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【し】素人と玄人との間にあるもの

僕はいまマレーシアのイポーというところに住んでいて、滞在歴はもうすぐ5年になる。

特に日本の新聞を購読してもいないし、テレビも「NHK WORLD」というチャンネルしかないので、日本のニュースを見るのは、ほとんどの場合ネットニュースということになるのだけれど、ここのところニュースの見出しのほとんどが「闇営業」と「韓国」ばっかりという状態が続いている。

僕はもっと「ゴマフアザラシの赤ちゃんが生まれました」とか「難病に効果的なワクチンが発見されました」とか「木星に生物がいる可能性が出てきました」とかそういうニュースが見たいんだけど、この手のニュースは恐らく自分で探しに行かないと見つからないような感じだ。

会社に行く前に、ワンタン麺やカレー麺、ロティチャナイなどの朝ごはんを食べながらスマホでざっとニュースを流し読みするのが日課になっているので、「闇営業」のニュースもなんとなく理解している。

この話題に関して特に興味があるわけでもないし、これについてなんか書こうと思ってるわけではないのだけれど、少し前に芸人ふたりの記者会見を見たときに、なんかすごい違和感を感じた。これはベッキーの不倫事件あたりから抱いている感覚で、なんだか自分でも気持ち悪い感じもするので、ここで言葉にしておこうと思う。

なんで彼らはこんなに謝っているのだろう。
これが大きな違和感の始まりだった。

彼らは、私たち素人に笑いを届けることを生業にしている芸人だろう。

ミュージシャンだって、音楽という芸を通して私たちに感動や幸福感や興奮を与えてくれる。

役者だって、演技という芸を通して私たちの心を揺さぶってくれる人たちだ。

彼らは一芸に秀でた玄人で、我々のような素人との間には大きな隔たりがあって然るべきである。

しかしここのところ、なんとなくこの「隔たり」が、時代とともに消え失せてしまったような気がしてならない。

この「隔たり」を壊してきたのは、決して我々素人ではなく、玄人が素人に歩み寄ってきたのだと思う。

素人から玄人になるのはとても難しいのと同じで、才能に溢れた玄人は、簡単に素人にはなれない。
簡単にサラリーマンに転職できる玄人なんて、ホンモノではない。

恐らくいまは才能にも恵まれていなくて努力もあんまりしていないような玄人くずれが数多く存在していて、その人たちがこの素人と玄人との差を曖昧にしているということにもなるのだろう。

ずいぶん前の話だが、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーがセックス中毒になってしまって入院したときに、病院の看護婦を片っぱしから口説いてしまって、結局治療にならなかったそうである。

同じくストーンズのギタリストであるロン・ウッドも、付き合っていた彼女が病気で入院したときに「これ、元気が出るから」と言ってコカインをたっぷり届けたという話もある。

4,000人以上の女性と関係を持って、その女性全てのポラロイド写真を保持していると公言しているキッスのベーシスト、ジーン・シモンズは、ステージ上で火を吐きながら「このコンサートに女を連れてきた男たちに告ぐ。帰りはお前ひとりだ!」と叫んだりしていた。

この手の話が本当かどうかは定かではないが、60年代から80年代ぐらいのロックスターたちには、こういうエピソードはいくらでもある。

やっぱり玄人はこうでなければいけない。

我々素人は、玄人のこういう日常離れした才能や行動に憧れ、夢を見るのであって、見たこともない素人のSNS上のコメントや、批判が仕事のうんこみたいなコメンテーターなどが言ったことなどに対して、謝っている姿など見たくもない。

だから、玄人のみなさんにはもっとしっかりして欲しい。

玄人は、実体のない世間という偶像と、それを作り上げるマスコミなどを相手にする必要など全くないのだ。

人を笑わせ、驚かし、泣かせ、感動を与える才能と膨大な努力の結果を、我々素人に向けて発揮して欲しいのである。
手の届かない存在として君臨し、「素人は黙ってろ!」という態度を貫いていて欲しいものである。

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