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市町村に気づいてほしい!「大廃業時代」で失われるのは雇用だけじゃない【RING HIROSHIMA】

中小企業庁が予測する「大廃業時代」
平均引退年齢である70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は、2025年までに約245万人、うち約半数の127万社が後継者未定とされています。
これは日本企業全体のおよそ3分の1。
このままだと、中小企業・小規模事業者の廃業が急増し、2025年までに累計約650万人の雇用が失われる可能性があると予測されています。

どの業界も人材不足、後継者不足とは聞きますが、これほどまでとは…。
この由々しき事態に光を射すのが、ココホレジャパン株式会社によるサブスクリプション型の事業承継サービス「ニホン継業バンク」です。

RING HIROSHIMAの実証実験では、広島版継業バンクとして、県内自治体に3か月無料でサービスを提供。広島県内で事業承継の機運を醸成し、事業承継に関する課題の掘り起こしを目指します。

CHALLENGER「ココホレジャパン株式会社」中鶴果林さん

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事業承継と言えばM&Aが主流。ただ、手数料が見込めない小規模事業者はそのステージにも立てないんです。
後継者はいないけど、弟子をとるにしても、人材を探して、採用して、教えられる、その体力がないとできません。
自分の体力の続く限り働いて、自分の代で会社を閉じようと諦めている方が多いのが現状です。

尾道市向島在住の中鶴さん。1年前に東京から移住し、ほぼリモートワークで岡山のココホレジャパンに勤めます。
さらに、社長の浅井克俊さんも、神奈川からの移住者。
ココホレジャパンは、まちおこし・地域づくりを中心に、コンテンツ制作をしていました。

事業承継に着目したきっかけは、岡山の特産品である「ままかり」の商品化。実は、地元では特産品という認識があまりなかったのだとか。
「それはもったいない!」と、浅井社長が地元の水産業者と一緒に、ままかりをアンチョビ風にアレンジした新製品を開発。地域内で認知度を上げるだけでなく、軌道に乗せた暁には、地元の方に事業承継をして地域の雇用創出にもつなげようと考えました

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商品は有名店にも陳列され、メディアにも取り上げられましたが、その一方で事業譲渡には大きな壁が。事業が小規模のため、M&Aなど事業売買のステージに立てなかったのです。
浅井社長自身が、事業承継の課題に直面しました。

特に地方では、地域内で事業承継をするのは難しい。「ニホン継業バンク」でも、日本全国から継ぎ手を募っています。これまでにも、都道府県外から継ぎ手が移住して事業を継いだ事例が多々ありました。

海や山などの地理的条件や、商店街があって、こんな歴史があって…という地域の特色が、事業にも表れます。この場所だからこんな会社がある。事業自体が地域の魅力のひとつです。
だからこそ、基礎自治体の単位でひとつの継業バンクを運営することに大きな意義があるんです。

これまで、北は北海道から、南は宮崎県まで展開している「ニホン継業バンク」。
事業者と継業バンクとの仲介は地域が取り持っています。
地元と近い自治体や商工会、まちづくり会社が入ることで、オフラインでの対応も可能となり、事業者・継ぎたい人も安心して利用することができます。

向島の中にも、木から切り出して(船をこぐための道具)を作る職人さんがいらっしゃいます。日本でただ一人の職人さんですが、「自分の代で終わりにしたい」とおっしゃっているそうなんです。結果として、長崎県からお弟子さんが来てくれて、学んだ技術を持って帰られました。
このような事業者に「ニホン継業バンク」を使ってもらえたら、興味のある方に情報が届きやすくなると思っています。
ただ、こういう事例があるということ、地域の資源や文化が失われていくことについて、地域の危機感はまだまだ低くて。そのまち独特の事業がなくなることは、地域の特色が薄れることだと、RING HIROSHIMAで多くの自治体に知ってもらいたいです。

その熱い気持ちから、当初実証実験では2~3自治体に継業バンクを試用してもらう予定でした。
しかし短い実証期間中では難しい…と、現実的かつ建設的にアドバイスしたのが、公務員としての経験を持つセコンド・松永信雄さんです。

SECOND「株式会社日本能率協会総合研究所」松永信雄さん

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「継業バンク」と聞いて、第一印象で地域おこしのイメージを持ちました。
多くの自治体で人口が減って、とりわけ小規模事業者は事業承継もままならないという現状も以前から把握していました。
地域の中で、高い伝統技術やノウハウが受け継がれてきて、積み重ねてきた“技術”が消えることは、社会的損失です。その社会的損失を防ぎ、厳しい状況にある地域を支えようとする「ニホン継業バンク」は公共性の高いサービスですね。
自治体にはぜひ公共投資してもらいたい。

現在も自治体をクライアントに持つ松永さんだからこそ、ココホレジャパンの社会的意義を強く感じています。

ひとくちに「自治体」と言っても、組織風土や職員によって温度差が異なります。議会や予算の都合もあるので、即決ができないことも多い。
実証期間がとても短いこともありますので、できるだけ多くの自治体に試してもらうというよりは、1つの自治体でじっくり事例を作り上げていく方が良い結果になると思いました。
継業バンク自体も長いスパンで効果を出していく事業なので、年単位で取り組むことで定着していくのではないでしょうか。

RING HIROSHIMAでは江田島市で継業バンクを開設予定。その後も運用することで、県内、また中国地方の自治体へのアピールも目指します。

当初は山沿い、海沿い、都市部など、異なる条件の複数市町で開設する予定でした。
5~6市町とお話しましたが、すぐに運用することが難しい自治体がほとんど。
短期間で結果を出したい、広く知ってもらいたいという焦りもあったところ、自治体の傾向をよくご存じの松永さんが現実的な意見をくれて、いい意味でストッパーになってくれました。(中鶴)

「ニホン継業バンク」は、すでに確立されて実績のある事業モデル。ココホレジャパンそして中鶴さんも、これまでの実績の中で自治体の特性をつかんでいて、スピード感もすごい。
自治体数は全国で1,724市町村ありますので、まだまだ高いポテンシャルがある事業です。(松永)

「継ぐ」だけじゃない、継業の可能性

事業を継ぎたいと応募してくる人の声を聞いていると、自己実現を求める人が増えているような気がします。企業に勤めることで安定した収入を得ることより、“おもしろい人生”や“人生の豊かさ”を目指して、自分にしかできないことがしたい、自分の特技を活かしたいという人が多い。
仕事だけでなく技術や文化も継ぐことで、自分らしさを見つけられる人が潜在的にたくさんいるはずです。
一方で、継業直後は利益がでない事業もあることが課題ですが、これまでインターネットを使っていなかった事業者が多いので、継いだ人がSNSやECを取り入れるだけで変わることもあると思います。
お金よりやりがいに生きる人が増えたら、もっとおもしろい日本になるかも。(中鶴)

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最近は「起業・創業」や「スタートアップ」の話題をよく見かけますが、ココホレジャパンの「ニホン継業バンク」は、これまで人がつないできたもの、地域のスモールビジネスを伝承してくれる存在です。
そうは言っても世の中は変わっていくもの。受け継ぐ人が時代に応じた変化を取り入れ、付加価値をつけてさらに発展していくということもあるかもしれません。(松永)

技術だけでなく、地域性をもつなぎ、拡大させる「ニホン継業バンク」。
技術を守り、雇用を守り、地域の魅力が増して移住者も増えたら、三方よしどころか四方も五方もよしです。
移住希望者のみなさん、仕事の選択肢として、就職、起業に加えて「継業」はいかがでしょうか。

(Text by 小林祐衣)

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