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新たなビジネスの始まりのとき

今日のおすすめの一冊は、藤井保文氏の『AFTER DIGITAL VER.2  アフターデジタル2 UXと自由』(日経BP)です。その中から、「アフターデジタル2、DXとUX」という題で書きました。

本書の中に、日本にはない、中国の最新の不動産賃貸サービスの事例があったのでご紹介します。

若者向け賃貸サービスの「自如」(ズールー、ZiRoom)を見てみましょう。ズールーはテンセントと提携関係にある「鍵家」(Liang Jia)という不動産+仲介業者からスピンオフしたサービスです。ズールーが提供するサービスは大きく分けて4つあります。①賃貸物件探し ②生活サービス ③旅行 ④コミュニティー 
①の賃貸物件探しは、日本にもあるようなサービスですが、中国ならではの家探しにおけるペインポイントを解決しています。例えば中国都市部では、複数人で一緒に住む「ルームシェア」は日本以上に一般的です。その場合、誰かが責任者となり、他のメンバーから家賃を徴収してまとめて支払う必要があります。ズールーでは、これを同居する全員がそれぞれ別々に支払える仕組みにしています。
②生活サービスは、賃料に8%の管理費を上乗せすることで、定期的な清掃や家具の修理といいったサービスを一定回数できるサービスです。別の言い方をすると、サービスアパートメント化です。サービス側の視点から見ると、家を貸した後でも、顧客との接点を持ち続けることが可能となります。
③旅行には、中国国内で旅行するときに使える2種類のサービスがあります。1つ目はAirbnbと同様のサービスで、ズールーの家を借りている一般ユーザーがもう1部屋借りてデコレーションし、他のズールーユーザーに宿を提供するサービスです。こちらはかなりデザインにこだわっている部屋が多く、値段はそれなりにします。
2つ目は、ズールーアパートともいうべきサービスで、ズールーが自社で抱えるマンションの空き部屋を安い宿として提供するサービスです。ホステルのような場所を構えている場合、1泊1000円以下で宿泊することも可能です。ズールーのユーザーであれば、中国国内を旅行する際、このような部屋に宿泊することができます。
④コミュニティとは、マンションの中などのイベントサービスです。ズールーが自社で抱えるマンションはイベントスペースが付いているものがあり、ズールーユーザーがそのスペースを借りてイベントを開催することができれば、ズールーが自ら料理教室や音楽・ダンスなどのイベントを開くこともあります。そうしたイベントは、アプリでの通知だけでなく、一定距離内に住むユーザーとのチャットグループで告知されます。
その他、特定地域での皆の意見を聞いたり投票したりするアンケート機能などもあります。いわゆる「住居・賃貸」のビジネスドメインに限定せず、「より便利で楽しい住空間」と捉えることで、地域での交流や旅行時の住まいまで提供しています。そうすることで提供価値を広げ、ユーザーとの接点をより高頻度に長期に転換できたのです。
商品に関わるペインポイントを解決するでなく、ユーザーにより良い生活スタイルを提案する形で、定期的に顧客との接点を持てる「体験提供型」のサービスに変化させています。これにより、商品販売型では提供できなかった顧客との新たな関係を作り出し、これを新たな優位性としながら、いつでも顧客の状態を知ることができています。「売ること」「成約させること」にフォーカスするのではなく、顧客にずっと寄り添うことを重視することで、他社を圧倒し、人が人を連れてくるというモデルが、多方面に成立し始めているのです。

日本でもマーケティングの世界では、「モノを売らないで体験を売ろう」と言われて久しいです。しかし、中国ではこれがアプリやスマホ決済システムの進化により、オンラインとオフラインが常時混在するようになっています。つまり体験も見える化されて、オンライン上にあふれ出しているのです。

我々は、DXというと、ソフト開発会社の仕事だと思ってしまいやすいです。しかし、オンラインとオフラインの境がなくなるOMO(Online Merges with Offline)の時代には、どんな商売にもこの考え方が入っていないと、近い将来、多くの企業が存続できなくなるはずです。

中国に限らず、アジアにおいては現在、DXは日本より数段先を行っている気がします。なんとかここで一挙に挽回するため、多くの人が、このDXやUXの知見を得る必要があると思います。

そして、オールド企業であればあるほど、中小企業であればあるほど、デジタルと遠い業種であればあるほど、このOMOの考え方は必要なんだと、深く感じました。

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https://ameblo.jp/hiroo117/entry-12616497170.html


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