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蓮(はちす)の露

 昔、幼い子供の時、舗装されたばかりの道路がキラキラ光ることに気が付いた。そのことを楽しんだことを覚えている。もう一度そういうことがあればと最近思うのだが、大人になって、そんなことはなかなか起こらない。ただ今日は不忍池で、蓮を見ていて、露が輝いていることに気が付いた。そして一瞬だけど、その時の子供の感情に戻った。ちょっと興奮したが、多分、その場で興奮していたのは私だけだろう。
 帰宅してから「蓮の露」という言葉を検索し、極楽浄土を願う特別な意味があることを覚えた。私が極楽浄土に行くのは少し早いかなと思ったけれど、蓮に露が光る姿に、昔の人は極楽浄土の美しさを見たのかもしれない。
 万葉集の蓮の歌 より
 ひさかたの雨も降らぬか蓮葉(はちすば)に 溜まれる水の玉に似たるを見む 右兵衛 万葉集16巻3837
    蓮葉(はちすば)の濁りに染まぬ心もて なにかは露を玉とあざむく
   遍昭 古今和歌集
 花を題材にした短歌22選 より
    小夜ふけて 蓮の浮き葉の 露のうへに 玉とみるまで やどる月影
                       源実朝
    樋口一葉 蓮の歌 より
    はちす葉の うへ安からぬ 世なりけり 露の白玉 かつくだけつつ
 折々の 風のたえ間をいのちにて はかなくとまる 蓮葉の露
 


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