歴史的文化財VRアーカイブ化計画(福山市)【スタートアップ共同調達事業】
福山市といえば「ばらのまち」で有名だが、実は「歴史のまち」でもある。お色直しが済んだ福山城、潮待ちの港だった鞆……など。貴重な文化財を記録として残しながら、その魅力をもっと知ってもらえないか? そこにVRを活用するという案はどうだろう?
文化財修理の際の情報を
立体的・多面的に記録
今回の福山市の採択案は「空間データ活用プラットフォーム『スペースリー』を活用した文化財のVRアーカイブ化による修理記録及びプロモーション活用」。「福山と文化財」と聞くと一瞬「ん?」と思うが、少し考えると「確かにそうか」と納得する。
この採択案に関して市の経済環境局文化観光振興部文化振興課主事の野村友規(のむら・ゆうき)さんと亀竹洋介(かめたけ・ようすけ)さんに話を聞いた。
福山市にある指定文化財・登録文化財は約360件。県内では多い方らしい。
貴重な文化財の修理記録をアナログからデジタルに変えることで保存できる情報量も増えるし、それを情報発信にも使えるのではないか?――そこがこのプロジェクトの起点だった。
360度VRで情報量も臨場感も
アクセスも圧倒的に向上する
福山市の要望に応えたのは「株式会社スペースリー」。360度VRコンテンツを手軽に制作できるクラウドソフト「スペースリー」の運用を行っていて、今回のThe Meetでは広島市の協業相手にも選ばれている。ちなみにそちらは同じくVRを使って防火管理講習をリモート化するという試みだ。さらに昨年度の「ひろしまサンドボックス」実装支援事業にも採択された経験がある。
これまで写真で行ってきた記録をVRにすることで、情報量も臨場感もアクセスも飛躍的に向上する。しかし福山市がスペースリーと手を組んだのは、それ以外の想いもあったようだ。
つまり文化財情報の保全も含めたVR技術の習得、それが今回の目的である。
神辺の「廉塾」を一例に
職員もVR撮影を学習中
では実証実験の様子はどうだろう?
VR制作は順調に進行中。また撮影した画像の発信についても、「修理前・修理後を切り替えられるようにしてビフォー・アフターが見られるというのはどうだろう?」「周辺の文化財もVR化して、VR内で地域を周遊できるスタンプラリーをやるのはどうか?」などさまざまなアイデアが出ているという。今後は文化財のデータベース化や情報発信のためのポータルサイト開設まで視野に入れて進めていく。
一方、VR技術の習得の方はどうだろう?
360度カメラを購入し、実地でVRレッスンを遂行中。こうした経験を経てVR制作が内製化されたら、これは福山市にとって大きな武器になるのではないだろうか。
すぐに事業化は難しくても
今後の検討材料にはできる
最後にThe Meetに対する感想を2人に聞いてみた。
野村さんも亀竹さんも事務職なので今後今の文化振興課から異動になることももちろんある。そうなれば今回習得したVR技術や、ここで接点を持ったスタートアップが他の事業に活かされていくことは想像に難くない。
まるで新しい花の種が落ちるように、福山市にThe Meetの波紋が広がっていく。
●EDITOR’S VOICE 取材を終えて
冒頭で「福山と文化財」という組み合わせに一瞬「ん?」と思うと書きましたが、実際みなさん福山にどれくらい歴史感を感じているんでしょう? 尾道や三原の方が歴史っぽいイメージがありますが、確かに文化財マップを見るといろいろあるんです。特に古墳などの遺跡がこんなにあるなんて知りませんでしたよ。
それがVR上で辿れたりすると面白いですよね。ゴーグルつけてタイムトラベル備後ツアー。新市とか駅家、あと府中なんて歴史感ある地名だし、今とは異なる故郷の風景に出会えそうです。(文・清水浩司)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?