見出し画像

スティグラー「自由主義経済学者の回想」1988

George J. Stigler, Memories of an Unregulated Economist , Basic Books, 1988 翻訳は上原一男訳「現代経済学の回想」日本経済新聞社1990。回想にはシカゴ大学の著名な経済学者たちが続々と登場し、それらの人々についてのジョージ・J・スティグラー(1911-1991)のコメントは興味深い。経済学という個別の学問の議論を超えて、大学における研究者の在り方や学問への姿勢を語っている部分もおもしろい。

フランク・ナイトについて世俗的な活動をせず、大学で一途に研究していることを「彼の振る舞いは第一級の頭脳には専門知識の追求こそが全生涯をかけるに値するものであることを示しているかのようだ」上原訳p.23

大学における利点について「有能な研究集団と交流を持てるということは、大学教授が大学外の経済専門家に対して持っている強力な利点である。」強力な知性の持主との・・・頻繁な交流は、研究の中に忍び込んでくる誤りを発見し、おかしな考え方を排除するのに欠くことのできないことである。  」上原訳p.44

ある友人は、自分は研究意欲を失ったので大学を辞めたいと思っているといった。…深く考えてみると彼はただしかったのである。研究活動をしなくなった学者も、人から好かれ有益で十分認められる仕事をすることができるかもしれないが、戦士の一人とはみなされないだろう。」上原訳pp.55-56         

優秀な大学院生が集まる優秀な大学院について「私は...大学で学んだことの半分は仲間の学生からのものと信じている。彼らは生活を共にし、教員たちと...不穏当と思われるほどの活発さと率直さをもって互いに議論しあっているのである。・・・私が学びすぎるほど学んだ・・・教訓は、既成の信念、権威的名声には疑いをいだけということである。」上原訳pp.32-33
また「優れた大学院では学生たちがまず第一に相互に学びあっているということである。彼らは研究すべき問題の選択と、そうした問題に対して提示すべき解の最低基準について、自分たち自身に高い要求を設けることを学ぶのである。小グループの自由な討論は教室での講義や議論よりも効率的な教育・学習方法である。ある同僚は私に、彼が教場で果たしている役割はそうした討論に話題を提供することだと思うと語った。」上原pp.43-44

#シカゴ学派 #経済学 #大学院 #大学 #シカゴ大学

main page: https://note.mu/hiroshifukumitsu  マガジン数は20。「マガジン」に入り「もっと見る」をクリック。mail : fukumitu アットマークseijo.ac.jp