見出し画像

僕が自治体DXに関して思っていること

こんにちは、みなさん。

僕は2017年から神戸市役所でICT業務改革専門官(3年間の任期付職員)として、自治体の内側から業務改善のためのデジタル技術活用を推進してきました。今は一般社団法人のCode for Japanというところに移籍して、「自治体のデジタル技術活用」だけでなく、それが「まちづくり」と交差するところはどこかと暗中模索しています。

ここ数ヶ月の政府の動きをみると、デジタル庁新設や、自治体向けの押印廃止マニュアル検討など、矢継ぎ早に改革が進みそうな期待があります。これは歓迎すべき動きではあるのですが、振り返って自治体や都道府県を考えると、これからの動きについていけるのかなという不安があるのではないでしょうか?

「仕事なんだから淡々とデジタル化進めたらいいでしょ」と上から目線で言ってしまいたくなるのもわかるのですが、それはそれで多様性を考慮した進め方とは思えず、悩ましいところです。僕はたまたま半導体EDAや組み込みエンジニアとしてある程度テック(機械)が好きだったからよかったものの、人と接することが何より好きだけど機械は苦手という人ももちろん世の中にはいるわけです。そういった職員が活躍できてこそ、よい政策づくり、よいまちづくりができるんだろうなと感じています。とは言え、職員数が減っていく中で、新たな制度対応や災害対応など仕事の幅が広がっている自治体において、全ての職員があるテックを使いこなせないと、正直現場がまわらないのも実態です。

(※職員数の少ない自治体においては、以下の話は全くピンと来ないと思います。そんな時は不定期で開催しているsunabarにご参加ください。座談会で一緒にお話ししましょう。)

私が自治体のデジタル化の鍵となる気がしているのは、原課(行政用語:要は現場、所管課という意味)と行革・情シスなどの部門をつなぐ人なんじゃないかと思っています。

私の限られた知見では、そういった役割を自然と担っている職員はどこの自治体にも何人かは存在していているものの、その役割やスキルをうまく定義できていないのが現状だと感じます。GDS(イギリス電子政府)の「サービスデザイナー」の定義がそれに近いと思っていますが、下記の要素を高いレベルでこなせるスーパーな人間はなかなか世の中に存在しません(GDSも、エントリーレベルから全てを要求しているわけではありません)。とは言え、このうちのいくつかのスキルを持った職員が行政に必要とされているのも現実です。

アジャイルな仕事ができる
アジャイル手法を知っていて、仕事のあらゆる面でアジャイルマインドを適用できる方。あなたは、速いペースで進化する環境で仕事ができ、迅速なデリバリーを可能にするために反復的な方法と柔軟なアプローチを使用することができます。リスクを恐れず、失敗から学ぶ意欲があり、政府のデジタルプロジェクトにおけるアジャイルプロジェクトデリバリーの重要性を理解しています。チームがお互いに何に取り組んでいるのか、それが実際の政府の目標やユーザーのニーズにどのように関係しているのかを理解していることを確認することができます。

情報の伝達
組織的、技術的、政治的な境界を越えて、文脈を理解しながら効果的にコミュニケーションをとることができます。あなたは、複雑で技術的な情報や言語をシンプルにして、技術的ではない聴衆がアクセスしやすいようにする方法を知っています。信頼と信憑性を生み出すためにチームが行っていることを主張し、伝えることができ、挑戦に対応することができます。

コミュニティのコラボレーション
あなたは、チームのスタイルを理解し、チームメンバーに影響を与え、モチベーションを高めることで、コミュニティの仕事に貢献し、成功したチームを構築することができます。建設的なフィードバックの与え方、受け方を知っており、フィードバックループを促進することができます。チーム内での紛争解決を促進し、チームの透明性を確保し、仕事が外部に理解されるようにすることができます。あなたは、専門的な開発の重要性を意識しながら、チームが納期に集中するのを支援することができます。

デジタルの視点
あなたは、デジタル経済がユーザーの行動や政府の状況をどのように変化させているかを理解しています。ユーザーのニーズ、利用可能な技術、および費用対効果に基づいて、十分な情報に基づいた意思決定を行うことができます。より広いデジタル経済と技術の進歩について知っています。

エビデンスとコンテキストに基づいたデザイン
複雑な問題や概念を視覚化し、明確にして解決し、利用可能な情報や研究の証拠に基づいて規律ある意思決定を行うことができます。あなたは、分析から合成および/またはデザインの意図に移動する方法を知っています。そのようなスキルには次のようなものが含まれます:論理的思考を適用する能力の実証、情報の収集と分析、および主要なパフォーマンス指標(KPI)を証明する。

制約の中での作業経験
与えられた制約(技術や政策、規制、財務、法律上の制約を含むが、これに限定されない)の中で仕事ができることを理解している。変更可能な制約に挑戦する方法を知っている。必要に応じて製品やサービスを適応させることで、制約に対するコンプライアンスを確保できる。

意思決定とリスクを促進する
あなたは、決定がどのようにして達成されたかを明確に説明し、効果的な決定を行い、導くことができる。あなたは技術的な複雑さとリスクを理解し、共同設計活動を実行し、他の人に影響を与え、コンセンサスを構築する能力を持っています。

リーダーシップと指導力
あなたは、ビジョンを解釈して意思決定を導くことができます。協調的な環境を作り、良いサービスを維持することができます。あなたは、様々なレベルの複雑さとリスクを越えて技術的な紛争を理解し、解決することができます。問題を解決し、ブロックを解除することができる。チームを牽引し、ペースを設定してチームの成果を確保する方法を知っています。リスクを効果的に管理し、リスクの軽減を追跡するなど、リスクを管理することができます。チーム、部門、政府全体の様々な依存関係を管理することができます。

コードでのプロトタイピング
あなたは、インターネット技術の限界と、なぜコードが重要なのかを理解しています。コードをプロトタイプ化することはできますが、本番対応のコードを作る必要はありません。開発者と話す方法を知っていて、コードを切り替えるタイミングを知っている。セキュリティ、アクセシビリティ、バージョン管理を理解している。「ノーコード・ローコードツール」を使いこなせる。(←筆者意訳)

プロトタイピング
技術的な知識と経験を応用して、プログラムと物理的な出力の両方で、実行可能なプロトタイプを作成または設計することができます。あなたは、パラメータ、制限、および相乗効果を理解しています。

戦略的思考
あなたはビジネス問題、でき事、活動の全体的な見通しを取り、それらのより広い意味合いおよび長期的な影響を論じることができる。これはパターン、標準、方針、ロードマップおよび視野の声明を定めることを含むことができる。解決および活動よりもむしろ結果に焦点を合わせる方法を知っている。

ユーザーに焦点を当てる
あなたはユーザーを理解し、証拠に基づいてユーザーが誰であり、何を必要としているのかを識別することができます。ユーザーの物語を翻訳し、これらのニーズを満たすための設計アプローチかサービスを提案することができる。ユーザーを第一に考え、競合する優先順位を管理することができます。

(www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。)

芦屋市(人口約9.4万人)、神戸市(人口約150万人)、Code for Japanが共に取り組んでいる協働プロジェクト(通称ACKプロジェクト)では、庁内のデジタル化を推進できる人材の育成がテーマに入っています。原課と行革・情シス部門をつなぐ職員として、GDSが定義した「サービスデザイナー」をもう少しマイルドにした役割を定義し、こういったことをする/しない人ですよ、というのを言語化してみる予定です。

残念ながら日本において「サービスデザイナー」という役割は諸般の事情により誤解されている可能性がありますし、理解されやすい役割名ではないかもしれません。なんとなく、カタリスト(触媒)という名前がいいかなぁと思ったりしますが、それもあまりピンと来ない可能性があるので、どなたか一緒にいい名前を考えてくださったら嬉しいです。(以下の文章では、便宜的に"サービスデザイナー"と記載します)

今後の取り組みとして、各自治体や省庁で"サービスデザイナー"的な活動をしている職員の方々と知見やノウハウを共有したり、足りないスキルを補うための学びの場にしたり、庁内外での仲間づくり、"サービスデザイナー"採用や"サービスデザイン"専門職の設置することの可能性について議論できたらなと思っています。あの人は"サービスデザイナー"と言えるかもね、という方を是非ご推薦いただければ幸いです。

なお"サービスデザイナー"の役割を担ってみたい職員や、今後デジタルツールを使いこなしていきたい現場職員の方々向けのトレーニングのひとつとして、様々なITツールをハンズオン的に紹介するコンテンツを用意しています。私自身が、行政で使えそうなツールや、それを他の職員に説明するのに苦労した経験からITベンダー様のお力添えで作成したコンテンツですので、"サービスデザイナー"育成に向けたデジタルツールの職員研修で使っていただければ幸いです。

今回の政府のデジタル化の流れはとても大きなチャンスであるとともに、うまく組織と職員の役割をアップデートできればさらにその効果が持続的に高められるのではないかと期待しています。

また、民間企業で働いている方がにとって、自治体は"サービスデザイナー"としての経験を積めるチャンスが無数に転がっています。そして、実際に外部人材採用の機会も増えています。現在Code for Japanでは特に人材紹介プログラムは行っていませんが、ニーズが多そうなら「元自治体外部人材の与太話」的なセミナーも開催できますので、ぜひお声がけください。

Cover Photo by NEW DATA SERVICES on Unsplash

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?