授業を観察する3つの視点
はじめに
この記事は死ぬほどアクセスが少ない私のHPにて2019年に公開した記事を加筆・修正したものです。今回は授業観察に関する記事です。授業観察といっても,公開研究会における授業などあくまで飛び込みで授業を観察する場合です。普段入っている学校とかだと,また話が違ってくると思うのでその点ご了承ください。
何のために授業を観察するのか
いろいろな目的があると思うのですが,私の場合は「事例の収集」が主な目的です。つまり,「どのような先生が,どのような学級で,どのような子供に,どのような授業をしたならば,どのような反応があるか」を観察して,それをもとに研究のアイディアにつなげていく感じです。
飛び込みで観察するときは,学校の取り組みをすべて把握することはまず無理で,実際の情報の数%くらいしか把握できません。そういった限られた情報であることを自覚したうえで,観察した授業をもとに,自分に対する「お土産」をいかに作り出せるかが重要だと思っています。
授業前
指導案が事前に入手できる場合は,本時の目標を確認するようにしています(当たり前ですがとても重要です) 。本時の目標とは,たとえば「振り子の一往復する時間の要因を明らかにする実験を通して,実験を計画する力を身につける」などです。 指導案の本時案には,目標を達成するための学習活動が書いてありますので,どのような支援や工夫が入っているのかをそこで確認します。
良い指導案の場合ですと,「この場面が授業の山場かな」とか「この発問は気合が入っているな」というのが伝わってきます。いつもそうした予想や期待を持って授業に臨んでいます。 指導案が入手できない場合は,授業の冒頭に示されるであろう「めあて」や「目標」をもとに観察するようにしています。
授業中
公開研究会の授業には随所に工夫が散りばめられていますので,基本的には「目標を達成するために,どのような学習活動や支援を行っているか」という「目標と展開の整合性」という視点で観察するようにしています。基本はこの視点です。
一方,マクロな視点として,「学校目標から授業目標まで,一貫した目標になっているか」という「目標の一貫性」という視点もあるのですが,それは普段から指導に入っている指導助言者の視点だと思うので,飛び込みの授業観察ではあまり考えていません。特色ある学校の場合は,このような視点も踏まえて観察するようにしています。
たとえば,実験を計画する力の育成を目標とした理科の授業の場合ですと,
・なぜその教材にしたのか?(指導案に書いている場合もあります。)
・子供が実験を計画するときに,どのような支援を行っているか?
・支援はどの程度効果的か?
などの細かい視点で観察しています。
そして,想定通りの効果的な教材や支援であったのかを,子供の発言,行動,表情,ノート,ワークシートなどを見て判断するようにしています。
子供がある程度想定内の動きをした場合には「この教材や支援は,こういうときに有効であるようだ」と判断して,心のメモ?に残しておきます。
そして,子供が想定外の動きをした場合には,なぜそうならなかったのかを,これまでの知識や経験をもとに考えています(想定外のときの事例が研究のアイディアにつながることもあります。これが楽しい)。
授業後
自身の「お土産」を作り出す作業をします。つまり,「どのような先生が,どのような学級で,どのような子供に,どのような授業をしたならば,どのような反応があるか」に対する回答を自分の中で作っていきます。前述したように,普段の学校の取り組み,先生と子供の関係性,クラスの雰囲気など,不明な点が数多くあるので,完全な回答を作りだすことは不可能です。なので,過度な一般化にならないように気をつけながら,授業の事例を整理していきます。
このほか,授業の中での教師のちょっとした工夫(思考を促す発問,声掛け,教具など)やそれに対する子供の反応なども忘れないうちにメモするようにしています。
あと,想定外の動きになったような授業であれば,観察した授業の流れを思い出しながら,自分だとどのような展開にしたのかを考えます。こうすることで,別の学校の研修会に参加したときに,1つのアイディアとして紹介することができます。
最後に,これは完全に遊びですが,授業で用いていた教材の価値を考えます。
たとえば,「振り子」ですと,振り子を教材とすることでしか得ることのできない価値を考えます。もっというと,「他の何物でもなく,この価値は振り子じゃないと見いだせないんだ!」みたいな価値を考えます。
こうした教育的価値を見出す思考は新しい教材の解釈に繋がります。
自然科学的な視点,人間形成的な視点など,様々な方面からのアプローチがあります。
同じ授業を観察した仲間たちとこの話をするととても楽しいです。ぜひやってみてください。
まとめ
まとめると
目標と展開の整合性:目標を達成するために,どのような学習活動や支援を行っているか
目標の達成度:どの程度目標を達成することができたか
教材の価値:その教材でしか得ることのできない教育的価値は何か
みたいな視点で授業を観察しています。
あくまで私個人の場合ですので,他にも様々な視点があると思います。
なにかの参考になれば幸いです。
元記事
雲財寛(2019)「授業を観察する視点」(http://unzailab.com/viewpoint-of-lesson-observation/)(2023年2月11日閲覧)