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【30EGGS】主治医と専門医のマッチングサービス(Medii)

現在日本の医療において都市部と地方の専門医の偏在が大きな問題になっている。
ますます専門家・高度化が進む医療において、特定の知識・技能を持った専門医の数は限られており、どうしても都市部に偏りがちだ。
こうした状況において、どうしたら過疎地域に住む住民が満足いく医療サービスを受けられるのか?
安心して地元に住み続けられる社会が保てるのか?……テクノロジーを使ってそれを解決しようとしているのが、株式会社Medii代表取締役医師の山田裕揮さん(32)である。

「私たちは限られた専門医リソースを最大化するために、“Eコンサル”というシステムを開発しました。
これはいわば相談事のある主治医と専門医のマッチングサービス
Eコンサルにはそれぞれの分野で活躍している認定専門医が登録されていて、『これについてどう考えたらいいんだろう?』と疑問を抱えた主治医が質問を投げかけると、その内容を自動判断して適正な専門医が紹介されます。
その専門医の中で解答可能な人が手を挙げると、そこでマッチングされて相談に答えてもらえるというシステムです。
現在は450名の専門医に登録いただいてます」

図2

昨年4月から稼働をはじめたEコンサルにはすでに多くの意見が届いている。
過疎地域で働く医師からは「こうした専門医のサポート体制があることで安心して地域医療に取り組める」「地方にいても学びの機会が得られるのはありがたい」といった声が寄せられる一方、大病院の勤務医からも歓迎の声があがるなど確実に手応えを感じているという。
そんな中で行われる広島での実証実験にはどのような意味があるのだろう?

「私たちがやろうとしているのはライフラインのインフラ作りのようなもので、本来は国や県がやるべき事業だと考えています。
ただ、公を動かすにはその有用性を証明しなければならないので、今回は自治体と組んで実績を作り、今後の説得につなげたいという想いがあります。
あと広島県も県西部と県東部、都市部と山間部で医療格差があり、そこにニーズがあることも重要でした」

現在は県内にある診療所、中核病院、大病院……という各規模の病院20院強にEコンサルを導入してもらい、各種データを採集しているところ。
その中で、これまで専門医に意見を聞くために患者が大病院に足を運ばなければならなかったケースが43%減少という結果が出たという。
これまで専門医の意見を聞くためだけに、介護タクシーを使うなど時間・お金・労力をかけてきた工程が、大きくカットされたのだ。
これを使えば保険料として使われる公費の大幅な削減も可能であると山田さんは力説する。

「この仕組は自治体や国の制度に関わるところまで行かなければ、持続可能なものにならないと思うんです。
今は『車はあるけど道路がない』という状態。たとえば『人の心臓が止まったときにはAEDが必要』となったとき、それをインフラとして整備したのは自治体でしたよね?
専門医の問題も『田舎だから専門医がいない』で終わらせるのではなく、国や自治体が率先して仕組みづくりを行っていくべきだと思います」

理知的ながらも鋭い言葉で迫る山田さんは、医学生時代に難病の診断を受け、地方在住ゆえ専門医に診てもらう機会を得られず苦しんだ経験がある。
「自分と同じ難病患者さんに寄り添いたい」――その想いから膠原病内科という専門医の道を歩み、さらに問題の構造的な解決のため株式会社Mediiを設立した。
デジタルの力で医療の世界を変えていこうとする山田さんにとって、ひろしまサンドボックスの動きは共感できるものだという。

『よくわからないからやらない』ではなく『わからないものをわかるようにするために検証しよう』と挑戦されている姿は素晴らしいと思います。
変化を嫌いがちな自治体が多い中、イノベーティブな良いものを県民サービスに活かそうとすることは、住民の方々にとっても喜ばしいことではないでしょうか?」

 「どこにいてもより良い医療を全ての人に」――Mediiのホームページにはそんな言葉が躍る。
救える患者を一人でも多く救うため、社会システムの面でも山田さんは戦い続ける。

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