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【30EGGS】リモートで3Dモデルを作成(サイトセンシング)

株式会社サイトセンシングが誇る基幹技術の1つは「3Dモデル作成サービス」。
市販のデジカメを使って現場で撮影し、画像を同社URLにアップロードするだけで3Dデジタルデータが作成されるというオドロキのシステムが構築されている。
今回彼らがD-EGGSプロジェクトにエントリーしたのも、この技術を活用した案件である。

「いま日本を含めて先進国では社会インフラのメンテナンスが大きな問題となっています。
メンテナンスで重要なのはまず現状を知ること。
どこが錆びてどこにヒビ割れがあるか、これまでは現地に出向いて確認するしかありませんでした。
しかしコロナ時代になって人の行き来が難しくなり、さらに国際的な展開をしている会社はプラントの確認にサウジアラビアまで行かなければならなかったり、ホテルの現状チェックに北海道まで行かなければならなかったりと大変な手間がかかります。
私たちのサービスを活用すれば、現地出張なしで対象物の現状把握が可能になり、既存住宅・設備の管理業務を劇的に効率化できるでしょう」

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代表取締役・平林 隆さん(62)の言葉通り、当初実証実験はリモートでの3Dモデル作成を中心に行われるはずだった。
しかし実験は予想外の展開を見せる。
アドバイザーとして参加するサムライインキュベート社との話し合いの中で、サイトセンシングとしてはオプション案件と考えていた「非GPS空間のドローン飛行と同時に撮影を実現して、その撮影画像を使って3Dモデルを作成する」というプロジェクトの方をメインで追求することにしたのだ。

「意外と知られてないのですがドローンの飛行はGPSに頼っていて、地下室や屋内、橋脚の下やトンネル内など人工衛星の電波が届かないところでは操作できないんです。
でも天井裏やマンホールの中など“暗い・狭い・危ない”場所にこそニーズがあるのではないかという話になって。
今は3Dモデル作成というアウトプットは同じでも、いかに非GPS空間でドローンを飛ばして、周辺の撮影を可能にするか、その実現に焦点が移っています」


実証実験の途中で研究内容が変化したというのは驚きだが、サイトセンシングにとってこれは嬉しい変更であると平林さんは言う。

「もともと私たちは国立の研究所である産業技術総合研究所(産総研)のスピンオフベンチャーとしてはじまった会社なんです。
国立研究所発の技術でこれまで実用化されたものは少なくて。それは研究が実験室内だけで完結しがちで、一般の使用を意識してなかったり、多様な意見にさらされてなかったりという弱点があったからなんです。
だから今回ひろしまサンドボックスやサムライインキュベートさんから多くの意見をいただけたことは大歓迎で、おかげで弊社の技術をより実用化に向けて磨くことができました」

平林さんも以前は経営コンサルタントをしており、産総研で現在の技術と出会ったことで会社の創業に至った経歴を持つ。
目下取り組んでいる非GPS空間のドローン飛行に適用しているのは、3Dモデル作成と双璧をなすサイトセンシングの基幹技術である「自律航法測位システム」だ。

「これはGPSやWi-Fiといった外部からの情報なしに、自分の位置を自動計測できる仕組み
これまで人や車両の自己位置検知・追跡のために開発してきた技術をドローンに応用したんです。
本来なら特許の数や技術の深さ、社会への影響力を考えても、この自律航法測位システムの方が重要だったのですが、見た目が派手なので先に3Dモデル技術の方が脚光を浴びてしまって。
今回のドローン開発で両方の技術が合わさり、ようやく実用化の段階に達した感じです」

この秋にはいよいよトンネル内でドローンを飛ばして、トンネル内部の3Dモデルの作成に挑む。

「今回実証実験を広島県内でやるというのが条件で。
ただ、広島には実験に適した広い非GPS空間がなくて探すのに苦労しました。
これは広島特有の問題ではないので、実験場所に縛りはなくていいのではないでしょうか」

平林さんからはそんな意見も寄せられたが、もし非GPS空間での3Dモデル作成が成功すれば日本初の事例となる。
それが広島で実現したとなれば誇らしく思うのも、やっぱり人情なのである。

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