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【30EGGS】医師が不足しているところに医療を“満たす”(MITAS Medical)

今回は30の卵のうち、「MITAS Medical」をご紹介します。

MITAS Medicalは、「医療が届かないところに医療を届ける」ことを目指し、スマートフォンに接続するだけで専門医でなくても眼画像を撮影できる眼科診療機器「MS1」を開発。カンボジアやモンゴルではすでに実用化されています。

そんなMITAS Medicalが、D-EGGSの最終30案に採択され、広島県を舞台に実証実験を行います。

起案内容

Interview

代表取締役で医師の北直史さんにお話を伺いました。

まずは、細隙灯顕微鏡のことを教えてください。
眼科を受診したことがある方は、医師の診察の際、あごと額を固定して目に光を当てる大きな器具で、目の中を診られた経験があると思います。あれが細隙灯顕微鏡です。眼科の診察では必ず使われる、とても重要な器具です。
細隙灯顕微鏡は、通常でも使いこなせるようになるまで1、2年かかります。目に対してしっかり焦点を合わせないと、正確な検査ができません。
さらに、これまでも持ち運びできるものはありましたが、前後左右にぶれてしまいがちで、経験のない人が目に安定的に焦点を合わせることがとても難しいものでした。

MITAS Medicalの「MS1」は、眼科専門医でなくても使えるそうですね。
細隙灯顕微鏡のコアとなる機能を取り出してモバイル化したもので、スマホに接続して使うことができます。撮影した画像を専門医に送信することで遠隔相談ができるようにしました。
いちばんのポイントは、額とほほにローラーを当てて器具を安定させることで、目に焦点を合わせることが比較的容易にできるということ。このおかげで、眼科の経験がない医師でも90%の方が、10分程度説明を受けるだけできれいな画像を撮ることが可能だったという実績もあります。
また、目に当てる光も、多少のずれが生じることを前提とした工夫をしています。

図1

すでにカンボジアやモンゴルでは実装されています。2019年にモンゴルで行った実証実験では3か月で330件の遠隔診断を行ったところ、病院への移動にかかるお金と時間を90%削減できました。さらにこのシステムを利用することで失明を免れた事例も1件ありました。

これまで海外で効果を上げてきている私たちのシステムを、日本の公立診療所などでも利用を広げていくにはどうしたらいいかということを模索するために、今回D-EGGSに参加しました。

今回の実証実験で達成したいことは何でしょうか。
大きな目的は3つあります。
ひとつは、山間部や離島で、どれほど眼科の遠隔相談サービスのニーズがあるのか把握すること。
ふたつめはオンライン診療や健診のオペレーション上の問題や課題を把握すること。
そして地域差の把握です。どのような形でオンライン相談を行うのがいいか、人口や病院までの距離など、地域による差でニーズが変わってくると考えています。

すでに広島の診療所で実際に使ってもらったとか。
似島診療所の石光秀年先生に、2週間ほど実際に使ってもらいました。125件ほど健診など行っていただき、県立病院の宮城秀考先生に遠隔でご相談いただきました。
石光先生は眼科医ではありませんが、「簡単に使える」とおっしゃっていただいています。
今後はオンライン診療のデモンストレーションも予定しています。
相談を受ける宮城先生も、1件あたり1分ほどで見ることができているそうです。細かい改善点などご意見もいただきました。

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(↑似島で実証実験を行ったときの写真。左から、北さん、石光先生、宮城先生)

さらに患者さんの声を聞くため、眼科の受診歴や定期的な受診の有無、定期受診をやめた理由などについてアンケート調査もしています。新型コロナウイルスが眼科の受診に影響していると答えた人も25%ほどいました。

さらに似島以外の地域でもぜひ実証したいと思い、自治体や医師会と調整しています。

「MS1」の導入で、眼科医療はどう変わっていくでしょうか。
日本では700の自治体で眼科医がおらず、それ以外にも無医地区・準無医地区に指定されているところもあるのが現状です。
特に離島や山間部などのへき地では病院までの距離が遠いため、受診するのに時間とお金がかかります。高齢者の方はさらに時間もかかり、受診をためらうことで重症化することもあります。

私たちのシステムを導入することで、眼科医が近くにいなくても、最寄りの診療所で必要なタイミングで治療が受けられるようになる。そうすることで将来的に、視覚障害や目のことで苦しむ人を減らしていきたいと思っています。
どこにいても適切な医療を受けられることが、私たちの目標です。「MITAS Medical」には、「医療を満たす」という意味を込めています。

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