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りょうのはなし/Ep.2 合縁奇縁🇨🇳


登場人物

優さん…私のユニットのRA。🇯🇵
ブライアン…向かいのユニットメンバー。🇺🇸


突如目の前に現れたアメリカ人は同じフロアの別のRAに呼ばれ、親しげに話している。

日本人の先輩が当たり前のように英語でコミュニケーションを取っている。

憧憬の眼差しと共に、その光景が当たり前になることにワクワクした。

彼らを背中に、私たちはフロアの共同スペース、個室シャワーの前を通り過ぎた。

「ここが俺らのユニットでユニット名はE55。」

ユニットのドアの前で立ち止まり、優さんはドアの横の壁のE55と書かれたプレートに目を向けた。

その下のホワイトボードには「Welcome to E55 unit!」の文字と、E551からE558までの部屋番号、名前が手書きで書かれていた。

漢字、漢字、英語、(空白)、漢字、英語、英語、漢字…

ってことは…

よかったぁぁぁ!

無事、日本人ユニット、回避確定。

一部屋は空き部屋だったので、E55ユニットは全員で7人。

私の部屋はE551だった。

その番号がある時は嬉しいし、ない時は悲しい。

大阪出身の私からすれば、常に大阪を感じられる部屋だった。

私が到着したのはお昼過ぎ。

他のユニットメンバーは、大学内を親や先輩と散策していたり出かけていたので、挨拶はおあずけ。

「夜ご飯はユニットで食べたいから、6時くらいにはユニットにおっといて!その後、フロアパーティあるから!」

夜にはフロアパーティーがあり、ユニットメンバーのみならずフロアメンバーが集まるという。

夜を待ち遠しく思いつつ実家から持ってきたものを両親と荷解きした。

部屋で片付けをしていると、コンコンとノックの音が響いた。

「はーい」

優さんかな、と思いつつドアを開けると、そこには見知らぬ同年代の男と母親らしき人が立っていた。

「こんにちはー、初めましてー!私、〇〇の娘の正美と言いますぅー。」

だ、だれ?

この人は、なんで名前を知っているんだ。

「あらー!〇〇さんのところのー!!お母様には東大阪の時にお世話になりましたぁー!」

母が言った。

実は母は東大阪で生まれ育ち、私が幼稚園に上がるまで住んでいた。

「お話は母から聞いてまして。確か大樹と(ナチョス苗字)さんところの息子さんが同い年で、同じ大学に行くからひょっとしたら大学で会うかもねぇ、なんて言ってたんですけど、あるRAの方に(ナチョス苗字)って方この寮にいませんか?って聞いたら、いますよぉ!大樹くんの向かいのユニットのE551ですね!って言うもんやから、まさか同じ寮で、まさか向かいのユニットになるなんて!と思ってー、思わずご挨拶に来させていただいたんですぅー!」

話を聞くと、どうやら母が20代の頃に大樹のおばあちゃんととあることで出会い、そこから引っ越すまでの約20年間お世話になっていたらしい。

すごい、いきなりこんなことがあるんだなぁと驚いたけど、今振り返ってみれば自分が思っていたよりも自然とこの出会いを受け入れられた気がする。

ちょうどその日、その時に、彼らが来ることを知っていて、ドアがノックされるのを待っていたかのように。

彼らが帰った後、高校からの友達で同じ大学に来たやつらの部屋を見に行き、部屋を見せ合い、大学内を散策した。

日が沈み始めた頃、私たちは寮に戻った。

夕食前にユニットで集まる約束があったので、一度エレベーターに乗って5階に向かった。

エレベーターの中には私ともう3人ぐらい乗っていた。

1人が3階で降り、1人は4階で降りた。

〔5階です。5th floor.〕

ドアが開いたと同時に、私の前にいた一人が私のユニットの方へ歩き始めた。

慣れた足取りで歩いているから、もしかして向かいのRAさん?

すると後ろから歩いてくる私に気づいた様子で、身体を180度くるりと回転させ、後ろ歩きのまま私を見つめる。

「君、ユニット何?」
「あ、えっと、E55」
「なんだ同じじゃん。俺、高崎紹傑って言うんだよ。よろしく。」
「俺、(苗字)よろしくー」

なんなんだこの態度。本当に同級生なのか。

振る舞いが、全体的にみんながイメージするプロデューサーっぽい。

しかし彼はそんな風に考えている私を気にも止めず会話を続ける。

そこもまた、っぽい。

「変わった苗字だね。」
「よく言われるし、親戚以外会ったことないで。紹傑って名前もすごいな」
「あー俺、中国とのハーフなんだよね。一昨日まで北京にいてさ、」

何、なんか急にNASAにぶち込まれたのか私は。

漫画とか映画で見る、多国籍であるが故の物語感。

昨日まで北大阪の都会とは言えない場所にいた私にとって急に国際的すぎる展開。

「北京!?すごいなぁ、ってかなんかめっちゃ堂々としてない?あ、いい意味で」
「何、この寮くるの初めて?」
「いや、RA以外全員そうやろ」
「確かに、そう言えば俺も初めてだわ」

うわぁ、絶対変なやつーーー。

「そう言えばってなんやねん笑」
「え、なに関西人?ツッコミうまくね?笑」

無事、変なやつ、確定。

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