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2021パルセイロアウォーズ。ベストゲームは敵地での“敗戦”

12月6日、Jリーグの年間表彰式「Jリーグアウォーズ」が行われた。同イベントは毎年、シーズン終了後に開催され、年の瀬を告げる風物詩とも言える。

最優秀選手賞(MVP)はレアンドロ・ダミアン(川崎F)。ベストイレブンも川崎Fの選手が席巻したが、今季の圧倒的な成績を踏まえれば、文句の付けようがないだろう。また、最優秀ゴール賞を受賞した柿谷曜一朗(C大阪)のバイシクルシュートも深く記憶に刻まれた。

そして我らが長野は、3年連続でJ3のフェアプレー賞を受賞。今季は退場者を1人も出さず、警告も1試合平均が「0.7」と、リーグ平均の「1.0」を下回った。持ち前のハードワークを維持しつつ、クリーンに戦い抜いたシーズンと捉えられる。

そんな今季の振り返りと備忘録として、(勝手に)パルセイロアウォーズを開催。番記者としての知見を生かし、全6部門を独断で選出した。“ストーブリーグ”(契約更改や移籍の話題が飛び交う時期)のお供として、ぜひお楽しみいただきたい。

ベストヤングプレーヤー

DF 33 山本龍平

対象選手は本家と同様、2021年12月31日時点で満年齢21歳以下とした。該当するのはGKキムミノ、DF山本龍平、MF山中惇希、MF小西陽向の4名だったが、最も出場機会の多い山本を選んだ。

山本は今季、松本山雅から育成型期限付き移籍で加入。リーグ戦24試合に出場し、15試合は先発だった。序盤戦は左サイドバックのファーストチョイスとして存在感を示したが、中盤戦に入るとDF川田拳登の台頭に伴い、出場機会が減少。ベンチを温める時期が続いた。

しかし、終盤戦はセンターバックとして能力を発揮。172cmと小柄ながら、対人の強さと正確なフィードでチームに安定感をもたらした。第27節・福島戦ではCKを頭でそらし、FW佐野翼のゴールをアシスト。得意とするセットプレーのキックやクロスでアシストがないのは痛かったが、ユーティリティ性を磨いてプレーの幅を広げた。

最も印象に残った選手(MIP)

DF 2 喜岡佳太

大卒1年目の昨季は16試合の出場に留まったが、今季はセンターバックのレギュラーとして25試合に出場。第9節・鹿児島戦では、CKの流れから豪快なジャンピングボレーでプロ初得点を挙げた。そして第15節・YS横浜戦では、FKから得意のヘッドでゴール。今季挙げた2得点はいずれも同点弾だったが、勝利に繋がらなかったのは心残りだろう。

守備では“エアマスター”として、空中戦で無類の強さを誇った。福島のFWイスマイラ(現・京都)、今治のFWバルデマール、富山のFW大野耀平ら高さで上回る相手に臆することなく立ち向かい、J3屈指のセンターバックに成長。課題のビルドアップを改善すれば、上位のカテゴリーでも十分に通用するはずだ。

最優秀選手(MVP)

サッカーダイジェストの2021年Jリーグ総集編をご覧ください。

ベストゲーム

天皇杯2回戦 vs川崎F 1-1(PK 3-4)

J1王者・川崎Fに対し、大健闘を見せた天皇杯2回戦。直前のリーグ第10節・今治戦からスタメンを9人入れ替えて臨んだ。川崎FもA代表と五輪代表の5人を欠いたが、FWレアンドロ・ダミアン、MF家長昭博ら実力者が先発。カップ戦とはいえ、現状のベストな布陣を敷いてきた。

試合は42分にMF藤山智史(現・秋田)のミドルシュートで先制。その後は猛攻を浴び続けたが、GK田中謙吾が好セーブを連発し、1-0のままアディショナルタイムまで持ち込む。しかし90+1分にゴールをこじ開けられ、延長戦に突入すると、最後はPK戦の末に敗れた。

惜しくも下剋上は果たせなかったが、この試合を機にリーグ戦は4連勝。それまでの不調が嘘かのように、4試合で15得点2失点と攻守ともに吹っ切れた。“フロンターレ効果”はサッカーファンの間でも話題となり、今季を語る上で欠かせない試合だった。

ワーストゲーム

J3リーグ第7節 vs福島 0-1

ここまではポジティブな要素ばかり挙げてきたが、9位と苦しいシーズンだったこともあり、あえてワーストゲームも選出した。

リーグ第7節、ホームで行われた福島戦。長野は約3週間の中断を経て、心身ともに万全の状態で試合に臨んだ。対する福島は、複数の選手が新型コロナに感染し、4月18日から5月1日まで2週間の活動自粛を強いられた。福島にとって、この試合は言わば“ぶっつけ本番”。18歳・柴圭汰と19歳・鎌田大夢がダブルボランチを組むなど、メンバー編成も容易ではなかった。

しかし試合は36分、イスマイラのゴールで福島が先制。後半は長野が猛攻に出たが、最後までネットを揺らせなかった。コンディションの差を考えれば、勝ち点3がマストな試合。この試合を機に3連敗を喫したことからも、ダメージの大きさが伺えた。

ベストゴール

J3リーグ第25節 vs鳥取 26分 藤森亮志

最後はベストゴールで締めくくる。今季の公式戦の総得点数は「40」。一時はリーグ戦で5試合連続無得点と苦しんだが、シーズンを通して印象深いゴールも数多くあった。

いの一番に頭に浮かんだのは、天皇杯2回戦・川崎F戦での藤山のミドルシュートだったが、ベストゲームでも取り上げているため割愛。次点で記憶に残った第25節・鳥取戦でのMF藤森亮志のゴールを選んだ。

1-0で迎えた26分、藤森は浮き球の裏街道で1人目のDFを交わす。その勢いのままヘディングで2人目も振り切り、最後は左足一閃。力強い突破で2試合連続ゴールを奪った。1人目に交わした鈴木順也は、立正大学の1つ上の先輩。プロの舞台で成長した姿を見せつけた。

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