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劉少奇「民族区域自治問題」(憲法草案報告)1954年9月15日

憲法草案報告について(關於中華人民共和國憲法草案的報告)(1954年9月15日)《劉少奇選集下卷》人民出版社1985年pp.132-173,esp.162-167

p.162  憲法草案の序言と多くの条文は国内各民族間の平等友愛互助の関係を規定し、各少数民族の自治権利を保障した。
 中華人民共和国成立以来、すでに民族圧迫制度は廃除され、国内各民族平等友愛互助の新関係が建設され、各少数民族地区の政治、経済と文化の事業は次第に発展を始めており、人民生活も次第に改善し始めている。我が国はすでに自由平等の民族大家庭であり、憲法草案はこの方面の経験を総括して、民族区域自治について、各少数民族の政治、経済、文化建設について、共同綱領に比して更に一歩踏み込んだ規定を行った。
   我々の国家は労働者階級が指導する人民民主国家である。それゆえ我々の国家は、徹底的な民主主義と民族平等の精神を用いて民族問題を解決でき、国内各民族の間の真正な協力を打ち建てることができる。我々は固く承認している、国内各民族をして積極的にすべての国家の政治生活に参加(參與)させねばならず、同時に各民族を民族区域の自治の原則に照らし自ら家の主人とせねばならず、自己内部事務を管理する権利を有すものとせねばならない。このようにして、歴史上残留してきた民族間の障害(隔閡)と差別(歧視)を消滅できるし、各民族間の相互信任と団結を不断に増進できる。
 憲法草案は明確に規定している。我が国の公民は、民族、種族の区別なく、一律に
p.164  みな平等の権利を享有すると、併せて以下のように宣布している、いずれの民族に対するものであれ、差別と圧迫は、わが国において皆不合法である。憲法草案はさらに規定している。各民族はみな自身の言語文字を使用し発展させる自由を有している。みな自身の風俗習慣を保持しあるいは改革する自由を有している。憲法草案は、我々の国家が民族問題において順守する人民民主主義と社会主義の原則、さらにこれらの原則に基づきとられるべき具体措置について、法律の形式で承認している。
 憲法草案はわが国各民族利益が一つであること(一致性)を反映している。100年余りの間、わが国各民族は、漢族とその兄弟民族を内に含めて、外国帝国主義の圧迫を、共同して受けた。帝国主義者はかつて各種の陰謀を進め、わが国民族間で悠久の歴史が作り上げた関係を破壊し、かれらの分割統治(分而治之)の侵略政策の実現を企図した。中華人民共和国が成立し、中国各民族はすべて帝国主義の圧迫下から解放された、しかし帝国主義者はなおあらゆる手を使って(處心積慮)、わが国各民族の分離を妄想し、それにより我が国民族を今一度奴隷化する目的を達しようとしている。帝国主義者のこのような陰謀に対して、わが国の各民族は警戒を高めるべきであり、帝国主義者が進めるこの種の陰謀にいかなる機会も与える必要はない。わが国各民族はみな我が国祖国の統一をさらに強め強固にすべきであり、固く一緒に団結せねばならず、偉大な祖国建設のためともに努力せねばならない。憲法草案は中華人民共和国は統一された多民族国家であると宣布し、また各民族自治地方はすべて中華人民共和国の分離できない部分であると宣布している。明らかにこのような規定は完全に必要であり、わが国各民族の共同利益に完全に符合している。
 憲法草案は各種の規定を通じて、各少数民族に集住している地方で、すべて自治権を真正行使できることを保証している。民族自治地方の自治機関は、一般の地方国家機関の職権を行使するだけでなく、憲法と法律が規定する権限に基づきその地方の財政を管理でき、国家の軍事制度によりその地方の
p.165  公安部隊を組織でき、当地の民族の政治、経済、文化の特徴に適応した自治条例と地方(単行)条例を制定できる。民族自治地方の自治機関の形式は、自治実行区域の民族大多数人民の意思(意願)が定めたものでよい。自治機関が職務を執行するときには当地の民族で通用する言語文字を使用しなければならない。ただ一つの郷だけの民族集住地区内あっては、上述の各種自治権を行使したり自治機関を建設することは不可能あるいは不必要であるが、民族郷を設立すべきであり、設立により集住する民族成分の特殊情況に適応するべきである。
 大民族主義と地方民族主義派ともに誤りであることは、必ず指摘されねばならない。この種の思想は、わが国の各民族の団結と民族区域自治の実行にとって、いずれも有害である。我々は憲法草案の序言のなかに見ることができる、民族の団結を継続して強化するためには、帝国主義と各民族内部の人民共通の敵(公敵)に反対せねばならないというだけでは不十分で、大民族主義と地方民族主義にも反対せねばならない。
 漢族はわが国の人口中極端に大きい多数を占めており、歴史条件の関係から、漢族の政治、経済そして文化は国内各民族の中でまた比較的に高く発展している。しかしだからといって直ちに漢族は何か特権を享受していいということはできず、その他兄弟民族の前で何か威張っていいということはできない。それどころか漢族は反対に各民族の発展を助けに出向く特別な義務を有している。各少数民族は民族平等の権利をすでに獲得しているが、もしも自身の条件と力量に頼るだけであれば、もともとの経済上文化上の遅れた状況を迅速に克服することはできない。それ故に漢族の援助は彼らにとりとても重要である。漢族人民は経済上文化上各兄弟民族に真心をもって誠意の援助を与えねばならず、特に各少数民族地区工作に派遣された漢族幹部は、さらに時々刻々少数民族の経済文化の発展と生活水準を高めることを構想しなければならず、全身全霊(全心全意)少数民族のために服務し、各少数民族内部の団結を助け、かつ忍耐強く現地の民族幹部が成長するのを助け、かれらが自ら地区の
p.166   各種の指導工作を負担できるようにしなければならない。過去の反動統治階級の影響で、漢族人民の中に、漢族幹部の中においてさえ、未だ一種の大漢族主義思想が存在する。たとえば、少数民族の風俗習慣を尊重しない、少数民族の言語文字を尊重しない、少数民族が宗教信仰の自由があることを認めない、少数民族が自己内部事務を管理する権利を有することを認めない、少数民族地区の工作で少数民族幹部を尊重しない、事をなすにあたり彼らとは相談しない、彼らが実際工作において自身の各種の事務能力を高められることを信じない等々。まったく疑いなく、この種の大漢族主義の思想と行為は、必然的に民族団結を破壊する作用を起こし、また完全に我々の国家制度が許さないところである。漢族人民と漢族工作幹部は必ず常に大漢族主義思想の克服に注意すべきである。別の一面では、各少数民族の中には一種の地方民族思想が存在している。この種の地方民族主義は大漢族主義と同じく長期歴史の遺物である。指摘されるべきは、この種の地方民族主義の思想と行為は、同じように各民族間の団結を妨げ、自己の民族の利益に完全に有害である、それ故にこれは克服されるべきものである。
 社会主義社会の建設は,これはわが国国内各民族の共同目標である。社会主義があってこそ、それぞれの民族はすべて経済文化上高度の発展が可能である。我々の国家は国内のそれぞれの民族が次第にこの幸福の大道を次第に歩むことを助ける責任がある。
 しかし各民族は異なる歴史条件があり、決して国内各民族がすべて同一時間に同じような方式で社会主義入りすると考えることはできない。憲法草案序言は述べている、「国家は経済建設と文化建設の過程において、各民族の必要を特別に注意し、社会主義改造の問題上、各民族発展の特徴に十分注意する。」つぎにようにいえる。いつ社会主義改造をするか、どのように社会主義改造を実行するかなどの問題において、すべてまた各民族の発展状況が異なる。このすべての問題において、各民族人民群衆と同様に(以及)各民族中の人民群衆と関係のある公衆の指導者たちが冷静に考察決定すること(從容考慮)が許されるべきであり(應當容許),
p.167   彼らの意思により決定はなされるべきである。

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