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半・熟成チーズ「Pecorino di Amatrice」

イタリアのチーズは名前がとても分かりづらい。

初めてチーズの仕事をしたとき、販売員にチーズの説明書を作るわけだが、イタリア語の「stagionato」の意味がわからなかった。

英語ではよく「seasoned」と訳され、それをそのまま日本語にするとシーズニング、つまり調味料での味付けのことを指す。

「味付けされたチーズ??」となるのだけど、そんなわけはなく、本当の意味は「熟成」。

しばらく「味付けされて濃いチーズなんすかねー」とか適当なこと言ってて恥ずかしかった記憶があります。

今回ご紹介するのはsemi-stagionatoなpecorino。直訳すると半・熟成ペコリーノですが、実際は一般的なペコリーノの四分の一くらいしか熟成させていないペコリーノです。

羊乳チーズ、ペコリーノ

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ペコリーノとはイタリアのいくつかの地域で作られている羊乳のチーズ。

イタリア語の羊を表すPecoraが語源で、だいぶそのまんまなネーミング。ローマ付近の地域が発祥とされていて、地中海に近い地域で作られている。今ではサルディーニャ島で多く作られていて、島では多くの羊が飼われています。

塩味と熟成による旨味が強いチーズで、イタリア料理のレシピにはよく使われています。

作られている地域によって名前の後ろに「ロマーノ」とか「サルド」みたいな地名で付き、原産地名称保護制度(DOP)に認定されているものは5種類ある(ロマーノ、サルド、トスカーノ、シシリアーノ、フィリアーノ)。それぞれ地域によって味わいの特徴が異なるらしいのですが、食べたことがないのでわからない。

原産名称保護制度については長くなりそうなのでまた別の機会に。

アマトリチャーナ発祥の地「アマトリーチェ」

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今回ご紹介するチーズの後ろについている「アマトリーチェ」は地域の名前。ローマを含む中部ラツィオ、海無し州のウンブリア、アドリア海に面したマルケとアブルッツォにまたがり地域です。

グランサッソ国立公園を有する自然豊かな地域で、食が豊か。(イタリアはどこも自然豊かで食が豊かです)

「アマトリチャーナ」というパスタソースはおそらくこの記事を読んでくださっている方はみんなご存知かと思います。(グアンチャーレ、トマト、そしてペコリーノを使ったソースです)

残念ながらアマトリーチェの名前は原産地名称保護の対象ではないため、いわば作ったもん勝ちの商品名ではありますが、そこは地元の意地。

「アマトリチャーナソースに最も適したチーズ」として売り出しています。

Pecorino di Amatrice

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今回のチーズはCaseificio Storico Amatriceというチーズ工房で作られたチーズ。

羊から搾乳し、24時間以内に加工されます。

通常ペコリーノは8ヶ月間以上熟成させるハードチーズですが、Pecorino di Amatriceは1−2ヶ月という短期熟成。

商品カテゴリは「semi stagionato(半・熟成)」となっていますが、実際は4分の1くらいしか熟成させていません。

熟成期間が短いと一般的にミルク感が強く残り、熟成感、旨味、塩味は弱くなります。が、このチーズはそもそも塩味の強いペコリーノだけあって、2ヶ月間程度の熟成でもしっかりと旨味を感じます。

「アマトリチャーナに最も適したチーズ」と謳っているが、おそらく比較的フレッシュな味わいのため、トマトとグアンチャーレの旨味を活かし、ミルクの美味しさをプラスオンさせるのではないかと想像します。

見た目はねっとり柔らかな印象。表面の油は多め。

まだ若いので塩味は刺々しいけど強さはちょうどよい。

ペコリーノとは思えないくらいミルク感が残っている。

そして後香の余韻が長い。

白ワインと合わせてこのまま食べても十分美味しいが、やはりアマトリチャーナで試してみたい。

次回記事では実際にアマトリチャーナを作ります。


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