これからの組織と雇用

大学生の読者の皆さんにとって40歳になるいうのはどういう感覚だろうか。わたしが大学生の頃、つまり20歳になった時40歳というのはかなり先のように思えた。20年かけて成長し大学生として大学に通っている。これからさらに20年先にどうなっているか。それは途方もなく先のように思えた。しかし20年というのはあっという間に来る。

40歳になるまでに結婚をし子供ができた。名古屋から東京に引っ越しをして家を構えた。それから名古屋に帰ることはほとんどなかった。仕事ばかりで明け暮れた。外資系投資銀行から外資系飲料メーカー、そして外資系コンサルティング・ファームへと転々として20年が過ぎた。心身は疲れて新しいサプライチェーン・ソフトウェアを提供する会社で働き始めた。2年働いてリストラ。そのとき42歳だった。これがわたしの20歳から40歳までの出来事だった。

さてクリスマスの日に講演会があった。その様子は少しここで触れた。一日経過してメモを読み直しもう少し詳しく紹介したくなった。この文章では主に講演会の内容をできるだけ忠実にまとめることにした。そして組織と雇用がどうなっていくのか。私なりの意見と大学生に読者のひとに向けて少しだけどうしたらいいかを書いてみます。

講演会は2部構成だった。前半はイノベーションをいかに起こすか。後半は労働市場の活性化。これがこれからの日本の経済成長のキーになるとのことだった。

まず前半では3つの視点が提供された。マインドセット、人事評価、そして出口戦略だった。マインドセットというのは心構えのこと。これまで日本企業はリスク回避型だった。まずやってみようができない。そこでトップが意識を変える。失敗を許容するようにすべきという提言があった。

次に人事評価。企業は守りをしてきた。雇用を守りすぎた。これからはチャレンジを応援すること。何をチャレンジしたのかを明確にする。新規事業企画書をつくり、投資家向けのプレゼンテーションをする。そこでよい失敗とわるい失敗を区別して評価すべしとのことだった。

それからスタートアップの出口戦略。これまではグロースに上場することが目標だった。そこで成長がとまる。IPOが出口であった。そうではなくM&Aを出口にすること。アメリカの出口は8割がM&Aであるそうだ。

2013年フェイスブックがインスタグラムを買った。その時の買収額は1000億円。インスタグラムには社員数はたったの12人。売り上げもマイナスだった。

後半は労働市場の活性化。視点は雇用形態と働き方、リスキリングとその資金、労働移動だった。まず状況としてはこういうことだ。労働の質が低下しており、企業は人件費を抑えはじめた。給料はあがらない。非正規雇用が増えて女性の過半が非正規雇用だという。ではどうしたらいいか。雇用形態をメンバーシップ型からジョブ型に変える。それにより年収を高くするという。しかしリスクは高まる。解雇もありうる。

働き方を変える。たとえば40歳で定年とする。そこで一度会社をやめてスキルを磨きなおす。ただし多くの40歳は転職をしない。新しい職場の文化に慣れることができないためだ。そういったひとたちにお試し転職、兼業・副業を勧める。それまでは学びなおしをするというものだ。

リスキリング。新しい仕事につくためにスキルを学びなおす。ただ何を学んでいいかわからないという。企業で新しいポストが用意されている。そんなときにどんなスキルを身につけたらいいか。言語化されており形式教育で習得できるものかどうか。

その解決策は人事システムそのものを変えることだという。ここはややあやふやな言い方だった。

リスキリングのための資金はどうするのか。個人には教育資金はほとんど回ってこないという。すべて割り当てられた、あるいは資金調達でまかなわれた資金は企業内に滞留してしまうという。個人には向かわない。それを個人へ投資すべきだという。

最後に労働移動。雇用そのものが変わっていないという。職業訓練といっても気軽な英会話のようにはいかない。ただ若い人が転職に抵抗を示さなくなっているため労働移動は起こるという。企業は硬直的なビジネスモデル(お金を稼ぐ仕組み)を変えていく。

こんなところだった。

わたしがこの講演会を聞いて理解したのはこういうことだった。そこでこれをもとに大学生の読者の皆さんにどう解釈したらいいか書きます。どんなことがあってもこれからの日本経済という国を軸にした考えには注意をしたほうがいいこと。まず自分のこと。自分の家族をつくることです。そして家族といっしょにいること。国がどうなるかどうかというのはその次です。

そして40歳まで一生懸命働く。年収にこだわってほしい。少々無理をしてもそんな大きな病気にはならない。しかし何度か転職をして年収アップがあったとしても40歳を過ぎたら無理をして働かない。病気にならない働き方をすること。病気になってはいけない。それが2点目です。

家族と健康の次は日々暮らしていけるだけのお金稼ぎです。やりがいとか使命とかをあまり考えない方がいい。それほど簡単にリスキリングはできないですし、それが仕事で役に立つかわかりません。でもお金稼ぎだけは続ける。しがみついてでもよい。どんな仕事だっていいじゃないですか。それでお金がもらえるのならばいい。日本経済が良いの悪いのといっている場合ではないです。

家族、健康、お金。これがベースです。

これだけでも難しい。どうしてかというとパートナーを見つけなきゃいけない。そしてじっくり子供をどうするかをふたりで話さなきゃいけない。これだけでも大変です。次に健康づくり。運動、食事、睡眠を正しくとる。これは独身ではできない。そこまでできてやっと40歳。そこから75歳までの35年間暮らしていけるだけの稼ぎをする。

次に余裕があったら国がどうなる。どうするというのを気にすればいいのです。これは主役は政治家、官僚、学者にまかせておいて普段から理解するだけでよい。

最後にずっと優先順位を下げて会社組織とか雇用、スキルとかを考える。それほど気にしなくてよい。リスキリングは簡単ではなくどんなに仕事で評価されてもうまくいくとはかぎりません。会社組織はどれがいいのかというのは答えがありません。また複雑怪奇な行動をする人を相手にした仕事では不確定要素が大きすぎます。

大学生の読者の皆さんにとってどうでしょうか。

参考になりますように。