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善養寺の影向(ようごう)の松

 善養寺は、江戸川区東小岩にある真言宗豊山派の寺院。そこに「影向の松」と呼ばれる天然記念物がある。これは幹回り4.85m、高さ7m、樹齢600年以上とされる松だが、枝が四方に広がって繁茂する面積が、日本で最大だとして有名である。東西28M、南北31M、繁茂面積800㎡となるのは日本一だということで平成23年2011年に国の天然記念物に指定された。新日本名木百選にも選ばれている。
 寺伝によれば善養寺は大永7年1527年に始まる。しかし永正六年1509年に書かれた書物の中に名前があるところから、寺の草創は寺伝より古いとされている。この松の樹齢からすれば、この松がこの寺を草創の時から見守ってきたことになる。寺の別名は小岩不動尊。不動尊を祀ってきたことでも知られている。その不動堂の前に松の枝は広がっている。
 影向の松は、大変綺麗に整備されているが、期待して参観した印象としては、最初は強烈なものは感ぜず少しがっかりした。恐らく、もっと松が青々と茂っていると、受け取る印象は異なるだろう。しかしこの松は一度、樹勢の衰えがはっきりして松の葉が赤茶になってしまった。そこで2001年から2011年にかけて、つまり長期の時間と労力をかけて調査と回復工事が施されて現状があるとのこと。
 ただ、根本の部分を見た時に、圧倒的な印象を受けた。そしてやはりこれは銘木にふさわしいと考え直した。根本から四方に伸びた太い枝に強烈な命を感じたからである。
 影向の松とは、神様が松の形で現れたという意味で全国各地に同じ呼称のものがある。しかし枯れてしまったものや、初代は枯れて今は二代目三代目になるものが多い。それを考えれば、善養寺の初代の影向の松が、関係者の努力によりともあれ健在であることを素直に喜ぶべきだと反省した。
    なお舟形墓石を積み上げた一角があったが、その年号をみると、元禄(1688-1704)や享保(1716-1736)のものなどであった。これは江戸期に当寺院が当地に根付いていたことを示すものだろう。
 アクセスは、JR小岩南口から「小72系」バスで「江戸川病院」まで10分。下車後、道路沿いに2分で入口に到着する。バスは10分間隔にあるので、アクセスはわるくはない。現在は、訪れる人は限られているようだが、広い駐車場と境内があるので、菊花展など植物に関するイベントにここは適切かもしれない。またイベントがないときは、江戸川グラウンドを望む土手に上がることを勧めたい。広々とした風景は一見の価値がある。
  実際、善養寺では毎年秋に「影向(ようごう)菊花大会」が開かれている。令和4年2023年の場合は10月18日から11月23日の間開催予定。
 善養寺の影向のマツ 2010/07撮影 「巨樹と花のページ」より 
 関東の巨木リスト   「巨樹と花のページ」より

石仏群(舟形墓石)
石仏群(舟形墓石)


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