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“顔パス”ロボットの、どこでもドロップインと、その先の可能性【RING HIROSHIMA】

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こちらは、AIアシスタントロボット「PLEN Cube」。
首をかしげるように動くこのかわいらしいロボット、カメラで顔認証ができて、なんと音声対話までできるんです。
お店の入口で受付したり、注文をとったり。
手のひらサイズでどんな場所にも設置可能。英語での会話だってなんのその。

「双方向のやり取りを伴う接客で、機械に対する抵抗感をなくして、顧客体験を高度化したい」と話すのは、今回のチャレンジャー・赤澤さんです。

CHALLENGER「PLEN Robotics株式会社」赤澤夏郎さん

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医療や宿泊予約など、業界特化型SaasなどでDX化は進んできているとはいえ、対人・対面業務には非効率な部分がまだまだあります。定型的な対人・対面でのやりとり、人と接する「ラストワンマイル」を埋めたくて「PLEN Cube」を製作しました。
人口減少により、働き手不足が深刻になっています。コロナ禍で人とできるだけ接触しないという行動変容が起きている今こそ、労働人口減少の課題を解決したいというのが事業のテーマです。

コロナ禍も手伝い、店舗入り口の検温モニターなど、無人のモニター設備が普及しています。
スマホのカメラでも顔を検出できることが当たり前になってきて、顔認証に対しての抵抗感が薄れてきた人も多いのではないでしょうか。

機械の操作がうまくいかないとき、人はなぜか「自分の操作が悪いせいだ」と思ってしまうんです。そうなると抵抗感が増したり、顧客体験が画一的になったりするおそれがある。
そこで「PLEN Cube」は、顔認証による効率化だけでなく、双方向のやりとりでより高度な顧客体験を生み出します。

まずは、介護施設や保育施設、シェアオフィスや専門学校など、固定の人が来る施設の入退館業務を効率化します。
“顔パス”で入退館ができる「PLEN Cube」。
ネットワーク・クラウドを介さないため、Wi-Fiのセキュリティや通信速度によらずに安定した通信が可能。顔のデータはおよそ1000人分まで保持することができます。

実証実験では、広島市にある3つのコワーキングスペース「fabbit」「co-ba hirsohima」「port.inc」で、ドロップイン利用の際に“顔パス”で受付。
利用の流れは、

CubexRING_HIROSHIMA - コピー

①オンライン本人確認サービス「eKYC」で、顔を登録。
②利用したい施設に行く。
③“顔パス”で受付完了。

これだけ!
モニターは、県内企業の社員です。

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気分に合わせて、便利なコワーキングスペースを使ってもらいます。
テレワークが広がっていますが、自宅だけでなくコワーキングスペースで仕事をすることで、生産効率を上げてもらおうという試みです。

ソリューションはばっちり、見た目もかわいい!
でも、もっと違う使い方もあるのでは?とアドバイスしたのが、セコンド・糸川さんです。

SECOND「株式会社ウフル」糸川将司さん

糸川さんは、クラウドサービスを活用した開発や、自治体向けのIoT活用促進事業、スマートシティの実現に向けた構想策定や実証事業支援を行っています。

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PLEN Roboticsと当社は電車1駅の距離。近くだし、SNSでも注目していたサービスです。いろいろな自治体で実証実験していることも知っていました。

なんと言っても動きがユニーク!
みんな検温カメラのおかげで顔を撮られることには慣れていますので、タブレット端末などとの差別化が重要です。

「PLEN Cube」は、手のひらにおさまるサイズ感も大きな特徴。この大きさのおかげで、どこにでも設置できることがタブレットとは違います。

顔認証もすごいですが、人の性別や年代も判定できると聞いて、マーケティングに使える!と思いました。
例えばフードトラックなど移動する店舗に設置して、エリアごとに来訪者の属性を見る。商店街で常連検知や回遊データをとる。いつ、どこに、どんな人がどのくらいいるかわかったら、出店場所の検討やターゲット設定にも活用できます。
RING HIROSHIMAでは、限られた時間のなかでできることを考えて今の形になりましたが、まだまだ将来性のある事業だと思います。

「PLEN Robotics」はエンジニア集団なので、マーケティングは鍛えている最中です。
本当に価値があるのは技術自体ではありません。取得したデータに価値を生み出すという視点がまだまだ足りないので、とても勉強になります。
糸川さんは「この技術があるならこんなことができるのでは?」と、技術の活用方法を見出してくれる。マーケティングの知見がある方に相談できるのはありがたい機会です。(赤澤)

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(撮影時のみマスクを外しています)

取得したデータをどう使うか?

実証実験を通して赤澤さんが目指すのは、単純な“便利グッズ”にとどまらない、データの活用方法です。

顔認証で得たデータを、国や自治体などの公的機関が所有する枠組みを作ることが最終目標です。
糸川さんと話していて出たアイデアですが、公的機関が持つことで、マーケティング以上の活用が見込める。常連検知や回遊データを使って、産業活性化に役立つ基盤づくり。コワーキングスペースであれば、県外企業の社員にワーケーションとして利用してもらうための誘致にも役立つかもしれません。
RING HIROSHIMAでは、時間があれば近隣の店舗で顔認証による決済も試してみたかったです。(赤澤)

2020年には宮崎県延岡市の保育園とデイサービス施設で実証実験をするなど、自治体との連携に積極的な赤澤さん。
なぜ自治体や地方に着目しているのでしょうか。

人手不足の課題は地方都市のほうがより深刻で、業務の効率化も地方でこそ必要とされていると考えています。地域貢献のため、地方都市にこそ普及させたいサービスです。
私たちのビジョン「人とテクノロジーが普通に共生する世の中を」作ることにもつながっている。それと、AIなどテクノロジーサービスが地方で活躍している姿が、単純に“イイな”とも思います。(赤澤)

セコンドの私の成果としては、プロダクトをしっかり活用できる段階にまで持っていけていない。でも、データベースを公的機関が持つというアイデアは、赤澤さんとだから出せたものだと思います。
ビジネスモデルを考える立場から見ると、もっとプロダクトを活用できるはず、ビジネスとしての可能性ももっと広がるはずと感じている。例えばコワーキングスペースでの利用で言えば、国のテレワーク支援とうまくつなげたりして、全国どこでも使えるアイデアです。
観光客や飲食店、移動モビリティの動きなど、今後も活用策を考えていきたいですね。(糸川)

(Text by 小林祐衣)

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