見出し画像

九九はいらない

かけ算を導入するときに、日本では九九から始めるのが常識です。その常識に反しますが、「九九はしない方がいい」です。

正確には、「九九は音で覚えない方がいい」です。


よくある九九の暗記法

「いんいちがいち、いんにがに・・・」
と覚えていき、
「くはしちじゅうに、くくはちじゅういち」
まで。
ひらがなで書くと、ほぼお経ですね。

小学校では2年生の夏休みくらいから、九九が宿題になり、淀みなく九九を言うためのトレーニングが始まります。
たいていは、九九の表や九九カードのようなものを持って、家で覚え、学校でテストをするという形式です。

九九を逆から言わせるケースもあります。

この導入があまりにあたり前すぎて、『九九の歌』はCDだけでなく、YouTubeやSpotifyでも見たり聞いたりでき、記憶を補助するツールも多々あります。

でも、これこそ詰め込みっぽくないですか?

九九を覚えるデメリット

いや、いらなくはないんです。
「4×6=24」とか「7×9=63」という1けた同士のかけ算は習得しないといけないんです。これは絶対に。
でも、ただ耳で覚えるだけの、お経のような九九は不要です。

そもそも、九九を耳で覚えただけの子がある割合います。
そういう子はどうなるでしょう?

九九は、単体で使うこともあります。
だけど、九九の後には、かけ算が待っています。

87×6=のような。
これを耳と口で九九を覚えた子は、
「ろくしち42だからー、まず2を書いてー、ろくは48だからー、8に4をたすと12だから、2を書いてー、4に1をたすと・・・」
と計算します。

つまり、頭の中でいちいち九九を唱えないと出てこない子になりがちです。時間もかかるし、時間がかかると、忍耐力のない子は、計算が嫌になっていきます。
すると、この辺りの課題から算数がきつくなってきます。

くり上がりのたし算でつまづいている子も少なくないものの、九九をいちいち音にしないと答えが出ないから、時間がかかるという子はとても多いです。

最も大変な子のケースは、6×7=を求めるのに、6の段を下から
「ろくいちが6、ろくに12・・・」
と、6×7まで言わないと出ない子もいます。

しかも、いきおいで6×8=まで行きすぎてしまい、また1からやり直していたり。苦行でしかありません。

「耳」で入れず、「目」で入れる

九九を音にして(つまり「にさんがろく」)、耳から覚えているから起こる現象です。アウトプットまでを考えた覚え方ではないからこそ起こります。

「6×7=」という数式を見ずに、「ろくしちしじゅうに」という音だけで、九九を覚えると、式をまず音にしないと、答えが出なくなります。

導入の段階で、「6×7=」を見た瞬間に、42が出る子に育てておけば、頭の中で九九を唱えることがなくなります。

どうやって身につけるかは、企業秘密です(というか、文字で説明するのが難しい・・・)。
過去に指導した子たちは、小学校や家庭で九九を耳から覚える前の子であれば、年齢に関係なく100%の子が目で覚えることができます。・・・と言っても、3歳以上かなとは思いますが。

目で覚えた子たちは、6の段であれば、式を見ながら
「6 , 12 , 18 , 24 ・・・」
と答えだけ言えます。
「じゃあ、これは?」
と「6×8=」を指された瞬間に「48」と答えられます。
答えが出る速度は、音で覚えた子とはレベルが違います。

もちろん、音で覚えるという導入後、音にしなくても答えを出せるレベルまで昇華した子も多いです。
だけど、そういう子たちは音にする意味はなかったと思います。いや、一部には「音で覚えたからこそ」という子もいるかもしれません。こればかりはわかりませんね。

ちなみに、うちの子たちは九九を家で練習したことはありません。学校でも何事もなく通過していました。
学校で習うので、いちお「九九」は知っているでしょうが、算数が得意な子は九九を言って確かめたりはしません。

簡単なスキルをなるべく苦労して習得させると、「非認知能力」が磨かれる

九九を耳から入れて、音で覚えずに、目から習得した子の方が、その後の算数の学習は明らかにスムーズです。

CDなどを利用して、九九で覚えた方がその瞬間は圧倒的に楽です。子どもにもストレスがないし、親もCDを流しておくだけですみます。
特に幼児期は耳の方が能力が高いので、楽です。
年中、年長の子に九九を覚えさせるのなんて、はっきり言ってとても簡単です。歌を覚えるのと一緒だから。

でも、かけ算やその後のわり算として、使えるスキルになるまでの時間を考えると、音で入れない方が得策です。

楽なやり方で知識を習得すると、副作用のように後で苦労が返ってきます。
逆に、その子にとっての適切な苦労をして得た知識やスキルは、スキル習得の過程でさまざまな能力を磨いてくれます。

「最小努力で最大効果」とは、楽して効果を出すことではありません。努力すべきところでは、愚直に努力をしておくことで、「能力投資」をしておき、後で絶大なリターンを得ることです。

「その子にとって適切な苦労をさせること」が能力開発においては急がば回れの近道です。
なのに、世の中には、なるべく楽に知識を与えてしまう場合が多いです。

中学受験でも、「はじき」とか「おにいちご」とかパターンを教えて一瞬で正解に至れる教え方をする塾・・・というか人がいます。あとで死にます。

「その子の能力が最大化するために適切な苦労をさせる」
そういう教育を志向しています。

この記事が参加している募集

#数学がすき

2,974件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?