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#8 人はどこで、ブランドにビビッと来るのか?

人はどんな場面でブランドを判定しているのか、と考えると、それはブランドとのいろんな接点ということで、じゃあその接点の全体像はどうなっててそれぞれどんな特徴があるのかをハッキリさせなきゃいけなくなります。で、ここではブランドとお客様の接点についてのいろいろを説明していきます。

数あるマーケティング戦略の中で、実行段階に位置づけられている、マーケティングミックスという手法があります。実行の場を4P、4C、7Pなどに分けて考えようというものですが、これらに挙げられている4とか7の要素が、とりもなおさずブランドとお客様との接点となります。そこで数の多い7Pの概要を、ブランディング的にちょっとだけアレンジして(マーケティング施策としてじゃなくブランド訴求の場と考えて少しだけ意訳するという意味です)書くと、

■ 「ものやサービスそのもの」 =Product
■ 「価格(セールやダイナミックプライシングを含む)」 =Price
■ 「実店舗/通販/EC」 =Place
■ 「広告、販促、PRなどのプロモーション」 =Promotion
■ 「スタッフ」 =People
■ 「購入やアフターサビスのプロセス」 =Process
■ 「保証制度」 =Physical evidence

となります。この中で事業として欠かせないのは「ものやサービス」「価格」「店舗」「プロセス」の4つで、あとの「プロモーション」「スタッフ」「保証制度」は、ビジネスモデルやそのジャンルの特性、さらには予算次第となり、不要だったり手を付けない場合もあります。また、すべての予算配分を決めるのも、ブランドとしての考え方次第になります。

もう少し具体的に説明すると、例えば商品が作品的なら見ただけで良さが感じられる魅力が備わっているでしょうが、それでも「価格」「店舗」「プロセス」は決める必要があります。でも「プロモーション」「スタッフ」「保証制度」は、作品性が優れているほど要らなくなるでしょう。一方で日用品的であればライバルとの競争が多くなり、「価格」の安さでも「店舗」の多さや近さでも「プロセス」のスムーズさでも、さらに残りの3つについても、お客様に好意を持ってもらうように頑張らないといけません。というわけでジャンルなどによって7接点すべてで施策が必要とは限らないのですが、説明にあたってはすべてやることにして書いていきます。

さて、それでお客様に自分たちのことを「知ってもらい、ファンになってもらい、広げてもらう」ブランディングのために、この7つそれぞれの特性を、あの手この手が使えるかという「手法や内容の自由度が高いか?」軸と、ファンになってもらうのに必要な「思いを訴求しやすいか?」軸で考えてみると、以下のようになるでしょう。

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「訴求手法の自由度」で見ると、「もの/サービス」と「価格」ではブランド側はただ提示するだけになりますし、「店舗」「プロセス」「保証等」では少し幅は広くなりますが、それでも用意したものからお客様に感じ取ってもらうことになります。それに比べて「プロモーション」と「スタッフ」の2つは、もっと臨機応変にいろんな手が使え、積極的に自分たちのことを伝えやすくなります(本当に伝わるかはウデ次第ですけどね)。

「思い訴求のしやすさ」で見ると、例えば「もの/サービス」では、お客様はまず機能を重視するので「もの訴求」が中心となり、「思い訴求」がしやすいとは言えない、といった具合で考えていくと、しやすいのはやはり「プロモーション」と「スタッフ」になります。もちろん、ほかのところにもブランドの「思い」はしっかり注がれているはずですが、この2つでは特に伝えるチャンスが大きくなります。

なぜ「思い訴求」を重視するのかというと、人々がブランドのファンになるには、「もの」の奥にある「思い」に共感してもらうことが大事だからです。さらに「もの」でライバルとの差をつけ続けるのが難しい場合にも、「思い」では差がつけられるからです。現在の日本では、みなさん相変わらず「もの訴求」に熱心なことが多いようですが、これからを考えるとそろそろ変えた方が良いと思いますし、その場合に特に重要になるのが「プロモーション」と「スタッフ」になるわけですね。もちろん場によっては「もの訴求」が求められるのも確かなので、そこはバランスで、「思い訴求」をどう注ぐのか考えていくことが大事になるでしょう。

まあ、そんなこんなはありますが、ともかく人は、これらの接点のどこかでブランドを感じます。良いものを出し続けてくれるとか、店の佇まいが好みとか、店員さんが感じ良いとか、ブランドの思想が素晴らしいとか、どこでビビッと来るかは人によるので、ブランド側は自分たちが用意した接点については抜かり無く準備しておくべき、ということですかね。


ブランディングについて、インナーからアウターまでの流れを説明する本を出しました。
ぜひお読みください。

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