的に分散させる構造になるために、並んだ分子の集まりになっています。
竜巻は、圧力を回転力に変えて消耗させることで、高圧領域を消し去る働きをしています。
雪の結晶は、太陽エネルギーを分散させるために、多面構造によって光をあらゆる方向へ無秩序に反射する構造になっています。
雷雲も、雲が静電荷によって秩序を生み出すとき、雷によって雷雲のエネルギーを散逸させます。
つまり、物質が自ら秩序を作り出す理由は、【エネルギーをよりよく分散させるため】、ということができます。
世界は秩序を作り出し、エントロピーを加速させていくということです。
●われわれはどこから来たのか
生物は世界が生み出した秩序あるものの一つです。
つまり、生物はエネルギー散逸のために世界によって生み出されたもの、というのがジェレミー・イングランドの説です。
例えば、植物による光合成はエントロピーを加速させる効果的な仕組みです。
太陽のエネルギーを吸収し、木の内部でそのエネルギーが弱められた赤外線に変わり、外に放出されます。
人間を含むほかの生物に関してもすべて、秩序ある物質を食物として消費し、それをエネルギーに変えて熱として散逸させます。
つまり、生命は物理法則に従うだけではなく、物理法則によって生じたと言うことができます。
原始地球では、世界がよりエネルギーをよりよく分散させるためのものとして、DNAができ、そこからどんどんエントロピーを加速させるために構造を複雑にしていきます。
そうやって生命は複雑化してきたのだと予想されています。
生命は世界が、エネルギー散逸のために作り出して繁殖させたものなのです。
吉村先外
※ジェレミー・イングランドに関する研究に関して詳細を知りたい方はこちら
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?