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らぶすとーりー

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みじかい恋愛小説です。
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#ショートストーリー

短編小説『見渡す限り、温もり』2020.7.9

 七月の蒸す空気、図書室は避暑地だった。七瀬真由香は小説の背表紙に手を伸ばしかけ、やめて…

短編小説『サヤカ2』2020.8.21

 男に女を売る生活で食っていこうと考えた母のようにだけはならないと、私は小学生のときに誓…

短編小説『サヤカ1』2020.8.9

 半年前まで彼女だった子がくれた紅茶のティーバッグを、一リットルのお湯で薄めて飲んでいた…

掌編『ネモフィラの視線』2019.11.21

 榎田先生が他人になる前に、わたしは告白をしなくちゃいけない。教室のすみに座っていた、ひ…

『体温』2019.10.09

その日の朝はまるで、トーストの焼ける匂いが僕をなぐさめているみたいだった。乗せたバターが…

『サーモンピンク』7.26

 交差点のむこうがわで、イノウエくんが女の子と歩いているのをみた。渋谷は夜の八時半、わた…

『ひみつの放課後』7.25

 高校を卒業するまでに、ラブホテルにいってみたい、と、ミナは言う。授業のプール終わり、私とミナはいつも一つずつ、更衣室で秘密を打ち明けあうことにしている。今が十七歳だから、あと一年と少し。もう彼氏をつくって、準備のできたミナは、いたずらっ子のように歯を見せて笑う。 「わかったら、サチにおしえてあげる」  わかる、なんて、そんな言い方。まだ男の人に、女っぽく触ったことのない私には、ミナの表情がまるで水槽の熱帯魚みたいに、熱っぽく見えた。クラスメイトの彼氏の顔もよく知っているから