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【30EGGS】中高生の英語教育に光を(e-Education)

NPO法人e-Educationが今回D-EGGSに申請した案件は「AIを活用した新しい英語教育の形で日本の中高生全員が英語を話せるようにし、かつテクノロジーの活用で日本と新興国の社会課題を同時に解決する」というもの。
今回採択された30案件中、教育関係で審査をパスした唯一の案件である。

「私たちは英語教育に焦点をあてて事業を展開していますが、日本の英語教育はTOEFL平均点でアジア30ヶ国中26位。
“読む・聞く・話す・書く”という4技能のうち、特に“話す・書く”の2つは絶望的なレベルにあります。
原因として考えられるのは、身近にネイティブの教師がおらず英語を話す機会が少ないこと、そして先生が忙しすぎて英作文の添削に割ける時間が足りないことが挙げられます。
私たちはそれを新興国と連携することで解決しようとしています」

e-Education副代表の坂井 健さん(31)によると、具体的な事業内容は以下となる。
まず“書く”に関しては、生徒の英作文をフィリピン、バングラデシュ、ネパール、ケニアに送り、現地添削者にコメントを入れてもらう。
“話す”に関しては、フィリピンの講師と生徒をオンラインによるマンツーマンでつなぎ、英会話の機会を数多く持ってもらう。
さらに英作文はAI分析を使って、生徒が間違えがちな箇所を自動的にチェック。
これらを踏まえた上で彼らの提案が秀逸なのは、こうしたサービスをトータルで成立させる基盤があるところだ。
e-Educationは英語表現教科書日本トップシェアを誇る啓林館と提携関係にあり、教科書で学んだ内容を元に英作文に仕立て、それをもとに現地講師と会話するという一気通貫したプログラムの開発が可能なのである。

図2


一方でこの事業がもたらすのは、日本の学生の英語力向上だけではないという。

「私たちe-Educationの本業は発展途上国の子どもたちに教育の機会を与えること
ただ、学びが仕事に結びつかないと、勉強を頑張ろうという気持ちはなかなか起こりません。
私たちはこの事業を行うことで現地に雇用を創出し、そこで学ぶ子どもたちの勉強のモチベーションをアップさせたいのです。
“書く“では160人の講師が世界中で添削者として活躍し、サービス開始前の“話す“でも16人の講師を採用し、合格率は3%を下回るほど早くも人気職業となっています」

そんなe-Educationの広島での実証実験は理想的な形で進んでいるようだ。

「このサービスの実証実験を県立国泰寺高校で行うことができたんです。
国泰寺高校は学力が高く、なおかつ文科省がグローバル人材の育成のために設立したWWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアムの拠点校
日本で22校しかないグローバル教育の先進校で実証実験が行えるのは本当に幸運だと思います。
現在は国泰寺高校の1~2年生の全生徒560人を対象に、私たちのサービスを使うことで英語力や学習へのモチベーションがどう変化するか、調査を行っています」

すでに届いたアンケート結果からは、生徒の59.7%が将来海外で活躍したいと思っているが、英語を話す機会がなく、外国の人と話すことに緊張する生徒が84.9%にのぼるという実態が見えてきた。
坂井さんはこうしたデータを冷静に分析する一方、

「僕はめちゃくちゃ教育が大好きなんです!教育って日本人なら誰もが通ってきた道なのに、大人になると注目されなくなってしまって。だから全員で日本の教育を考えられるような世界にしたいんです」

と熱く語る。
「めちゃくちゃ教育が大好き」というのは、心からそう思ってないと言えない言葉だ。
日本の子どもたちの未来のため、新興国の子どもたちの未来のため、坂井さんの目はまっすぐ前を向いている。

「今回、広島で実証実験できたことは本当に大きかったと思います。
広島はオバマ元大統領が訪れるなど国際性が高く、県もグローバル教育に力を入れているところ。
テクノロジーに関しても広島県立高校で1人1台のBYODによるパソコン配備を実現するなど、先進的な地域
そういう県の、しかも国泰寺高校でサービス運用実験ができるのはひろしまサンドボックスのおかげですし、だからこそここでよい結果を残して、今後の社会実装につなげていきたいと思います」

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