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名取市の奥にある天然ダムを衛星データで観測してみた(その3・光学画像で観察編)、の巻。

 これからは実際に観察になります。
 非専門家なので、データの見方は厳密ではないところもあるかと思います。参考程度としていただきたいです。(逆に専門家の方に色々ご意見をいただければとありがたいです)

◇目視で見てみよう。

 今回の天然ダムですが、Googleマップ(衛星画像)で見たところ、周りの茂みが深いのと、水がよどんでいるためか、くっきりしたカタチが見えませんでした。となると光学画像(目に見える画像)は、ほぼ使えないかも?というのがあります。
 Sentinel-2の光学画像は、Googleマップの衛星画像よりも解像度が落ちます。Sentinel-2の解像度は約10mです。

https://www.sed.co.jp/sug/contents/satellite/satellite_sentinel2.html

 見づらいかも知れませんが、オリジナルはRGBのBandに分かれています。なので、加工しやすいです。下記の方法で合成して、普通に見られる画像にしてみます。

https://qiita.com/nigo1973/items/d61ef7e0862a6932bbdd

 できあがった画像は、こんな感じです。Googleマップの衛星画像とほぼ同じような画像になります。

ラスタ合成直後_b

 赤丸の所が、左が天然ダム、右が砂防ダムになります。写っている場所によって暗いところがあるので、ちょっと見づらい感じもします。
 この画像のヒストグラムをRGB個別に極端に調整して、なにか見えるかどうかをやってみました。この辺は、デジカメの知識があるとわかりやすいかもです。

ラスタ合成直後色編集後_b

 これで何となくのカタチは見えてきました。
 やはり周辺の樹木の影響(=陰ができている)が大きいようです。ただ、水は入っているようです。はっきり・くっきりとは認識しづらいです。

 認識できるようにするためにどうしたら良いのか。
 そこで考えたのが、NDWI(正規化水指標)です。
 NDWIは地表面の水を観測できるとあるので、これを使うことにしました。
 参考にしたのは、宙畑のこちらの記事です。

 今回使ったSentinel-2の光学画像は、個別のBand画像があります。
 最初の合成画像はB2,3,4を使いましたが、そこにB8を入れて画像から計算をしてみます。
 計算式は下記の通りで、QGISのラスタ計算機を使って求めます。(Sentinel-2、NDWIでググって出てきたのを参考にしています)

NDWIの求め方

 この計算式の値が大きい=滞水している=白く見えるはずです。
 貯水量が多いと思われる10月15日の画像で計算すると、天然ダムがうっすらとですが白く見えてきました。

NDWIの出力_b

 右下にある樽水ダムは、水がたっぷりなので、なおさら白くなっています。このため、水(や水分)があると、白く見えるのは間違いないようです。

 見やすいように色などを調整します。水があるところは青色、無いところは白色で、10段階で表すように設定(シンポロジ)を作ります。

NDWI色調整

 この設定で、先ほどの画像を見ると、興味深いことがわかりました。

 最初に10月10日では、ほとんど水らしきものは見えません。右下の樽水ダムの色も薄めです。(下図)

NDWI色調整後出力1010_b

 次に10月15日、台風通過の数日後です。(下図)

NDWI色調整後出力1015_c

 色が濃くなっています。水が増えたようです。下流にある砂防ダムの水量も増えているようです。
 右下にある樽水ダムは、確実に水量が増えたために長くなっていますし、流れ込む増田川の上流も見えてきました。。

 そして11月4日(下図)では、天然ダムの水量が下がったためか、色は薄くなっています。下流の砂防ダムも、10月15日よりは色が薄くなっています。

NDWI色調整後出力1104_c

 これらから台風による大雨後に、天然ダムの貯水量が増えたことが観察できました。
 ただ、極端に大きくなっていないようです。下流の砂防ダムの貯水量も増えていることが見て取れることから、一定程度は水が流れていることも考えられます。

 その2(準備編)で上げた観察の課題1(天然ダムの大きさ)課題2(下流の砂防ダムの大きさ)の変化をつかむことはできそうです。
 今後も条件の合うデータを手に入れれば、比較することでの観察はできることがわかりました。

 ただ、光学画像では課題3(周辺の山(V字の谷))の変化はつかめないようです。
 もう少し観測の方法がないかを検討したところ、SAR(Synthetic Aperture Radar)画像の活用となるのでした。

 非専門家なのに、ここまで来てしまいました(^^;)
 非専門家でも、いろいろ取り組んで調べられるのがオープンデータの良いところかも知れませんね。数年前までは、衛星データを無料で手に入れられるとは思ってませんでしたし。

 ※このページの画像データの引用:Copernicus Sentinel data 2019※

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