見出し画像

ルーチェのお散歩日記 朝は爽やか

 どうもルーチェです。犬やらせてもらって7年です。朝、夕方、夜の3回毎日散歩してます。散歩での出来事を書いたりしてます。朝の散歩はだいたい5時から6時。日の出とともに目覚めるタイプです。いつもはご主人のたまきちゃんと散歩してます。たまに同居人の男もついてきます。超稀にですが、同居男と2人の時があって…なんと言うか気が進まないんですよね。たまきちゃん来てないなって気づくと、どうしても呼びに帰りたくなるんです。というか帰ります。まあ同居人が嫌いなわけではないんですけど、いろいろとね問題があってね。まず、とにかく頼りないんです。なんだか不安感が、彼の握った手からリードを伝って、私のからだに流れこんできます。そのせいで集中できないんですよ。それからコミュ力が異常に低いんです。街人との会話が弾まない弾まない。私も仲良しのマダムやイカしたおじ様と、お話ししたいのに、ゆっくりできないんです。それから、レストタイムのとき、うんちの時ね。なんかせかせかするんです。私のうんちをすかさずキャッチしたいみたいで。変なこだわりがあって、別にいいけど、なんかイラつきます。それから抱っこの仕方も、なんかバランス悪っていうか、しっくりこないんですよ。それから、蜂さんを見つけると異常に反応します。うわぁ!!って。恥ずかしいんですよ。あと、こっちのほうがビックリするし。蜂さんもビックリしてますよ。この前も蜂さん見つけた瞬間に吹っ飛んで、水路の柵に激突してましたよ。恐ろしい。とにかくそんな感じで問題山積みなわけです。だから私は歩かないのです。というか帰ります。たまきちゃんを呼びに帰ります。それが嫌なら、マーキングポイントまで、抱っこして行きなさいって感じで、散歩の半分は抱っこされてる状態です。まあコミュ力が無いのが一番の問題ですね。鳥さんたちを見習ってほしいですよ。朝からみんなお話ししてますよ。
 そう、人間のいない朝は鳥たちの世界です。鳥たちの世界にお邪魔させてもらってます。騒がず、そっと聞き耳をたてるのです。ものすごく新鮮な気持ちになるのです。朝が爽やかだと感じるのはそういうことですね。人間が見ていない、活動していないところには、別の世界があるんですね。例えば、小さすぎて人の目では見えない世界。物と物の隙間とか。床下とか配管の中とか。
 鳥たちの世界は僕らの世界より、ちょっと高い位置です。すっごく会話してます。海外に来たような感覚ですね。違う言語を話してるんで。でも同じ地球なんですね。不思議ですね。鳥たちはみんなサーカス団のように、電線の上に平然と並んで座ります。鳥たちにとってはナイスな空間です。開放的なコミュニティの場。気まずくなったら、飛んですぐどこかに行ける。天井も壁もない。床すら無いに等しい。

 チュンチュン。人間たちの家の屋根の上も僕らの居場所。人間はなかなか上がってこないから安全だよ。水飲み場もあるしね。ひさし先の軒樋には枯れ葉やらが積もって雨が降ると、ある程度の水溜まりができるから。実に快適。ルーチェちゃんも飛んで上がってこればいいのに。快適よ。それから電線ね。電線は、しなるし、クッション性があって、座り心地がいいんだよね。世の中、固いものが多いからね。全てもものがクッション性あればいいのにって思うもん。頭ぶつけても痛くないしね。そうだね殺人も減るかもね。銃弾もふわっふわで、包丁もグネングネンだからね。パトリックの出番がなくなっちゃうよ。商売あがったりだ。
 「そんなことよりさ、小鳥さんたちの鳴き声って爽やかだよね。歌うたってるみたいだよね。」「歌うたってるのよ。本当に。」「あ、そうなの。本当に歌ってたんだ。」「私たちは、物心つく頃からみんな合唱団に入るのよ。朝はいろんなところで合唱祭が開かれているのよ。よければご一緒にどうぞ。」「どおりで爽やかなわけだね。なんだか朝は空気も澄んでるしね」「そらそうよ。朝、私たちが、歌う事によって、空気を製造してるんだから。今日一日分の空気をね。」「そうなんですね。ありがとうございます。」「そうよ。空気は鮮度が命だからね。朝は爽やかで当然なのよ。あなたたち一日でけっこう空気汚しちゃうから、大忙しよ。」「ご苦労様です。」「人間たちが、僕たちの電線をせっせと作ってくれてるからそのお礼だよ。」

 線がいいのかもね。横に並べるし、飛び立ちやすい。駅のホームみたいな感じかな。ソーシャルディスタンスだし、今のご時世にもいいでしょ。人間が作った線だらけの世界だね。僕らの居場所として設計したわけじゃないと思うけど、けっこう快適よ。意図せず作られたもののほうが、いい時もあるよね。フェンスの上とかさ、なんか座りたくなるよね。線だし。そんでちょっとしなる。

 ルーちゃんそろそろ地上に戻ってきてください。
けっこう時間たっちゃってます。帰りましょう。そうかそうかやっぱり時間感覚狂うね。帰りましょう。私は帰ったら寝ます。そして夕方散歩に備えます。同居人男は、せっせと仕事しなさいね。私のジャーキー代をしっかりと稼ぐのですよ。了解。

 地上に目線を戻す。いつもの用水路。水の流れはふだん通りに穏やかだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?