自然が織りなす多島美によって世界的な観光名所として脚光を浴びる瀬戸内海。
しかし多くの島を抱えるがゆえの問題というのも存在する。
それを独自の自律航行技術によって解決しようとしているのが株式会社エイトノット。
代表取締役の木村裕人さん(38)は言う。
瀬戸内海には多くの定期船が走っているが、今回のコロナ禍により減収・減便を余儀なくされた航路が多数ある。
たとえばエイトノットが実証実験を行っている生野島は人口14人(2021年8月現在)で近くの大崎上島との町営フェリーは1日7便。
自由な生活をするには厳しいが、これ以上増やすにも限界がある。
エイトノットはそこに無人で走る自律航行船を投入することで、低コストで、人の手もかからず、かつ必要なときにいつでも使える“海の足”を提供したいと考えている。
将来的には人の運行を想定しながら、今回は荷物の運搬に絞って実験を行うという。
実はこの実証実験、エイトノットに関しては“地の利”も作用している。
会社の共同創業者であり取締役CTOの横山智彰さんは実験の舞台である大崎上島にある広島商船高等専門学校の出身。
卒業生自らがふるさとの課題解決に当たっているという状況なのだ。
もともと木村さんはダイビングやSUPなどプライベートで海に親しんできた人物。
その中で「こんなに海は広いのに、どうして一部の地域や人しか利用してないのだろう?」という疑問から現在の世界に飛び込んだという。
「将来的には船舶免許を持ってない人でも手軽に海を楽しめる社会を実現したい。そうすれば新しい海の経済圏が立ち上がり、離島への移住者も増えるはず」。
海の男である木村さんは大海原の向こうまで見つめている。