八方良しの保育経営がもたらす効能
みなさん、いつもご愛読いただき、ありがとうございます。
カタグルマの大嶽です。
1月に開催したこちらのセミナーですが404名のお申し込みをいただきました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございます。
職員個々の特性や資質を人材ポートフォリオとして蓄積、個別最適化し、配置、抜擢、権限移譲していくことで、特に優秀人財、将来のリーダー候補のリーダーシップを高め、園長や管理職に依存しないボトムアップかつネットワーク的な組織づくりの重要性を弊社の「KatagrMa人財育成」の事例をもとにご紹介させていただきました。
【セミナー告知】
◯カタグルマセミナー
年度末に差し掛かり、KatagrMaをご活用いただいている皆様からも、次年度の事業計画の策定についてご相談いただく時期となってまいりました。
事業計画策定についてのお悩みは、下記大きく3つに分類されます。
・何を書けば良いのか?(これまで策定してきたものは内容・量ともに適切なのか?)
・監査などで最低限求められるポイントは?
・どのように運用すれば、計画したことが実現できるのか?
今年度策定された事業計画を振り返ったときに、
ほとんど実行されていない…
掲げた目標が達成できたかどうか分からない、判断ができない…
目標達成に向けた計画が明記されてない…
「こんなこと書いてたかも…」と今思い出す…
そもそも策定した「事業計画」の必要性を感じない…
上記1つでも当てはまるものがありましたら、是非本セミナーにご参加いただきたいです。
実行されるための、事業計画の策定の仕方やご検討いただく際の考え方や身近なヒントについての解説、そして、カタグルマの「事業計画」「事業報告」という機能で業務の効率化と作成後の運用を活性化させる事例をお伝えいたします。
◯コドモンカレッジ
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さてここからが本題です。
市場(需要=保育ニーズ)の転換期を迎え、市場成長フェーズ(成長期)から市場停滞フェーズ(成熟期)へと入った保育業界ですが、最近一つ気になることがあります。
一般的に市場が停滞、飽和し、経営がこれまでとは異なり円滑に進まなかったり、行き詰まったりすると起こりやすくなる事象があります。
それが、
粉飾や偽装などの「不正行為」
です。
先日も豊田自動織機による品質不正問題がありました。
保育業界でも、人員配置の不正申請、給付金の不正使途などが時々起こりますが、おそらく今後も無くならず、むしろ増えることも想定されます。
当たり前のことですが、誰しも不正行為を良き行為とは思っていない一方で、企業が置かれる状況や環境が悪化することで、不思議とこのようなことが起きたりします。
そして、多くの不祥事の実態を調べると、社員個人の独断で行なった行為というのはほとんど無く、多くが経営者や経営幹部の指示であったり、それらを良しとする組織文化や慣習が染み付いている状態で起こるべくして起こったケースです。
これらの誘発を律するのが、特に経営者や経営幹部の個の倫理観や正義感なわけですが、株主や親会社からの要求に応えようとするプレッシャーや業績を守ろうとする個人のプライドがそれらを勝ることで起こるようです。
保育業界の話に戻します。
昨年末も川崎市等で認可保育所を運営する株式会社が、5年間に市内の認可保育所など4か所で、
・職員の勤務時間を過大申請
・退職した職員を雇用しているように届出
により、運営委託費約5400万円を不正に受給していたというニュースがありました。
勤務時間80時間の職員を120時間の常勤職員として申請していたということですから、もちろん故意で行われたことだと思います。
それ以前に起きた同様のケースもそうですが、
・園児減による経営リスクが高まる焦燥感
・収益を増やしたい欲望
・特に罪悪感無くごく自然に行われた
などの理由でこのような事が起きたのだと察します。
いずれにせよ、この経営判断には倫理観や正義感が仮にあったとしても、それに勝る感情が生まれた上の行為ということになります。
ではどうすればこのような行為は無くなるのでしょうか?
この事を考える上で、一つ参考になる思想があります。
それが、
「八方良しの保育経営」
です。
「売り手によし、買い手によし、世間によし」
の「三方良し」という近江商人の経営哲学は皆さんご存知のことでしょう。
しかし、現代の複雑化した社会や環境とその変化のスピードにおいては、企業を取り巻く関係者(ステークホルダー)は拡大しており、今のビジネス環境は、「三方良し」という分け方では、とらえきれないくらい関係者が増えていることからも、
「八方良し」
が求められています。
八方とは、
1.社員とその家族
2.取引先
3.株主
4.顧客
5.地域
6.社会
7.国
8.経営者
を指します。
誰かに利益があっても、誰かが不利益を被っているという状況では企業価値が上がらなくなる時代に完全に突入しています。
SDGsやESGへの取り組みに企業が躍起になっているのはその象徴でしょう。
そして、この「八方」を保育業界にカスタマイズすると、このようになります。
1.職員とその家族
2.業者・パートナー
3.寄付元(株主※企業の場合)
4.保護者・子ども
5.地域住民
6.保育業界
7.自治体・連携機関
8.経営者
保育業界で不正行為が行われるのは、この八方良しの状態が大きく崩れ、歪むことで行われます。
経営者自身さえ良ければ良い、儲かれば良い、、
株主のために業績を守らなければならない、、
社員はコマ同然だ、、
地域との繋がりなんて最小限で良い、、
業者は金額を叩き、安く仕入れさせれば良い、、
不正行為はこのような歪んだ思考と思想から生じるのではないでしょうか。
保育業界においては、
「法人の私物化」
という言葉があるように、例えば社会福祉法人の場合、その設立主旨や存在意義を前提として、税金による給付金で運営し、さらには税金免除されているにも関わらず、経営者の独断やワンマン経営で私物化同様の行為をすることは決して許されることではありません。
※そうでない社会福祉法人が大半であることが大前提です。
そして、そのためのガバナンス、評議員制度、財務情報の公開、指導検査でもあるわけで、これら取り組みの否定は出来ないはずです。。。
つまり株式会社の上場企業同様に、その法人格で運営する以上、
「社会の公器」
「地域の公器」
なわけですから、本来は自ずと「八方良しの思想」を持つべきなのでしょう。
私物化は不正を助長することを忘れてはなりません。。
しかし、もちろんこの八方良しの状態を実現、継続することは簡単ではないことも理解しています。
私自身も経営者としてこの状態を実現できているかと言われれば、
「社員の家族のことまで深く考えられていないなぁ」
「まだまだ業界や国にとって良しと思える貢献が出来てないなぁ」
「株主が満足するレベルまでは至ってないなぁ」
など思うところがあります。
しかし、常に自身の脳内にこの八方を持ちながらバランスを取った経営をする習慣が身についていることで、アウトプットや決断、行動は大きく変わると確信しています。
ぜひ皆さんも、日々様々な判断、決断、アクションをされる中で、倫理観と正義感を保ちながら、八方がより良くなる判断、決断、アクションなのかどうか、それを軸に据えていただくことをお勧めします。
ではまた。