ホーム開幕戦での「3つの初」。スコア以上に、感情が揺らいだ
初取材、初Uスタ、初勝ち点。ホーム開幕戦という“お祭り”以上の意味があった。
J3リーグは、3月21日(日)に第2節を迎えた。昨季3位のAC長野パルセイロは、今季JFLから昇格したテゲバジャーロ宮崎と対戦。Jリーグ公式サイトの「見どころ」にも書いた通り、昇格候補筆頭vs新参者という位置付けだった。
初取材。当然だが、練習とは雰囲気が違う
私にとって、今節はJリーグ初取材だ。3月からクラブの番記者に赴任し、練習に通い続けてきたが、やはり公式戦は練習以上の緊張感がある。サポーターと同様、勝敗によって、その後の1週間の心持ちも変わってくる。
当日はキックオフ1時間前に長野Uスタジアム(Uスタ)へ到着し、受付を済ませ場内へ。午前中から降り続く雨の影響で、多くのサポーターは濡れにくい後方の席でキックオフを待つ。
事前の降水確率は90%だった。長野は天気が変わりやすいと聞いていたが、期待は虚しく。むしろ、キックオフ直前に雨足は強まった。
試合は10分に幸先良く先制したが、終盤の87分に追いつかれドロー。開幕2連勝とはならなかった。私は終了のホイッスルと同時に荷物をまとめ、記者会見へ向かう。
記者会見は、コロナ禍で制限はあるものの、やはり練習後の取材とは雰囲気がまるで違う。特に今節はショッキングな幕切れだったため、より一層の緊張感が漂った。
帰路についたのは、試合終了から数時間後だった。サポーターが帰った後のスタジアムを眺めると、試合結果も重なり、どこか寂しさを覚える。すべてを悲観的に捉えているわけではないが、選手や監督の心情を少なからず知る身として、悔しさはある。番記者とはこういうものなのだと感じた。
初Uスタ。現地で感じた2つの魅力
Uスタに足を運ぶのは2回目だった。1回目は、開幕戦のパブリックビューイングだ。試合の取材となると、四方八方に観客が入っており壮観である。
私はJクラブの番記者を務める以前から、全国各地のスタジアムに足を運んでいる。隣のクラブの本拠地であるサンプロ アルウィン(アルウィン)には、過去に複数回訪れた。
Uスタは2015年のオープン以降、ずっと気になってはいた。収容人数約15,000人のサッカー専用スタジアムで、四方が屋根で覆われている。この上ない観戦環境が整っており、行ける機会は伺っていたが、縁がなかった。
サッカーファンであれば誰もが感じるだろうが、初めて足を運ぶスタジアムはワクワクする。もちろんUスタも例外ではない。記者席に座った瞬間、スタンドを彩るサポーターと、アウェイゴール裏に見える山々の美しさに、目を奪われた。
サッカー専用スタジアムというだけで十分に魅力的だが、私が感じたUスタならではの魅力が2つある。
1つ目は、スタンドがチームカラーのオレンジとネイビーに染まっていることだ。ガンバ大阪の「市立吹田スタジアム」、京都サンガF.C.の「サンガスタジアム by KYOCERA」はチームカラー“1色”に染まっているが、Uスタは2色であり、新鮮さを覚えた。
2つ目は、前述したアウェイ側に見える山々の美しさだ。ホームゴール裏とバックスタンド、メインスタンドは2層構造だが、アウェイゴール裏は1層構造となっている。その影響で、後方の景色がよく見える(本来はすべて二層構造なのがベストかもしれないが....)。
この最高のスタジアムで取材できる喜びは大きい。
初勝ち点。宮崎が歴史的な“1”を掴んだ
Jリーグ公式サイトの「レポート」に書いた通り、宮崎はJ初得点、初勝ち点を掴んだ。ゴールを決めた梅田魁人は、前半にPKを外していたが、終盤に同点弾を叩き込み汚名返上した。しかも、相手は昇格候補筆頭の長野だ。まさに1点以上の重みがあった。
アウェイゴール裏に駆けつけた宮崎サポーターは、数十名だった。宮崎から長野への移動は容易ではない。おまけに寒暖差も大きい。それは選手も同じだ。
過酷な条件に加え、まだJリーグ2試合目という不慣れな状況でもあった。だからこそ、選手・スタッフ・サポーターにとって、本当に価値のある勝ち点1だったと思う。私情として悔しさはあったが、歴史的瞬間の目撃者となったことに違いはない。
楽観と悲観。両チームのサポーターの心情は、対照的だったはずだ。月並みではあるが、これもサッカーだと感じた。多くの“初”が連なり、1-1というスコア以上に、感情の揺さぶりが大きかった。
まだ第2節、されど第2節。今季は28試合しかなく、一瞬で過ぎ去っていく。Jリーグがある日常に感謝しながら、1試合に詰まったドラマを見逃さないように心がけたい。