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【30EGGS】さまざまな農業の形が、地域の豊かさになる(やさいバス)

今回は30の卵のうち、「やさいバス」をご紹介します。

やさいバスは、生産者と購買者がECで直接つながり、バス停に見立てた集出荷場を地域の共同物流網が巡る「やさいバス」を運営しています。

そんなやさいバスが、D-EGGSの最終30案に採択され、広島県を舞台に実証実験を行います。

起案内容

Interview

代表取締役の加藤百合子さんにお話を伺いました。

以前から農業への関心が高かったのでしょうか。
中学生のときに環境問題に関心を持ちました。高校生で大学進学を意識したときに、ここまで関心を持っているなら自分で解決策を見いだせるところに進みたいと思い、農学部に入りました。
専攻は食糧難。植物工場やロボットなど、効率的な生産について学びました。
やさいバスの前は、農業ロボットの開発も行っていました。

農業で利用されるロボットとは、どんな働きのものですか。
古くから開発されているのは、自動走行トラクターです。現在は安全上、人が乗っていないと走行できませんが、ゆくゆくは寝ている間に畑が耕されているということが実現すると思います。
他にも、収穫用ロボットの開発も進んでいて、AIが画像で判断して成熟具合を見分けるんです。アスパラガスを自動で収穫して袋詰めするロボットなんて、ものすごく処理が早いんですよ。
でも農家さんにヒアリングを進めると、「ロボットを買えるほど利益がない」という実態がありました。農業用ロボットは、産業用ロボットと比べて価格が2桁ほども違います。そもそも農家さんの利益が上がらなければロボットを買うという選択肢もない。
だからまずはIT化で構造改革しようということです。流通を効率化して、農家さんが自ら営業力もつけられることが理想だと思います。

D-EGGSに応募したきっかけを教えてください。
「やさいバス」は青果流通の分野で、半分はIT、半分はコミュニティで課題解決を目指しています。しかしDXが遅れている農業や飲食業界。職人さんや生産者さんはただでさえ忙しくて、さらに今までの方法の方が慣れていて使いやすいようで、アプリやIT化などは「そんなのやってられないよ」と言われてしまうんです。

そのような皆さんの機運を盛り上げるためにも、何か大きなムーブメントが必要だと考えていたときに、D-EGGSを知りました。広島県は知事もIT分野に詳しい方です。そのような場所での実証実験は、大きなチャンスだと思いました。

D-EGGSを通してどのような実証実験を行いますか。
実証実験の軸は、実際に野菜の販売をすることです。スーパーやJRの駅などに参画いただくことが決まっていて、すでに参加いただいているそごう広島店では、さらに売り場を拡大する予定です。

また無人販売にも挑戦します。無人販売の大きなポイントは、販売所の売行きが、農家さんからリアルタイムで見えるようにすること。例えば県北から広島市に出荷していると、何がどのくらい売れているのか農家さんが把握できないので、ウェブカメラを設置してその時点の状況をお知らせします。
さらに天気や周辺のイベントなどから売行きを予測する、アドバイス機能も試します。

さらに、野菜を産地から売り場に運ぶ際、路線バスを使ったコースをいくつか作ろうと思っています。お客さんを乗せながら野菜を一緒に運ぶ「貨客混載」を実証します。

貨客混載2

プロジェクトを進める中で、苦戦していることはありますか。
まずは、物流事業者を見つけることから苦労しました。特にスタート当初は出荷数も少ないので、人材不足の物流業界で請け負ってくれる運送会社がなかなか見つかりません。
そんなときには、やはり地域の細かい情報に助けられました。やさいバスにも広島チームはありますが、「隣のまちから豆腐屋さんが来ているから、その豆腐屋さんが戻るときに乗せてもらったらどうか」など、地元の人しか知らない情報はまだまだたくさんありそうです。

未来の農業はどうなっていくのでしょう。
多様な農業の形を残すことが、地域の豊かさにつながると考えています。ロボットが活躍する大規模農場も、人の手でひとつひとつ作り上げる農業も、無農薬や自然農法も、珍しい作物も、いろいろな形態の農業が、地域の特色になると思っています。

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