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「話を聞かれない」と孤独になる

今日のおすすめの一冊は、ケイト・マーフィ氏の『LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる』(日経BP)です。その中から「誰の話でも聞ける人」という題でブログを書きました。

本書の中に『「話を聞かれない」と孤独になる』という興味深い話がありました。

街で会った人であれ、CEOや有名人であれ、誰かをインタビューするとき、この 人は話を聞いてもらうのに慣れていないんだな、と感じることがよくあります。まるで、聞いてもらうのが初めての経験であるかのようです。 相手の言葉に真摯に関心を示し、もっと聞かせてほしいと言うと、彼らは驚いた顔 をします。
そして私が話を急かしたり、言葉をさえぎったり、スマホに目をやったりしないと確信すると、目に見えてリラックスし、じっくり思いを巡らせ、考えたことを省略せずに話すようになるのです。だからこそ、こちらが水を向けていない、取材テーマと はまったく関係のない話――でもその人たちにとっては大切な話――を、私に共有する人が多いのでしょう。
彼らは、自分の話に耳を傾けてくれる人に、やっと、ついに出会えた、と感じるのです。 話を聞いてもらえないと、人は孤独になります。 心理学や社会学の研究者は、アメリカで孤独がまん延していると警告するようになりました。孤立している、あるいはつながりがないことを原因とする早死のリスクは、 肥満とアルコール依存症による早死のリスクの合計とほぼ同じくらい高いのです。
孤独は、1日14本の喫煙よりも健康に悪い影響を及ぼします。そのため専門家たちは、孤独は公衆衛生の危機だと言うようになりました。実際、疫学研究により、心臓 病、脳卒中、認知症、免疫機能不全などには、孤独が関係していることがわかっています。孤独は誰のことも差別しません。最新の調査では、孤独感には、男女間や人種間に大きな違いはないことが示されています。
一方、世代による違いはあるようです。デジタル画面を見て育った最初の世代であ るZ世代の人たちは、孤独感を抱く可能性がもっとも高く、健康状態についての自己報告では、体調が良くないと回答した人の数は高齢者を含む他のどの世代よりも多くいました。
自殺願望や自殺未遂が理由で入院した学齢期や思春期の子の数は、2008年と比較して倍以上になっています。 今の10代の若者たちが、デートしたり、友達と一緒に過ごしたり、運転免許を取ったり、親元から離れて実家を出たりをあまりしなくなったという話は、いろいろなと ころで取り上げられています。彼らは、他の世代よりもひとりぼっちで過ごす時間が 長いのです。 加えて、スマートフォンのスクリーンタイムが長ければ長いほど、幸福度が低くなると示す研究も複数あります。
フェイスブックやユーチューブ、インスタグラムなどソーシャルメディアの使用頻度が高い8年生〔日本の中学2年生〕は、これらプラットフォームの使用時間が短い 8年生と比べ、うつ病のリスクが27パーセント高く、自分は幸せではないと答える確率は56パーセント高くなりました。同様に、習慣的にテレビゲームをする若者に関する調査のメタ分析では、不安やうつに苦しむ可能性が高くなることがわかりました。
孤独を解消するには「外に出かけなさい!」とよく言います。クラブ活動に参加しよう、スポーツを始めよう、ボランティア活動をしよう、誰かを食事に誘ってみよう、教会の活動に参加しよう、などです。言いかえれば、フェイスブックを閉じて、直接 「顔と顔」をつきあわせよう、ということです。
でもここまで書いたように、誰かと一緒にいても、人は孤独を感じることが多いのです。 「外に出かけて」「顔と顔」をつきあわせたら、そこから先、私たちはどうやって人とつながったらいいのでしょうか? それは、相手の話に耳を傾けたらいいのです。でも、口で言うほど簡単ではありません。「誰かの話を本気で聞く」とは、多くの人に忘れ去られた、もしかしたらそもそも身につけたことすらなかったかもしれない、そんな資質です。

寺山修司氏の「書を捨てよ、町へ出よう」という本があります。題名通りに受け取ると、「読書など意味はない、本などさっさと捨てて町へ出て人と会おう」というように思ってしまいます。しかし、寺山修司さんほどの読書家はいません。詩人で、劇作家で劇団も主催していた当時のカリスマですから、当たり前の話はありますが。

大事なのは読書もしつつ、人と人との間に入っていくというリアル体験をすることです。人と人の間と書いて人間(じんかん)といいますが、人の世のことです。その人間(じんかん)にあって、一番大事なことが人の話を聞くこと。人の話を上手に聞くことができれば、コミュニケーションはほぼできたと言ってもいいくらいです。

現代は(コロナ禍になって特に)、ますます相対で人の話を聴く機会が少なくなりました。相対で話を聴くことは、ネットでの講演ともまた違う効用があります。実際に町へ出て、リアルな友と食事をし、酒を酌み交わし、お互いの話で盛り上がり、自分の話も聞いてもらう。孤独の解消はこれしかないと言っていいでしょう。

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