「BBQ型官民共創」で人口流出STOP!【RING HIROSHIMA】
年末のささやかな楽しみ&節税としてすっかり定着した「ふるさと納税」。しかしそれに企業版があることをご存じだろうか。ある企業が地方自治体に寄附した場合、法人税等が税額控除されるのだ。今回のチャレンジャーはその「企業版ふるさと納税」を使って地方創生を目論むという。そのカギとなる「BBQ型官民共創」とは一体?
CHALLENGER「株式会社E.S CONSULTING GROUP」佐藤祐太朗さん
今回の挑戦者・佐藤祐太朗(さとう・ゆうたろう)さんは広島在住。新卒で広島銀行に入行し、その後会計事務所に転職。10年近く自治体の会計コンサルティングを行ってきた。そして2019年「E.S CONSULTING GROUP」を設立。引き続き自治体のDX、業務量調査など地域の課題解決に取り組んでいる。
そんな佐藤さんが今回提唱するのが「BBQ型官民共創による地方創生」。これは企業版ふるさと納税を活用した施策だという。
佐藤さん曰く、現状は自治体が自らの課題を一方的に提示する「レストラン型(=決まったメニュー)」の計画提案が多く、企業のニーズとマッチしてないものが多いという。であれば自治体と企業、地域のキーパーソンなど関わる人が一堂に会して、みんながWin-Winになる計画自体を作成しよう、つまりワイワイとバーベキューを楽しむ感覚で官民共創プログラムを制作していこうというのがその主旨である。
すでに進行中の具体例については後ほど述べるが、興味深いのは佐藤さん、これまで2回、RING HIROSHIMAにセコンドとして参加していることだ。
セコンドから挑戦者への転身はRINGとして初。後方支援のアドバイザーからファイターへ。3度目のRINGで佐藤さんはこれまでと違うゴングを聞いたのだった。
SECOND「株式会社ローンディール」後藤幸起さん
そんな元セコンド・佐藤さんに付くのはこちらも初回からフル参加、セコンド歴3年目となる後藤幸起(ごとう・こうき)さんだ。
後藤さんが所属する「株式会社ローンディール」は大企業人材のベンチャー企業への「レンタル移籍」を手助けする会社。そういう意味で、今回官民共創を進めるにあたって大企業のニーズをヒアリングしたい佐藤さんのサポートにはうってつけだ。また、同じセコンド経験を持つ佐藤さんの気持ちもよくわかるという。
これまで見たことのないタッグの形ができあがった。
すでに進行中のプロジェクト
「海ッションインポッシブル」
さて、そのBBQ型官民共創のカタチとして実は1つのプロジェクトがすでに動き出している。それは「広島に魅力的な海を作り出す」ことを目的にした「海ッションインポッシブル」。広島県が主催して地域の課題解決を行おうと多くの地元企業が集まった「SCRUM HIROSHIMA(スクラムひろしま)」に参加した広島テレビが中心になって立ち上げたプロジェクトだ。
ただし「海ッションインポッシブル」は実証期間中に寄附を集めることが不可能なため、あくまで今回のRINGのゴールは「企業としてどんな施策だったら参加しやすいか?」について大企業にヒアリングを行うこと。あとベンチャー経営者が議論する「アウトサイト」という研修プログラムにも参加して、大企業からフィードバックをもらう。これはどちらも後藤さんのネットワークが活かされた実証実験である。
官民共創をBBQにたとえるなら、今は食材の調達も、参加者への声掛けも、火起こしも、当日の進行も、場所のセッティングもすべて佐藤さんの肩にかかってる状態。それを分担できるBBQファシリテーターの育成も必要だろう。
なんだか楽しげなBBQ型官民共創のイメージ、だいぶ湧いてきたんじゃないだろうか。
阻止したい地元広島の危機
2年連続転出超過ワースト1
着々と形ができつつある佐藤さんのプロジェクトだが、実はその裏には広島ならではの深い問題が横たわっている。
佐藤さんがRINGに上った理由は、故郷に対する強い危機感だったのだ。
セコンドとチャレンジャーが微妙に重なり合いながら、それぞれのキャリアで学びと気付きを深めていく。もしかして今後、タッグマッチのように2人揃ってRINGに上がる日が来ても、もう誰も驚かないだろう。
●EDITOR’S VOICE 取材を終えて
最初「BBQ型官民共創」と聞いて「BBQ? また何か最新型のビジネス用語か?」と思ったのですが、そのまんまバーベキューの略だったとは。しかしそのプロジェクトが個人的に広島の最深刻案件と感じている「転出超過ワースト1」を改善するための策と聞いて、取材にもチカラが入りました。せめて自分の子供たちが夢を持って働ける街であってほしい。故郷に失望し、地元を見捨てる姿だけは見たくない――同じ子を持つ親として、切実に感じた瞬間でした。
(Text by 清水浩司)