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高収入の職業からAIに代替される

今日のおすすめの一冊は、『chatGPTは神か悪魔か』(宝島社新書)です。その中から山口周氏の「chatGPT時代を生き抜くために」という題でブログを書きました。

本書の中に「高収入の職業からAIに代替される」という興味深い文章がありました。

情報労働の市場を経済学的な視点から考えたとき、とてもパラドキシカルな未来予想図も見えてきます。AIはクイズのような正解があるミッションが得意ですが、先述した通り、人間で正解を出すのが得意な人というと、東大や京大を典型とした偏差値の高い大学を出た人、ということになります。

そして、そのような人が希望するのは基本的に給料の高い職業なんですね。典型的には医師や弁護士やコンサルタントといった職業です。こういった職業の共通項が何かというと「お客様が問題をくれる」ということです。これはまさに学校の試験と同じで、偏差値の高い人たちには非常にフィットがよいわけです。

さて、ここに面白いパラドックスがある。何かというと「正解を出すのが得意な人たちの給料は高い」ということは、株主や経営者からすると、こういう人たちこそ最も機械で代替させたい、ということです。

末端の労働者、労働市場で安い値段しかつかない人を代替させるのではなく、労働市場で最も高い値段のついている人こそ、AIによる代替のターゲットになる。この点こそが、これまでの産業革命と今回のAI革命の大きな違いです。

これまでの産業革命では、常に機械に代替されるのは労働市場の末端に位置する人たち、報酬水準の低い人たちでした。しかし、今回のAI革命によって代替されるのは、労働市場の頂上に位置する人たち、つまりエリートなのです。 

1960年代のNASAのアポロ計画では、当時において最も安価な汎用コンピュータが人間だったから人間を宇宙船に乗せたわけですが、AIのほうが安いのであればそちらを使いたい。これはあらゆる産業において言えることです。

なぜこれまで情報処理を人間にやらせていたのかといえば、それはコストが一番安かったからです。 これは見過ごされがちなポイントですが、非常に重要なポイントです。

コンサルタントや弁護士や投資銀行のトレーダーなどに億単位の高額な年俸を払っているケースであっても、費用対効果で考えればそれが一番安かったのです。しかし、コンピュータの能力が向上して供給量が増えて、価格がどんどん下がっていけば、給料の高い人から順にAIに食われていくことになります。 

これはなかなかに面白い状況で、職業がなくなるという議論においてはそういう 観点が抜けているように思います。 

「将来なくなる職業」として、よく警備員や運転手が挙げられたりもしますが、年収200万円、300万円の人をAIに切り替えて人件費を削ったところで、経営者からすると大したインパクトは得られません。 それよりも切り替えたいのは高い給料の人材なのです。 

すでに、こうしたことが進行しているのが投資銀行のトレーダーです。2000年代の前半、 東京の外資系投資銀行のトレーディングルームでは数百人単位のトレーダーが働いていて、その平均年収は1億円を超えるような状況でした。ところが今ではトレーダーが数人ほどしかいない。ほかはすべて自動的に売り買いをするアルゴリズムに置き換えられてしまったわけです。

◆NASAのアポロ計画で「なぜ機械(コンピュータ)ではなく、人間を乗せるのだ」という質問があったとき、NASAは「人間は非線形処理のできる最も安価なジェネラティブ(生成的な)・コンピュータシステムであり、その重量は70キロ程度と非常に軽い」と答えたという。

今から55年前の、1969年にアメリカはアポロ11号で月面着陸に成功した。当時のコンピュータの技術からしたら、まさにNASAの発表の通りだった。

◆「高収入の職業からAIに代替される」と言っても、株式のトレーダーが全員置き換わったわけではなく、少数の人は残っている。これは、医師や弁護士やコンサルタントも同じで、全部が置き換わるわけではない。

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