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大人の表現とは何か

お笑い芸人の友近さんをインタビューする機会に恵まれました。
記事はこちらとなります。↓

インタビューが盛り上がってきたので、僭越ながらお笑いに対する自分の考えをぶつけてみました。
「漫才でツッコミの人が笑ったりしてると、観てるこっちは冷めちゃうんです」

嬉しい事に同調して頂き、芸人さんの中にはわざと誘い笑いで観客の笑いを促す方もいるという話をしていただきました。

お笑いに限らずこれに関しては以前から思っていて、吹出しだらけで登場人物の心情ばかり書いてある小説、愛してるだの抱きしめたいだの連呼する曲など、感動できないコンテンツには「作り手の思いをストレートな言葉や動きで押し売りする」という共通点があります。

面白い文章を書こうとして、やたらと弾けた文体にしたり、必要以上に!!や(笑)を連発したりする文章には生理的嫌悪感を抱いてしまいます。以前(爆)というのもよく使われてましたが、それこそ爆死しろと思っていました。

人の心を揺さぶるのに最も有効な方法は、物語を綴る事です。

石川さゆりの「津軽海峡冬景色」がなぜ素晴らしいのか。歌詞を聴くと、主人公は最後まで「寂しい」とか「恋しい」とか言いません。ただ北国の景色を見ながら泣いている情景が歌われるのみです。それでも聴き手には女性の置かれた状況や心情が鮮明に浮かび上がります。五木ひろしの「横浜たそがれ」なんて、単語の羅列だけで男女のせつない別れを表現するという反則技で曲を成立させています。別に演歌ファンではないのですが、長期的に愛される作品ってやはりそれなりの理由がある気がします。

尾崎豊の「15の夜」なんてのもそうですね。アレが秀逸なのは思春期の少年の鬱屈した気持ちを「盗んだバイクで走り出す」のワンフレーズで切り取って表現したところにあって「バイクを盗まれた人の気持ちを考えろ」とギャグでなく真面目に言う人は、多分心の成長が9歳ぐらいで止まっているんじゃないかと思います。

「うんこチンチン」という直接的な表現で喜ぶのは子どもです。大人ならうんこの形状、硬さ、出方や、その時のチンチンの状況といったストーリーを紡ぐ事で読み手の心を揺さぶって欲しいものです。

まぁ、これは個人の好みなので全く同意出来ない人も居る事でしょう。ただ、文章を始め、何かを表現する際の技術の1つとして知っておいて損はないかと思う次第です。


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