認知症基本法について


本日は認知症基本法について、記事に残しておきたいと思います。
私が注目したところを抜粋していきます。衆院で提出されたものが微修正されたのか、参院で通ったものは少し違いありました。
以下の2つの資料を中心に考えてみました。

共生社会の実現を推進するための認知症基本法について (厚労省資料リンクあり)
共生社会の実現を推進するための認知症基本法 (参議院資料リンクあり)


共生社会の実現を推進する認知症基本法案

共生社会の実現を推進する認知症基本法案の構成は
第1章 総則(第1条~第10条)
第2章 認知症施策推進基本計画等(第11条~第13条)
第3章 基本的施策(第14条~第25条)
第4章 認知症施策推進本部(第26条~第37条)
となっております。

第1章 総則(第1条~第10条)

 第1条の目的には法律の目的が記載されています。国・地方ともに責任所在を明確にし、認知症施策の推進することを定めています。
 第2条に「認知症」の定義が記載され、アルツハイマー型認知症だけでなく、脳血管疾患その他の疾患ということで、レビー小体型認知症や脳血管性認知症などによって『日常生活る支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態』と定められました。
 第3条は、本人・ご家族への意向尊重と配慮、尊厳の保持と共生、切れ目のないサービスや支援、認知症の予防・診断・治療・リハビリ―テーション・介護の研究、教育や保健・医療・雇用など総合的な取り組みとなっています。
 国民の責務として、第8条に①認知症の正しい知識を持つこと、②認知症の予防に必要な注意を払う、③認知症の人の自立および社会参加に協力すると3つが努力義務です。
 ここは認知症と診断された人も社会参加をしてもらうための項目になっていると考えます。「認知症=何もできない」のではありません。役割を持って意欲的な生活をすることが重要と言えるのでないでしょうか。
 第9条により9月21日が認知症の日、9月1日~9月30日までは認知症月間として定められました。
 今まではADIとWHOが9月21日を「世界アルツハイマーデー」と定めているから事業を行うという理由で、取り組んでいる自治体や事業所が多かったと思います。日本でも9月21日を認知症の日と定めることで事業予算の増加や啓発活動などの普及が期待されます。

1994年「国際アルツハイマー病協会」(ADI)は、世界保健機関(WHO)と共同で毎年9月21日を「世界アルツハイマーデー」と制定し、この日を中心に認知症の啓蒙を実施しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/alzheimerday2022.html

世界アルツハイマーデー及び月間 (令和4(2022)年度)

第2章 認知症施策推進基本計画等(第11条~第13条)

 第11条は政府が作成する『認知症施策推進基本計画』です。これを元にして、以降、都道府県は『都道府県認知症施策推進計画』(第12条)。市町村は『市町村認知症施策推進計画』の策定(第13条)について、努めなければならないと努力義務になっています。
 第12条3項で都道府県は、計画作成時に認知症の人および家族等の意見を聴く様に努力しなければならないとあります。市町村は基本計画を基本とするために同様に本人およびご家族等の意見を聴く様に努力する必要があります。

第3章 基本的施策 (第14条~第25条)

 第15条にある認知症バリアフリーは認知症の人が安心して暮らすことのできる地域づくりについての記載ですが、添付させていただいた福岡市が作成した認知症の人にもやさしいデザインの手引き(リンクあります)の第4章デザインの導入実践例にわかりやすく書かれています。無駄なものがなくシンプル、明暗がはっきりしている、ピクトグラムで図示されているためわかりやすい。
 認知症の人にやさしいデザインは、新しいことを身につけづらい高齢者や多様な経験の少ない子どもにもやさしいものになります。

 さらに第16条の認知症の人の社会参加の機会の確保です。「認知症の人の生きがいを持って生活を営むことができるよう」と入っています。内閣府が発表している高齢社会白書の令和4年度版も" 生きがいを感じる程度について "と第3節に出てきますが、高齢者保健に関して「生きがい」というキーワードに重点が置かれ、良く出てくるようになりました。

生きがい(喜びや楽しみ)を感じる程度について見ると、生きがいを「十分感じている」が22.9%、「多少感じている」が49.4%となっており、合計すると72.3%となっている。
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/zenbun/pdf/1s3s_01.pdf

令和4年版高齢社会白書(全体版)第3節
 〈特集〉高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査
1 生きがいを感じる程度について

 第17条について、認知症の人の権利擁護について記載があります。認知症であるのに、認知症等高齢者の消費者トラブルが過去最高に!!-(リンクあります)という消費者庁の報告書には、1万件を超える消費者トラブルが報告されています。誤解を招いているケースもあるでしょうが、まだまだ怪しい業者も多いのでないでしょうか。 
 第21条は認知症の予防です。私たち保健師に限らず、地域で予防活動は取り組んでいる職種は多いです。この予防に力を入れる点は令和元年6月に取りまとめられた認知症施策推進大綱(リンクあります)で力を入れている通り変わりません。共生と予防を2つの両輪とし、認知症になるのを1歳でも遅らせることが重要です。
 私の中で、第3章の基本的施策は強制的に浸透するのでなく、自然に導入されていく事で認知症の人の理解も進みやすく、今後に非常に重要な項目に思います。

第4章 認知症施策推進本部 (第26条~第37条)

 ここで大切なのは、付則の施行期日でしょうか。公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。2024年の6月までに施行される法律となっています。
 その他は、内閣総理大臣を本部長とする認知症施策推進本部の設置(第26条)、その認知症施策推進本部は基本計画の作成に際し、認知症施策推進関係者の意見を聴かなければならない(第27条)。
 第27条の推進関係者に関して、第34条に認知症の人および家族等の記載があるので、当事者とご家族が含まれると思われます。どこまで活かされるかわかりませんが、当事者の声が活かされる様な計画にしようということになります。

 私は主に健康づくりや社会参加の項目を中心に注目し抜粋しました。他の専門職の方は違った視点で重要と思う箇所があると思います。また何故、法律はそうなった?という箇所も会うと思います。皆で考えていくことが出来ればと思います。

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