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#7 『一流の育て方』ムーギー・キム ミセス・パンプキン

よく、「本は読むだけでなく、読んで実践しないと意味がない」と言われます。確かにな、と思うものの、読んだら忘れてしまうのも事実で・・・

子育て本、勉強本、中学受験本なども多数あります。でも、個別具体的すぎる事例の話で役立たなかったり、一般論すぎてやっぱり役立ったなかったりすることが少なくないです。

「親の教科書」として、学力だけでなく、自主性や習慣、自制心などの非認知能力の重要性に至るまで、網羅的にまとめられているこの本も使い方が大切だなと思います。

いい内容だし、親にとっては指針となる本です。

さて、この本をどう読んでどう実践するか。

ビッグワードを分解する

ビッグワードとは、

抽象的で、様々な解釈を生んでしまう言葉のこと

ビッグワードだと、具体的な課題などが共有できず、ミスコミュニケーションが起こります。
例えば本書でも、

  • 過保護に育てない

  • 個性を尊重する

  • 勉強を強制しない

  • 子どもの努力を促すほめ方が大切

これらは章のタイトルなので、もう少し具体的に書かれています。でも、ちょっと物足りない。

ビッグワードを分解して、自身の子育てに落とし込むところは、読者任せです。まあ、それ以上細かく書いたら、やっぱり個別事例すぎて役立たないんですが。

たとえば「過保護」って言っても、性格・年齢・タイミング・状況によって、どれだけ手を出すと「過保護」か「放任」かが変わります。微妙な匙加減が、賢い子を育てる親はうまい。まちがいなく、「放任」よりの方がうまくいっているケースは多いです。

「勉強を強制しない」も、「強制」ゼロというわけじゃないと思います。
まったく何も言わず、勉強しないのを放っておいて、うまくいく子もいます。でも、大変なことになる子もいます。実際にそういう子はいます。
親としては怠慢ではなく、意図して言ってなくても、大切な時期に大切な能力が開発されてなくて、逆に生きにくくなってしまうケースもあります。塩梅が重要。

アンケート内容が子ども視点だけ

著者親子の事例だけで話が終始しないよう、「優秀なエリート学生の家庭教育方法」というアンケートに書かれた内容が掲載されています。これはおもしろい。錚々たる学歴の学生が、自分がされてよかった教育などを語っています。

残念なのは、子ども側の意見だけというところ。その子の親の意見も聞きたい。どんな意図を持って、子育てをしたのか、しなかったのか。

東大生が書いている勉強本って、あんまり役に立ちません。いや、高校生くらいの子が読んだら、役立つ部分もあるかもしれませんが。
子育てをする上では、使えない情報が多いです。理由は、1事例でしかなく、自分自身の勉強法について書かれたもので、子育てについて書かれたものではないからです。

本を出すほどの人だから、「そんなことできるか」という内容が多いんです。

本当に知りたいのは、優秀な子を育てた親は、何を考えて、どんな風に子育て法を確立したかということです。もし、親のアンケートが加わっていたら、斬新だったなと思います。

意見は複眼的に捉える

ないものは仕方がないので、考えて落とし込むしかありません。たとえば、

ときには突き放すことも子どもの成長には必要なのだと、僕は言いたいです。

東大法学部の学生

素直にとると、「あー、うちももっと放っておいてもいいかもしれない」となります。でも、いろいろ手をかけてくれたから気づけるものもあります。
この学生の家庭がどれだけ手取り足取りだったのかはわかりません。でも、子どもに「うざい」と思われるほど手を出した結果、自立したということも起きます。逆説的です。

「自分で考えなさい」と言って自分で考えるのは逆に強制ですよ。何でもかんでもやってあげた末に、「いいよ、もう自分でやるから」の方が、意外と内発的です。どちらがいいかは子ども次第、親次第、タイミング次第でしょうけど。

本の使い方としては、最初から最後まで読まない。タイトルで気になる、もしくはランダムで、ページを開いて、1ページ読む。そこに書かれていることを咀嚼して自分の子育てへの活かし仕方を考える。
そんな風に使うと役立つかもしれません。

子育ての原則

結局、他人の真似ではなく、我が子オリジナルの子育て法を発明する以外に近道はないと思っています。とはいえ、いい言葉もたくさん書かれています。

選択肢から選ばせてあげることは、子どもの判断力を養ういい訓練になります。

いきなり、「自分で考えなさい」ではなく、選択肢A、B、Cを作ってあげて選ばせる。自分で選んだという主体性も生まれるし、判断力も養えます。
さらには、自分で選んだことには責任感が増すこともメリットです。

過保護の最大の問題は、失敗を通じて学ぶ機会を子どもから奪っている点です。

「失敗=悪」という考えはやめたほうがいいですね。極端に失敗を嫌う社会だからこそ、「失敗」して、そこから立ち直ったり「失敗」から学ぶ経験を小さいうちに積んでおく方がいいと思います。

「失敗」すると泣いてしまったり、怒ったり、すぐ諦めたりする子はよくいます。「失敗」に慣れていない証拠です。

大切なのは、どう失敗するかと、どう立ち直るか。
親が伴走しがいのあるところだと思います。

自分自身が常に本を読み、学習している姿を見せている

まちがいない。親も学んでいる、知らないことがある、失敗する、とわかった方が子どもはやる気になります。

勉強の時間を「苦しい時間」にしないこと

勉強は強制せずに、動機づけして子どもをよい環境に置き、何よりも自らが手本となるような言動を心がけなければなりません。

勉強して新しいことを知るのは楽しいことだと親が知っている方がうまくいきます。「勉強」=「苦行」にしてしまいがち。「勉強がんばったね」と言いがち。
学校の勉強でも、「やるべきもの」「辛いもの」ではなく、「楽しいよね」と思って接してあげると変わります。

本を読むのが苦手な人には、青線が引かれたところだけでも読んでほしい一冊。子育てについて考えるきっかけにするには、大変よい教科書です。

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