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もし人生が2周目で、19歳の文学部の学生に戻ったら

佐藤ひろおです。会社を休んで三国志の研究をしています。

大学院に関係する発信をしているためか、大学院進学に悩む学生の投稿を見ることが増えてきました。
文系の大学院に進学するか問題です。

ぼくは、文学部卒で就職→28歳で論文初投稿→30代前半で『全譯三國志』に参加→38歳で休職し科目等履修生→39歳から修士入学(希望)と、こじらせました。
もし人生に2周目があり19歳に戻ったならば、より若いうちに研究成果を最大化するために、そして、金銭やメンタルをリスクヘッジするために、以下の選択をします。人生1周目の方の参考になれば幸いです。

結論は、「学部生のうちに論文を2~3本書き終える」です。

4年次の卒論を1本目にするから、研究の適性を見極められぬまま、就職or進学の準備および選択に突入する。それは地獄です。2年生で1本、遅くとも3年生で1本書き終えたら、イヤでも適性の有無(問題感心の所在が学問向きか、能力の伸びる余地があるか、学問に不可避の知的な苦しみへの耐久力があるか)が分かります。

大学院生(博士課程)の知人は、着手さえすれば、論文1本書き上げるのは1ヵ月だと言っていました。作業量じたいは、「1ヵ月」仕事なんです。目安になりますよね。当然、慣れるまでは、もっとかかりますが。

4年次に1本目の論文(卒論)を書き終えなさいね、というのは、大学側の都合です。入学以降、3年半かけて指導しますよ、というのは、カリキュラムの設計です。大学側が(悪い言い方をすれば)指導のタイミングを焦らして、あわよくば多くの学生を大学院に呼びたいというのは、経営的には適正です。しかし、こと1年の価値が高い20代前半の学生に、そんな悠長な時間の使い方をさせるのは苛酷です。

研究者として大成する人は、おそらく年齢に関係なく、論文が書けます。幼児段階の発達とは違います。5歳児の体力を3歳児に求めるのは、物理的にムリでしょう。しかし、研究に要する力は、「19歳ではムリだが25歳になればできる」というものではない。
教授に頼み(ときには食らいつき)学部生のうちに複数の論文を書き上げる。成功するか、成功しないにせよ悪戦苦闘が楽しければ、進学に希望が持てる。イヤになれば就職をする。そのようにやってみてください。

「学部生で2本~3本の論文を書き上げるなんてムリ。どこも査読し掲載してくれないよ」と思うでしょう。実際、難しいと思います。
でも、規定の文字数を書き上げるだけなら1人でできます。パソコンがあれば、だれでも出来ますよね。言い逃れはできません。どのような駄文でも、完成させ、教授から一言でも二言でもフィードバックをもらうことに意味があります(進路選択を占う上で)。
「教授のコメントがちっとも納得できない、自分がやりたいのは、そういうことじゃないんだ…」と思うならば、就職しましょう。

大学=レジャーランド説は、さすがに消えたでしょうが、就活や4年次の卒論で初めて「人生の本番」に叩き込まれて狼狽えるのは、学部の時間の使い方を間違っています(ぼくは間違えた)。
2年生、3年生のころから、論文らしきものを独力で次々と書き上げ、教授のコメントをもらう。それを短期間にくり返す。教授からは、形式・内容の全般にわたり、いろいろな叱咤を受けるでしょうが、それでいいのです。

ぼくが人生2周目ならそうします。

論文は約束ごとが多い文書です。習わなければ分からないことは多い。しかし4年次の授業を待たずとも、「お作法」については、図書館で関連書籍は読めます。
駄文にせよ規定枚数を書き上げて教授のところに持っていけば、しぶしぶにせよ、ルールを教えてくれます。その試行錯誤を2年生から始めるのが、よい進路選択のための努力だと思います。

ここに書いたことを本当に実行すると教授に負担をかけますが、「本学の学生なので…」という開き直りをして下さい。それほどに、文系の大学院進学は「取り返しの付かない選択」になりやすい。
文系の進学希望の学生は、(お察しのとおり)危機的です。社会的に、経済的に、迷子になりやすい。学問への情熱があればこそ、カリキュラムの定めるペースより速く動くことが大事だと思います。自分のためにです。

回顧すると、ぼくは20歳の誕生日がくるとき(2回生の9月)に、専攻したい学問に関する所感を、原稿用紙1000枚ぐらい書いたんです。「成人」する前に書き終えるぞと気合いを入れて。まちがいなく駄文でした。駄文であることは、全然問題ないです。19歳ですぐれた文が書けるほうが異常。しかし、先生に見せなかったのが良くなかったです。そこは後悔。その駄文を見ていただいて、フィードバックをもらうところから、何かが生まれたはずです。早々に遠ざかったのか、どっぷり浸かったのかは分かりませんが。

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