院生の「大学教員に就職できないと、研究では食えない」を疑う

佐藤です。ひとつ前の記事で、
・まず、やりたいことを見つける
・つぎに、仕事にする(お金を得る)方法を見つける
という順序で考えるのがよい。という助言を紹介しました。

やりたいことを見つける。それを通じてお金を得る。
この順序は、一方通行。同時ではいけない。戻ってもいけない。

お金になるから、やりたくないことをやる。これは不幸。
やりたいけれど、お金にならないから辞めてしまう。これも不幸。

ぼくのお金の話

いまぼくは、会社員として作った貯金と、その貯金を投資で運用した利益で、大学院に通っています。
1年半ほど学費・生活費・研究費(おもに書籍代)を払っても、総資産は減ってない。労働をやめたときより、金融資産が増えている。「連結決算」としては結果オーライなのですが、不健全だと思ってます(笑)

企業の決算書が「セグメント」で分かれているように。
「会社員」事業で黒字を出す。投入した時間、精神的ストレスに対し、満足のいく給与を得る。これだいじ。
「投資」事業で黒字を出す。金融資産をリスクにさらした(不確実性に耐えた)ぶんだけ、運用益を得る。これもだいじ。
「三国志」事業でも黒字を出したい。出すべきだ。

大学院生のお金の話

大学院生と話すと、「お金がない」「将来がない」という話にしかなりません。それを因数分解すると(因数分解するまでもなく)、どこかに大学に研究者として就職する=准教授・教授として迎えられる確率が、絶望的に低い、ということとイコールです。
40歳までアルバイトして、世間や親戚の目にさらされ、一方的な出費に耐え続けても、2割ぐらいじゃないですかね。大学に就職できる確率は。※聞きかじり・体感値による
「40歳」以前にフェードアウトする人が多いし、「40歳」までねばっても2割ならば、残り8割はどこにいくのか。

研究者として独り立ちするには、大学院に通うことが必須。これは揺らいでいないと思います。しかし、大学院を卒業しても(博士号を取得しても)食っていけない。
日本は18歳人口が減ることが100%確定している(少なくとも、今後の18年間は)。海外での就職も、競争が激しくなる一方。「日本で就職できないなら、海外に行けばいいじゃない」は現実的でない。

だったらどうするか

ぼくの場合は、決算書の「いびつさ」を是正するために、三国志で黒字を出す方法を考えるべきだ。
大学院生は、研究者として就職する以外の方法で、学んできたことをお金に変える方法を考えてもよいのではないか。

いずれの場合も、「やりたいこと」が明確になっている。これが見つからないひとも多いという。まずは「やりたいこと」があるのを喜べばいいのでしょう。第一段階はクリアです。

文系学問をやりたいのは、子供のときからの「当たり前」であり、今さら嬉しくも何ともない。目先はお金がなくて、悲壮感しかない。だとしても、「やりたいこと」があるのは幸運には違いない。

そして、2つめの段階に進む。
学んだことを、何らかのかたちで届け、ひとさまに喜んでもらって、お金をいただく方法を考えてもよいのではないか。

お金に変換する方法は、社会のルールや流行によって決まります。他人から習うことができる。マネても全然問題がない。むしろ、マネることによってしか成功しない。
外部に規定される点で、第一段階の「やりたいこと」探しとは違う。
第二段階「仕事にする」において、オリジナリティは要らない。深刻な内省、身を切られるような自己分析も要らないんです。

第二段階を真剣に考えず、ぼくの場合、三国志が赤字を垂れ流し、会社員・投資家としての自分に寄生するのは、怠慢でしかない。株式会社ぼくの「三国志・担当役員」はシッカリしろよ。サボるなふざけるな。

大学院生も、大学教員になる道を模索しつつ。研究を「仕事にする」、別の方法をヘッジする努力を、もう少ししてもよいのではないか。確率の低いこと(正規職員としての就職)に願望をかけて、損失を繰り越し続けるのは、「経営努力」が足りないのではないか。

大学に10年以上も通っていれば、「大学教員」はもっとも身近で、イメージのしやすい職業でしょう。しかし、親しみがあるからといって、低い確率に賭けて執着するのは、経営上の「誤り」です。調査不足。

一発逆転のヒット商品を開発するため、10年以上も「借入金」を投入して「設備投資」「研究開発」を行う企業なんてないんです。

すごく平凡なことしか書いてませんよね。当たり前の「経営会議」をしているだけなのに、ものすごく刺激的・革新的、背徳的・退廃的、非常識・反体制なことを言っている気がするのは、なんなんでしょうね。

世間で可視化される(本を出したり、ネットニュースやテレビに出ていたりする)文系学者は、准教授・教授になれたひとが大半です。あんまり参考にならない。それとは別の、もっと一般的なお話でした。

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