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「36歳の少女」の続きは「となりのトトロ」だった

侵攻されて城を失って、途方に暮れたnoteを更新した日の夜のこと。

一本の電話が鳴った。「帰りたいから迎えに来て」と。

それなりに持たせていた所持金を24時間以内に使い果たし、最終バスも乗り損ねて、部屋まで歩こうとしていたけれど、暗くて道が分からない。つまり迷子になったと。

杖をついて歩いていたから、「車に乗せてあげる」と声を掛けられたらしく、それも怖くなったと。

とりあえず「タクシー拾って部屋まで帰りなさい」と母が返答したら、お金もないし、タクシーも怖いから嫌だと。

元気な健常者だったら、徒歩で30分くらいの道のり。私の足でも40分はかかる。丘なので、起伏が激しい坂道も多く、足の不自由な妹が歩いたら、数時間はかかるだろう。きっと薬だって頓服しか持っていなくて、必ず服用しなければならない就寝前の薬だって飲み損ねる。いろいろ瞬時に想像した結果、妹を迎えに行くことにした。

とりあえず駅のバスプールに戻って動かないで待っていなさいと。

騒ぎを起こされてからではあの城にいられなくなる。まだ騒がれる前だから何事もなかったように自分が城に戻れると思った私は、母と二人で無我夢中で妹を迎えに行った。

タクシー乗り場に車を横付けして、母にバスプールまで迎えに行ってもらった。あのシーンはまるで映画かドラマのワンシーン。誰もいなくなったバスプール。地下鉄は動いていたから明かりだけはついていて、そこの椅子で座って待っていた妹を母が迎えに行く。ひ弱な身体の母が体格だけは良い妹の片腕を引いて二人で車に戻ってきた。

あれはまるで迷子になったメイを探す「となりのトトロ」みたいな展開だった。

そこから部屋に戻って必要な荷物だけ取ったら、すぐに実家に戻り、到着したのが深夜零時近く。

疲れたけれど、早めに城を奪還できて良かったと安堵した。そう、私は妹の心配よりも、城の心配をしていた。母も妹を心配するというよりは、騒がれて他人様に迷惑を掛けてからでは遅いと体裁を保つために必死に迎えに行ったのだ。何かあればすぐに騒ぎ出すし…薬が切れる前に妹を拾わなければと二人で必死だった。

翌日、仕事を終えてから、妹が使いっぱなしの城の後片付けに向かった。30時間くらいの出来事だし、それほど部屋にいなかったみたいだから、汚れてはいなかったけれど、あまりにも突然来られたものだから、自分が必要なものまで隠したり、片付けたり、引っ越し作業してしまったので、なるべく自分が使いやすいように部屋を元に戻すのに時間がかかった。元通りには戻せなくても、少しでも使える部屋に戻そうとその日の夜は荷物の運搬だけして、翌日の昼間、本格的に部屋の片づけをした。まるで夜逃げ。夜の間に撤収したり、荷物を運んだり…。

かなり無駄な労力を四日間くらいで使った。時間も無駄にしてしまったと思った。けれどここであー嫌な思いをしたと愚痴ってばかりでは何にもならない。

良いこともあったから。今回の件は考えていた童話のヒントになった。おかげで書けた。妹が仙台に来て、帰りたくなって、迎えに行かなければ絶対思いつかない話を書けたので、それは妹に感謝しなければならない。よく他人からよく面倒見てるよね、家族はほったらかして生きればと言われることがあるけれど、私が結局家族の面倒を見てしまうのには理由があって、別にアダルトチルドレンだからとかではなく、きっと家族と一緒にいるとネタになるんだと。きっと一人で平穏に暮らしていたら、絶対書けない話をおかしな家族と共同生活していることによって書けている気がしてならない。実際、母も以前投書していたネタは変わり者の父絡みだし。ネタになる男なので…。その娘はネタになる女…。まぁ私も相当変わり者ではあるけれど、妹と比べたら凡人に近い。発想力とかレベル違いなので…。凡人では想像できないことを妹は考えている。それを正しいと思い込んでいるし。想像とか妄想だと気付かず、現実のこととして受け止めているから病気なんだけれど。私はまだ現実と想像の区別はついているので。それ、区別つかなくなったら、終わり。その区別つかない人がひとりで世間を歩いているっておそろしいこと。

かなりたいへんな一週間だったけれど、ひとり暮らしが難しいと少しは気付いただろうから、それはそれで良かったと。やってみないうちはひとり暮らしする宣言をやめなかっただろうし。一回来たということは、忘れた頃にまたひょっこり来てしまう場合もあるかもしれないから、その辺は覚悟して、部屋を適度に元に戻して、あまり片付けないで済むように、個人的には物足りないけれど、必要最小限の物だけ出して暮らしていようと思う。様子見しておく。城に戻れて良かった…。

母はあと何回、妹を助けることができるんだろうとも思った。精神病院に妹を迎えに行った時とも似ていた。これでますます妹は母がいなくてはならない存在って思っただろう。大切な存在になってしまっただろう。

父は夜10時まで仕事で不在だったから、仕方ないけど、せめて無事に帰るまで待っていてくれればいいのに、呑気に酒を飲んで酔っ払っていた。これだからアル中は困る。元はと言えば父が妹を仙台まで送り届けてしまったんだから、最後まで面倒見てよと言いたい。

遠くまで運転できない母に代わって、運転だけはしたけれど、なんというか家族に助けられなければ生きられない36歳の妹が不憫でもある。まるで6歳くらいのはじめてのおつかいレベル。昔はひとり暮らしできていたのが信じられない。子どもだけどモンスター。「千と千尋の神隠し」に出てくる大きな赤ちゃんに似ている。

母は父と妹をトラとライオンに例える。だから私は「ラチとライオン」ならず「トラとライオン」って童話もそのうち書こうと思ってる。人間の事実をまるで動物の童話に変えて、書けると気付いた。やっぱりうちはネタになる家族だから、家族に苦労している分、せめて童話作家になりたい。

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#35歳の少女 #発達障害 #アダルトチルドレン #となりのトトロ

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