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【30EGGS】耕作放棄地を空から見る(大信産業)

今回は30の卵のうち、「大信産業」をご紹介します。

大信産業は、農業部門では肥料農薬の卸業、ハウス、灌水設備の設計施工など。緑化部門ではゴルフ場のメンテナンス、壁面緑化、公園の管理などを幅広く行っている会社です。

そんな大信産業が、D-EGGSの最終30案に採択され、広島県を舞台に実証実験を行います。

起案内容

Interview

事業企画室室長の田中敏章さんにお話を伺いました。

D-EGGSに応募したきっかけを教えてください。
事業企画室では、今回のD-EGGSのほか、農業における生産工程管理であるGAPの認証資格取得のコンサルや審査業務、環境モニタリング機器や自動かん水などスマート農業の推進に資する事業を企画しています。
スタートアップの「サグリ」さんとの協業を考えていたとき、広島県からサンドボックスへの応募を提案いただきました。
サグリさんの農地状況把握アプリ「ACTABA(アクタバ)」は、衛星からの情報を基にAIの判断で、耕作放棄地の可能性が高い圃場を地図上に表示するアプリです。

現状、各自治体の農業委員会では毎年8~9月、農地の耕作放棄状況を目視で確認していますが、猛暑に加え、大雨のあとは崩落の危険があったり、草むらではマダニに刺されたりと、危険を伴うこともあります。
そこで、ACTABAと当社のドローン技術を活用しようというのが今回の実証実験です。
農業委員会ではACTABAで表示された地図を目標に農地調査を行い、谷間や細い道の先など特に人が入って行きにくい場所には、ドローンを飛ばして写真や動画で確認します。

耕作放棄地空撮_page-0001

衛星画像でどのように耕作放棄地を判断しているのでしょうか。
衛星は365日撮影していますが、その中から異なる月の波長データを比較して耕作放棄地かどうかを判断します。ほ場の状況が、例えば5月には土、7月には緑に茂っている画像なら、耕作していると判断できます。
現在は水田の調査に利用していますが、柑橘や野菜など、他の作物への活用も検討を進めています。

ACTABAで作成した地図 判定を行ったほ場は色が変化する。(土色:耕作地、黄色:A判定、赤:B判定)(大信産業様提供)

(↑ ACTABAで作成した地図。判定を行ったほ場は確認チェックを行うと色が変化する(土色:耕作地、黄色:A判定、赤:B判定)(大信産業提供))

耕作放棄地の調査でも、現在はドローンの併用が必要ですが、衛星情報の精度が上がれば、将来的には衛星からの情報だけで判断できるようになるでしょう。
目視の場合でも100%正確ではありませんので、衛星情報の場合もどこまでの確度を求めるかということもポイントです。

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衛星画像は、耕作放棄地だけでなくさまざまな情報が得られるようになる可能性を秘めています。
現在、水稲の成育診断や、柑橘類の耕作放棄地の判断などの解析も進めており、水稲については一定の診断モデルの作成も実証実験の目標の一つとしています。また、水面の温度変化の診断なども可能になるかもしれません。
当社はもともと肥料の卸売業者ですが、肥料が必要な場所や必要な肥料の種類を、衛星画像から診断することも考えられます。
特に大規模な農業法人やJAなどでは、衛星画像診断により、圃場1枚ごとに成育状況を観察することにも役立ちます。
画像診断の技術を持つ「サグリ」とのタッグで、衛星やAI技術をはじめ、広い可能性をいち早く察知して取り入れることで、スマート農業を目指していきます。

農業の未来はどうなっていくでしょう。
農業はよく3K(きつい・汚い・危険)と言われます。
暑い中も休みなく作業しなければならない。
ドローンを使った柑橘類の防除なども実証を重ねていますが、特に夏場の防除作業は大変なものです。
衛星画像を活用することで、これまでハードルであったことが解決に近づきます。
圃場ごとの適切な管理が行える上、コストが下がり、収量を増やすこともできるでしょう。
さらに農業だけでなく、ゴルフ場の芝生の成育診断など、幅広い可能性を秘めている技術だと考えています。


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