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組織内自営業者になる


今日のおすすめの一冊は、藤原和博氏の『55歳の教科書』(ちくま文庫)です。その中から「正解のない時代には何が求められるのか」という題でブログを書きました。

本書の中に「組織内自営業者になる」という心に響く一節がありました。

誰もが知っている大企業や大手銀行が破綻し、リストラが当たり前のことになった今、国や企業に守られていれば一生安泰に過ごせる、という時代は過ぎ去りました。誰もがもう、そのことをわかっています。年金不安もあります。公務員でさえ、天下りがかなり規制されています。
多くの会社員が、定年後の生活に不安感を持っていると思います。だからこそ、私がお勧めしたいのが、自衛のために「自営業」を意識することです。とはいえ、いきなり独立して自営になる、というのはハードルが高いし、リスクも あります。そこで、「組織内自営業者」という考え方を意識してみてほしいのです。
私自身は会社を退職してフェローという立場になったので、組織内自営業というわけではありませんでした。しかし、考えてみれば、リクルートの仕事そのものが、極めて組織内自営業的だった。実際、大半の社員は自営業的な感覚を抱いたままリクルートでサラリーマン生活を過ごすので、そのまま独立していく例も少なくありません。
何が他の会社と違うのかといえば、働く意識だと思います。かつてのリクルート社員の多くは、会社に養ってもらっている感覚はありませんでした。会社を利用して自分のスキルを磨き、いつでも自営業になれるくらいの力を身につけることを、みな真剣に考えていたのです。
要するに、組織の中にいながらにして、自営業者のような存在になるためにはどう すればいいのかを意識しましょう、ということ。 「士業」と呼ばれる弁護士や会計士をイメージするといいかもしれません。彼らは企 業の内部に深く入ったり、あるいは組織の一員として働いたりしていますが、それぞ れは国家資格を持つ独立した存在です。 普通のサラリーマンと違うのは、突出した技術や知識、経験を持っていること。
そのために勉強と実地訓練を積み重ねて、その道の専門家として活動しているわけです。 つまり組織内で自営業者のような存在になるためには、特化したスキルセットを持っていればいいということ。特別な仕事である必要はありません。
希少性 のあるスキルがあり、どんな方向に自分を向かわせたいのかがはっきりしていれば、 いかなる職種であっても自営業者化は可能だと私は考えています。いずれ会社と交渉することができるよう、着々とスキルを高めておくのも有効でしょう(コロナ以降、 むしろこのような交渉がやりやすくなったはずです)。
「大事なことは、早めに方向を定めておくことです。営業の道なのか、経理なの か、人事なのか、あるいは経営の道なのか。言ってみれば、会社という建物の中で、 どんな店を出すのか、ということ。それさえはっきりすれば、あとは自営業者に必要な能力を磨き続けるだけ。
副業や週末起業でスキルを磨く手もありますよね。 組織内自営業者の意識を持っていれば、組織に埋没しなくて済みます。ここでいう「組織に埋没する」とは、組織に人生を委ねてしまうこと。会社に「帰依」してしま ったら、これはもう宗教の信者と同じ。激しくスピードの速い変化の時代には、これは危険すぎる態度でしょう。
もはや未来のまったくわからない国や企業に頼ろうとしたり、寄りかかったりするのは、極めてリスクの高い投資ではないでしょうか。 自分の人生そのものを賭けてしまう博打のようなものです。 逆に、組織内自営業者になろうという意識を持つと、会社ほど自分の能力が磨ける 場所はない、ということに気づきます。
給料をもらいながら、自分を鍛え上げてくれるのが会社です。企業は個人にとって、最高の修業先、つまりビジネススクールになるのです。 会社が蓄積した資産を使って、サラリーマンとして自らを磨き上げる。そうすれば、 個人をブランド化することも可能です。個人をブランドにできれば、それは会社にとってもプラスになります。

トムピータズ氏が書いた本に「ブランド人になれ!」というものがあります。そこにはこんな文書があります。

会社勤めを続けるとしても、個人事業主のように考え、行動しよう。個人事業主は独立独歩、頼りになるのは自分の腕だけだ。その腕をつねに磨いていかなければ、明日にでも食いっぱぐれる。個人事業主の売り物は、自分の実績と自分のプロジェクトしかない。だれにも頼らず自分の力で生きていける人を、私は「ブランド人」と呼びたい。ひとめで違いがわかるもの、お客さんの期待を裏切らないもの、人の心を癒すもの、グッとくるもの…それがブランド人である。

まさに、会社内での個人事業主ということです。また、昨今はスタートアップという「起業のすすめ」が多く言われるようになりましたが、その前の段階では非常に有効な手段だと思います。

そもそも、どこに勤めていようと、その会社が「自分が経営している」という意識でいる人と、「自分は使われている」と思って仕事をしている人では天と地ほどの差があります。つまり、圧倒的な当事者意識です。

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