“相乗り”が移動を変える【RING HIROSHIMA】
クルマじゃなくてモビリティ――なんて言葉も聞かれるようになって久しいが、まさしく今は移動手段の変革期。
電気自動車はどうなる? 自動運転は普及する? 高齢化によって進む免許の返納、その後の移動手段は? 過疎地域の交通は誰が担う?……
今回RING HIROSHIMAで採択されたチャレンジ「空港‐福山AIオンデマンド相乗り」もまた、私たちの“足”を変えるひとつのきっかけになりそうだ。
CHALLENGER「株式会社NearMe」髙原幸一郎さん
タクシー相乗りでもっと移動を快適に
まずは空港と市内のドアtoドアから
株式会社NearMe(ニアミー)代表取締役社長・髙原幸一郎さんが語るのは、相乗りによる移動の効率化だ。ニアミーはAIによって相乗り時の最適なルートを計算し、目的地までスムーズに送迎するサービス、スマートシャトル™を開発。
個々の移動を相乗りという形で束ねることで、タクシーより安価で、指定の時間にオーダーできる&ドアtoドアで移動できるという点で公共交通(バスや鉄道)より便利なシステムを実現した。
そんなスマートシャトル™サービスの中でも彼らが注力しているのが空港との送迎だ。現在まで成田空港、羽田空港、関西空港……など11か所の空港に進出。その次なる候補地に選ばれたのが広島空港というわけだ。ただ、対象地域が広島市ではなく福山市になったのは事情があって――。
ということでマッチングされたのが、こちらのセコンド。
SECOND「福山サービスセンターイトウ」伊藤 匡さん
純粋な好奇心でのエントリーが…
これ、今の仕事にも役立つかも!?
伊藤 匡さんは福山に拠点を置く「福山サービスセンターイトウ」の代表。同社は30年以上、旅行サービス手配業を行っており、まさに備後地方の観光のプロ。近隣のホテルや観光施設に強いコネクションを持ち、「瀬戸内SamPo」(https://setouchi-sampo.com/)「郷彩(さといろ)」(http://100ryokan.com/plan/)といったオリジナル商品の開発も進めている。
2人の組み合わせはこれ以上ないマッチングのように見えるが、伊藤さん、最初はビジネス目的ではなく応募したところが面白い。
「この2人、合うんじゃない?」とお見合いのような展開からパートナーシップを結ぶことになった両者。そこから東京にいるチャレンジャーと福山にいるセコンドというリモートタッグの戦いがはじまった。
空港との送迎を発端に、
福山の周遊観光まで視野に入れる
そしてスタートした共同作業。ただ、チャレンジャー側はこれまで同サービスを全国11空港で導入済。最初からある程度のノウハウは持っている状態だった。
実際の実証実験は2月にスタート(取材は1月下旬)。ここでは広島空港~福山の相乗り送迎に加えて、鞆の浦や「しおまち海道(JR福山駅から尾道市戸崎港まで続く海岸沿いのサイクリングロード)」を楽しむことのできる「福山市周遊キャンペーン」も展開する。特に福山の場合、こうした観光資源が遠方にあることが多く、スマートシャトル™が機能すれば観光の幅が広がることは間違いない。
挑戦者もセコンドも、それぞれ未来へ期待感を持ちながら実証実験に臨むことになりそうだ。
本当に移動に困ってる人の
役に立つ存在として定着したい
今回の案件、空港と街中の送迎に焦点が当たっているが、ニアミーとしては「その先」に向けての一里塚だと考えているという。
一方のセコンドサイドとしても、これは「プラスしかない」体験だと伊藤さんは笑う。
実は髙原さんと伊藤さんは、まだ一度もリアルでの対面がなく、2月の実証実験で初めて顔を合わせる予定。
別々の場所でつながりながら、それぞれの人生に波紋を描き合う――これもまたRING HIROSHIMAの、ひとつのファイトスタイルなのだろう。
(Text by 清水浩司)