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経営における後継の難しさ

企業の後継者という悩ましい問題に取り組むとき、ときどき青ざめてしまう人がいるであろう。特に成功をしてきた大企業において後継問題が切実感を増す。社長以外の役員がリスクをとるような意思決定を長い間避けて来た。そんな場合後継者は育たず、ただ単にサラリーマン役員として会社を離れていく。勤続年数が長いというだけでは目の前にどのような機会と挑戦があるのかはよくわからない。

そういった長く問われている下でこれからの企業はどう株主の期待に応えていくのだろうか。

去る9月10日、英紙エコノミストにひとつのストーリーが掲載された。その記事はスターバックスについて。スターバックスといえば、長年のCEOであったニューヨーク生まれのハワード・シュルツ氏を思い出す。彼の手腕によりグローバル企業として成長し、実に1971年の出店以来、成長を遂げてきた。

シュルツ氏はアメリカンドリームの体現者として知られており、大統領への出馬すら考えた人。わたしは彼が大統領になるなんてなんと素敵なことだろうと考えたものだ。政治家になる夢はあきらめただろうがあの巨大企業スターバックスに3度社長として君臨した。銀座に第一号店を出店した1990年代以来、関東圏で急拡大していまや日本全国にスターバックスはある。とても有名で人気のあるコーヒーショップといえよう。

最近になってあのシュルツ氏が社長の座をインド系アメリカ人のMr. Laxman Narasimhanに譲ることになった。彼はイギリスの消費財企業であるReckittの社長をやっていた。その会社は規模でいえばスターバックスの半分であった。売上と時価総額においてスターバックスには劣った。ただ、彼はマッキンゼー・アンド・カンパニーで20年のコンサルティング経験を持ち、その新しい戦略として「ひとりひとりに一杯のコーヒーを、そして隣人とともに」という社是を掲げた。

英紙エコノミストでは、新たな社長には3つの挑戦が待っていると説明している。ひとつは中国を含めた海外出店。次にオペレーション・コストが限界に来ている点。そして労働組合・賃金問題が待ち受けているという。ただし、どうなるかはだれもわからない。わかっているのは後継者というのはとても苦労をする場合があることだ。

日本でも後継者選びで苦労をしている会社がある。ユニクロ、日本電産、そして日産自動車といったグローバル企業だ。ユニクロの社長柳井氏は73歳。18年間、第一期を務めた後、社長の座を一旦、玉塚氏に譲った。ところが3年も経たずに柳井社長は2005年に復帰した。3年というのは短すぎるのではないか。アメリカの社長の平均在任期間は7年という。

電子部品の日本電産も後継者選びに苦労をしている。名社長として有名な永守氏(78)はM&Aで急成長を果たした。この技が周りに伝承されていないのではないか。78歳はかなりの高齢といえる。ただ、永森はハーバード・ビジネス・レビュー氏でのトップランキング100に上がっている人。日本人では3名のみで、永守氏以外には資生堂の魚谷社長、そしてソフトバンクの孫氏のみである。

その永守氏でさえ後継者選びを2年で断念したようにも見える。なぜ後継者が育たないのだろうか。

日産自動車はよく知られている通り15代の社長としてあのカルロス・ゴーン氏を任命した。ところが17年間務めた終わりごろ、年収の額を適正に申告しておらず、会社の資産を悪用したとして逮捕状が出された。日本から脱出しレバノンに逃亡した。ユーロ11mを持ち去ったともいわれる。

社長の任期中にクローンを作り出すことは不可能だ。現職のうちに苦渋の決断をしなければならない。お金やスキル、そして個人のネットワーク以上のものが求められるのだろうか。側近の中で社長として相応しい人がいるのであれば、その人に社長をしてもらうのがいいのではないか。東京の企業ではそういえよう。ただ、後継者選びは難しく、後継後の舵取りも難しい。